3.双子の子猫
気が付いたら朝だった。陽光が水槽の中に降り注いでいる。
そして周りを見てここは何処だと思い、昨日の出来事をじっくりと思い返し、そして頭を抱えた。
えーっと、つまり昨日の私は泣いてそのまま寝落ちした⋯⋯ってことだよね?中身は一応大人なのに?はあ⋯⋯
そして自己嫌悪からゴン、と水槽に自分の頭を打ちつける。そして自分のことを見詰める2対の捕食者の目を見つけ、慌てて後ずさりして今度は後頭部を打ちつけた。
「!!!!!?????」
「あ、兄さん、気付いた」
「うん、⋯⋯何してるの?」
私が入った水槽が置かれている机、その下から2人の⋯⋯獣人の子供?が顔を覗かせていた。
彼らの頭には、雪のように白い綺麗な髪とともに猫の耳が付いている。そしてなんか次の瞬間には私に飛び付きそうなほど、目の瞳孔が収縮している。怖い。
⋯⋯流石に大丈夫だよね⋯⋯?猫は魚食べるけど、私は食べられないよね⋯⋯?
「あ、起きたんだねおはようーって、え、どうして涙目になってるの⋯⋯?」
部屋に入ってきた王女様が、私を見てちょっと慌てた様子になった。私は涙目になってないと抗議の意を込め首を横に振った。
「ジア、テル何があったの?」
「わかんない」
「僕たち見たらこうなった⋯⋯嫌われた?」
2人の子猫はしゅんとして、耳が垂れ下がる。
「あ、その、嫌いとかそういうのじゃなくて、なんか食べられそうだなー⋯⋯って⋯⋯」
私が罪悪感から、ちょっと驚いた───泣いてはいない───理由を説明すると、王女様がそれを聞いて笑った。
「あははっ、大丈夫だよ。ジアとテルはそんなことしないから。そうだよね?」
「⋯⋯⋯⋯」
「⋯⋯⋯⋯」
あの、無言になるのやめて貰えますか⋯⋯?
「⋯⋯え、食べちゃうの⋯⋯?」
「食べない」
「けど美味しそうな匂いしてる」
王女様は2人の反応に苦笑いを浮かべた。私にとっては笑い事じゃ無いんですけど⋯⋯
まあかもしれないで過度に怖がるのはこの子達にも申し訳ないから、これからはなるべく気を付けよう。なんて言ったって私は大人だから。うん。私は大人だから。
「あ、紹介するね。こっちの男の子が兄のテル。で、女の子が妹のジア。2人は猫人族の双子で、国から追い出されたところを私が保護してるの」
「よろしく」
「よろしく」
「あ、えっと、はい、よろしくお願いします」
兄のテルはまだ不思議そうな顔をしていて、それに対して妹のジアは私に興味津々といった様子だ。背は少しテルの方が高いけど、服も合わせてとてもよく似ている。
そして2人に共通して言えることは、すごく可愛い。さっきは本能的な恐怖が先行してしまったけど、よくよく見ると凄く容姿が整っている。そしてひょこひょこと動く猫耳がそれを更に引き立てている。
ふわふわそうだし、撫でてみたいなぁ。
「それで、君の名前は何かな?」
「あ、私はスイウ・ハイドゥです」
王女様に問われて、そういえば答えてなかったと名前を告げる。
新しい名前を言うのは不思議な体験だったけれど、違和感はなかった。
「スイウ、って呼んでもいい?」
「はい、それでお願いします」
「じゃあスイウ、これからよろしくね!」
「スイウ、よろしく」
「よろしくねスイウ」
「はい、お願いします王女様、テル君、ジアちゃん」
こうして顔合わせが終わったところで、王女様が切り出した。
「あ、そうだスイウ、ご飯食べる?」
「ご飯、ですか?」
「うん、朝ごはん⋯⋯と言うにはちょっと遅いかもだけど」
え?と思い、私は要項が刺してくる窓の方を見た。確かに太陽───本当の太陽ではないけど───は高いところに昇っている。
今更ながらに、昨日のおそらくオークションにかけられてから何も口にしていない事に気づいた。そして気付いてしまうと、今度はお腹が空腹を強く主張してくる。
じゃあご飯食べよっか⋯⋯
って、危ない危ない。いくらなんでも警戒心が無いな、私。もしかしたら毒⋯⋯は流石に無い気がするけど、薬漬けにもしかしたらされちゃうかもしれないし。
さっきは普通に話してしまったけど、まだ何が目的なのか分からないんだから警戒しとかないと。
ぐぅ~~
⋯⋯⋯⋯
「あ、お腹鳴った。ふふ、すぐ用意しとくね」
「姫様、私たちのは?」
「え?ジアはさっき食べたじゃん」
「お腹空いた」
「えー?もう、しょうがないな。テルも食べる?」
「食べる」
王女様ってあの二人に甘いなぁ、と私は現実逃避気味にそう思うのだった。




