2.奴隷になったと思ったら
話毎の題名は数字だけが嫌なのでとりあえずつけてますが、大分適当なのであまり気にしないでください。
オークション───おそらく───が終わると、私の水槽には黒い布が掛けられて荷台に載せられ、何処かへ運ばれていく。
前後に揺れる水槽の中、私はまさしく出荷される豚さんの気持ちだった。
値段が付けられていた時点で、私に人権が無いことは確定である。
命は奪われないといいなぁ。けど痛いのも嫌だな⋯⋯⋯⋯お父さん、お母さん、会いたいなぁ。
と、悲しい気持ちになっていたら、がんっ、と水槽が何処かに置かれた。
外が見えないので、何がどうなっているか全然分からない。
しばらくそのまま放置されていると、にわかに周りが騒がしくなってきた。
そして水槽が少し揺れる。
「ごめんね、もう少し待っててね」
「姫、もう馬車が出ますよ」
「はーい、今行きます」
女の人と男の人の声が聞こえてきた。
女の人は、ハキハキとした元気そうな声で、逆に男の人は、落ち着いた雰囲気の声だった。そして2人とも若そうな感じがした。
この2人、というより姫って呼ばれてた方が私を買ったのかな?もしそうなら⋯⋯肥え太ったおっさんとかに買われるよりはまし、かも?
いやけど、若い女性が私を買う意味が分からないし⋯⋯うん、希望を持つのは辞めよう。
考えているうちに、今度は規則正しく水槽が揺れ始めた。さっきの会話から考えて、馬車に載せられているような気がする。
そして待つこと恐らく数十分、揺れが収まったと思ったら、いきなり持ち上げられてそのまま運ばれ始めた。
今度の運搬は凄く雑で、中の水が左右にぐわんぐわんと揺れる。私は手首と床が繋がっている鎖を持って必死に耐える。
そしてこれまたどかんっ、と何処かに置かれた。
次の瞬間、掛けられていた黒い布が取り払われた。
そこで私の目に入ってきたのは、洋風の豪華絢爛な部屋だった。
刺繍の細かいカーペット、肘掛けの先がなんか幾何学的な椅子、もはや書きにくそうな羽根ペン、10人くらい寝れそうな天蓋付きベッド。
そして、すごく高そうなドレスを着たお姫様。
「こんにちは。私はエリシア。エリシア・ミレトス。ミレトス王国の第1王女です。これからよろしくね?」
「⋯⋯⋯⋯え?」
さっきの声の人だ。というか、私を買ったのは普通にお姫様だった、一国の。
⋯⋯⋯⋯創作物?
「ごめんね、すぐにそれ外しちゃうから。ちょっと大人しくしててね」
「⋯⋯え、あ、ハイ」
事態が飲み込めないままとりあえず頷くと、誰かの手が水の中に入ってきて私の背中に添えられる。
「ひっ⋯⋯!」
「⋯⋯じっとしてて」
ちょっと冷ための女の人の声に、私はぎゅっと目を瞑った。
するとガチャリという音とともに首周りの圧迫感が消えて、次いで手首を自由になった。
恐る恐る目を開けると、私に付けられていた首輪と手首の鎖が外されている。
驚いて外してくれた人の方を向くと、そこには佩剣した赤髪の騎士っぽい少女が気まずそうに目を逸らしていた。
「え?⋯⋯あの、どうして⋯⋯?」
「んー、まあ簡単に言うとね」
私の半ば独り言に近い言葉に、王女様が答えてくれる。
「私はあなたを助けたいと思ったの。だから酷いこととかしないから安心して⋯⋯って言っても信じられないよね。けど、これだけは知って欲しい。私はあなたの味方だから」
そう言って王女様の手がゆっくり水の中に入ってきて、私の頭を撫でた。
その優しい手つきに、最悪な状況から解放されたかもしれないという安心感も相まって⋯⋯
⋯⋯⋯⋯いや危ない。思わず落ちるところだった。確かに首輪とかも外してくれたし、今のところは凄く優しいけど、人をお金で取引するなんて普通なわけがない。
だからこれからは、表面的には従順的に過ごしつつ、隙を見て竜宮城へ帰る方法を探る⋯⋯って、あれ?
「⋯⋯うっ、⋯⋯ひぐっ⋯⋯」
「あ、姫、泣かせてんじゃん」
「え!?クレア、ど、どうしよう⋯⋯」
「それを私に言われても⋯⋯」
止めようと思っても、涙が止まらない。胸がつき上がるような感覚が治まらず、手で拭うそばから零れ落ちてくる。
え、あの、私、中身は一応成人ですよ⋯⋯?どうして涙が止められない⋯⋯?別に何も解決していないのに⋯⋯?
「まあ、安心したんじゃない?この子、攫われてきた口でしょ?」
「うん、多分。奴隷落ち過程の説明が無かったから」
「なら好きなだけ泣かせておけばいいんじゃない?」
「えぇ⋯⋯」
そういえば前世は慣れすぎて泣いたこと久しく無かったな、とかいうことを思い出し、王女様は私を見てあたふたするだけで、結局私は気が済むまで泣き続けてしまったのだった。
話の展開上クレアさんの次の登場シーンが結構後になってしまうんですけど⋯⋯良かったらこんな子いたなと覚えといてください。




