8.王女様の部屋にて
ちょっと短めです。
王女様の私室に帰ってくると、早速テオとジアが駆け寄ってきてお出迎えしてくれた。⋯⋯って、私の匂いを嗅ぐんじゃない。
「おかえりなさい。ありがとね」
王女様も遅れてやってきて、腕を差し出した。ハイネさんは全くの躊躇なく私を渡す。
抵抗できない私は王女様に抱えらて、じっと見つめられる。
「大丈夫?水の外に出てて⋯⋯」
「あ、はい、問題ないです。今は身体が大分重いですけど」
「水の中に居たいとか、そういうのは無いの?」
「うーん⋯⋯まああるんですけど、このまま外にいれば重力に順応できそうなので、このままでいいです」
初めの頃は気付かなかったけど、重力への感覚はだんだん前世と近い感じになってきている。
普通ならこんな早く慣れるはずないし、そもそも筋肉量が足りない気もするんだけど、これも魚人族の特徴なのかな。
「そう?良かった」
王女様は微笑むと、ベッドの方に近づいていく。あの10人くらい寝れそうなベッドだ。
そこにお尻から勢いよく飛び乗って、私と共にばふんと跳ねた。
それから王女様は私のことを膝に置いて、ゆっくり頭を撫で始める。何故?と思うと共に、避ける訳にもいかないのでちょっと落ち着かない。
でもまあ、丁寧に頭を撫でられるのは、悪くはなかった。
「あ、ハイネ、お菓子をお願いしてもいい?」
「分かりました。紅茶も入れますね」
「うん、ありがとう」
「スイウー」
「スイウ、遊ぼ」
「あ、え?遊ぶの?」
ジアとテルもベッドの上に登ってきて、私に頭やら身体やらを擦り付ける。
偶に当たる猫耳がふわふわで触り心地よくて、行動もまさに猫という感じで可愛いんだけど⋯⋯こんな警戒心薄くて良いの?とも思ってしまう。こちらもまあ、私としては嬉しいんだけど。
ちょっと頑張って右手を動かし、ジアの頭を撫でて見ると、気持ちよさそうに目を細めてくれた。
「ふふっ、もう仲良いんだね。⋯⋯あ、嫌だったらはっきり言ってあげてね」
私たちの様子を微笑ましそうに見ていた王女様が、頭上から声をかけてくれる。
「はい、ありがとうございます」
暫く子猫2人、そして王女様に撫でられていたら、銀色のトレーにティーセットを載せたハイネさんが帰ってきた。
ハイネさんはそれをベッドに備え付けられた小さなテーブルの上に置く。トレーには色々な形のクッキーが鎮座していた。
その美味しそうな匂いに、テルとジアがあっという間に吸い寄せられて行った。私も行きたい。
「はい、じゃあみんなで食べようね」
と思ったら、王女様が私をテーブルの近くまで連れて行ってくれて、なんならクッキーを口まで運んでくれた。
「はい、あーん」
結構な気恥ずかしさを感じつつ、かと言って断るのも失礼なので、王女様の手からクッキーを頬張る。
⋯⋯うん、文句無しに美味しい。
口の中に入れたらほろりと崩れて、バターの香りと砂糖の甘みが口いっぱいに広がった。竜宮城のおやつ───海ぶどう的なやつが多い。それ以外にはカニや小さな貝とか。もちろん甘くはない───と比べたら、なんと甘くて美味しいことか。
何枚も王女様に口に入れてもらって、でもそれ以上にテルとジアが食べてて、数分と経たず皿の上からは何も無くなった。
「ハイネ、おかわり、ない?」
「ハイネさん、もう少し食べたいです」
「もうちょっとちょうだい」
「夕ご飯が入らなくなるので駄目です」
『えーー』
強請ってみたけど駄目だった。流石ハイネさん、手強い。
でも、夕ご飯があるならいっか。そこまで我慢しよう。きっと美味しいだろうし、それに私、中身は大人だし。
なんて私が次のご飯をもう心待ちにしていると、王女様は私のことをハイネさんに手渡した。
「⋯⋯ねえ、スイウ」
「はい、なんですか?」
「少し話してもいいかな?」
そしてタイミングを見計らったように真剣な表情をした王女様が、そう話しかけてくるのだった。




