4.わちゃわちゃ朝食
しばらくすると、メイドさんがご飯を持ってきてくれた。
尻尾が左右に揺れているテルとジアは、早速受け取って食べ始める。もう私の事なんて眼中に無いようにがっついている。
「あーこら口に掻き込まないの!」
2人の世話を焼く王女様は、普通にお母さんみたいだった。
そこで食事を持ってきてくれたメイドさんが代わりますか?と提案する。王女様はちょっと申し訳そうにしながら、私の方へ来た。
⋯⋯なんかあのメイドさんが見るようになってから、テルとジアの行動が落ち着いたというか、縮こまったというか。尻尾も垂れ下がっている。
あのメイドさん、怖いのかな?私にはおっとりしてそうなお姉さんにしか見えないんだけど。
「ごめんね、待たせちゃった」
そう言って私の食事を持ってきてくれた王女様は、へにゃりと目尻を下げた。
「えーっと、これ、どうやって食べる?」
王女様は私に見せるようにプレートを持ち上げた。
そこにはフレンチトーストと色とりどりの果物が載っている。
私は喉がごくりと動いたのを感じた。
生まれてこの方魚やら貝やら甲殻類やら海の幸しか食べていなかったもので、正直だいぶ飽きていたのである。
しかも前世でも食べれなかったような豪華なフレンチトースト。私はそこから目が離せない⋯⋯
「⋯⋯あ、もしかして、その、食べれないものとかある?えと、スイウは水の中に住んでるんだよね?だから魚の方が良いとか?」
「⋯⋯はっ!いえ、それで大丈夫です!むしろ魚以外が食べたいです!」
「そうなの?なら良かった。それで、水の中に落とせば良いのかな?⋯⋯わっ!」
王女様が果物を手に取って、水槽の中に入れてくれた。
私はそれが水面に着くやいなや飛び上がって口で咥え、また水中へぱっと戻った。
⋯⋯やばい、美味しい。普通に涙が出そうなくらい美味しい。竜宮城だと甘味はよく分からない海藻の実しか無かったんだよね。しかも結構エグ味あるやつ。
「スイウ、こんな感じで大丈夫?」
「はいっ!よろしくお願いしますっ!」
そして私は同じ方式で朝食を食べた。
多分苺、桃っぽいけどちょっと違う果物、フレンチトースト、これはスイカ、フレンチトースト、そしてよく分かんない果物、etc⋯⋯
どれも美味しくて、私は本当に幸せだった。頬が蕩け落ちそう。
「兄さん、お魚」
「ね、動きがそっくり」
「⋯⋯姫、絵面が水中の幼女に餌付けしているという中々やばい事になってますので⋯⋯」
すると食べ終えたテルとジア、付いてきたメイドさんに早速ツッコまれた。メイドさんに至っては明らかに引いている。
え⋯⋯?いや、確かに人間じゃやらなそうなこと───そもそも水中にいることは置いといて───してるけど、そんな絵面酷いの?
「え、これそんなにやばいの?」
「⋯⋯まあ、少なくともこの子たちの情操教育には悪いかと」
私と王女様はショックを受けた。それはもう、ガーン、と。
まさかただの食事だと思っていたことが、そこまで危ない絵面だったとは。
だってこれ、習性なんですもん。海中だと泳いで口で魚捕まえたりするし⋯⋯いや確かに駄目だなこれ。
私は水面から顔を出して、王女様に手を伸ばした。
「王女様、私、自分で食べます」
「⋯⋯あ、うん、分かった⋯⋯」
王女様はしおしおと私にプレートを手渡した。まだショックが抜けきらないようで、大きな瞳にちょっと涙が浮かんでいる。
可哀想なことをしたな、と何故だか少し罪悪感を感じつつ、私は載せてあったフォークを使ってフレンチトーストの残りを頂く。やっぱり美味しい。
水中で食べると、水で多少なりともふやけちゃうから、食事時は外に出て取った方がいいかもしれないなぁ⋯⋯⋯⋯ん?
「スイウ、水から出てる」
「大丈夫?」
「⋯⋯?あ、ほんとだ」
「え?スイウが、水から出てる⋯⋯?」
全くもって無意識だった私に、テオとジアは興味深そうに耳をぴくぴくとさせて、王女様は目を大きく見開いた。
どうやら私は、水陸両用だったみたいだ。




