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18.地球は青かった

応接間を出て、テルトジアに急かされながら廊下を歩き階段を降りる。すると直ぐに、廊下から見えていた中庭に出ることが出来た。



1歩外に踏み出すと、燦々と輝く太陽に、かろやかに吹き抜けていく涼風。開放感も合わさって、すごく気持ちがいい。

歩けば、青々とした芝生から硬い床とは違う感覚が伝わってくる。それに匂いも違うし、今世になってからは初めてということもあって凄く不思議な気分だ。



ちょっと進んで後ろを振り向くと、今までいたであろう後宮の建物が目の前いっぱいに広がる。中にいた時点で分かっていたことだけど、すごく大きい。



後宮はL時型になっていて、多分長辺の方がいつもの部屋やお風呂がある所。短辺の方に昨日服を買った部屋があるのだと思う。そして短辺の向こう側にはシンデレラ城みたいなお城が立っている。きっとあれが王城だろう。



建物には窓からして2階分しかないのに、マンションですか?と思うくらいに高い。でもあの天井の高さを思うと、なんとなく納得できてしまう。

その壁は緻密な紋様が描かれていたり、彫刻が設置してあったり、地上には綺麗に手入れされている庭木や花壇があるなど装飾には事欠かない。美的感覚がない私には、すごいなぁくらいしか思えないのだけど。



ちなみにこの中庭は王城側にある庭と比べて中庭と呼ばれているみたいで、後宮の建物が無い方には城壁と、ずっと奥には山の連なりが見える。開放感がすごい。そして現実感が無い。



そして私はここで生活している⋯⋯バグかな?

改めて、自分がいかにとんでもない環境に身を置いているのかを実感した。



「ねえスイウ、遊ぼ」


「遊ぼ」


「あ、うん。何をやるの?」



そこでジアとテルにせっつかれて、2人の方を向く。

提案されたのは単純な追いかけっこで、久しぶりに面白そうだな、と感じて参戦した私は2人の運動神経がバグっていることも忘れていた。



ひたすらに敗北を重ねて、あっという間に息切れした私は逃げるように日陰で見守るクレアさんの元に休憩しに行った。



「⋯⋯子供って元気ですね」


「あなたも子供でしょうが」



メイドさんが持ってきてくれた敷物の上に腰を下ろして、クレアさんと一緒に元気に走り回るテルとジアを見る。今の2人は多分しっぽに触られたら負け的なゲームをしている。

ちなみにスピードが地球の子供達を3倍速にした感じ。私、よく今までこの中に混じっていたな⋯⋯



隣のクレアさんは正座を横に崩した姿勢で意外と可愛らしく座っていて、その腰には豪華に装飾が施された剣を帯びていた。

表情はちょっと面倒くさそうにしているけど、テルとジアを見る目は優しい。



「まあ、テルとジアは元気すぎるからしょうがないわね」


「本当に、どうなってるんですか?あの2人」


「獣人の身体能力が高いのと、あと才能」



やっぱり獣人の身体能力は凄いのか⋯⋯あれ、でも、私だってその範疇に、いや、亜人という括りの中に獣人と魚人がいるのかな?なんて思いながらじゃれ合う2人を視界に収めてのんびりと過ごす。



やっぱりというか、室内と比べるとただ座っているだけでもなんとなく楽しい。視覚、聴覚、嗅覚、色んなものが慣れない環境で刺激される。あとテルとジアが可愛い。



知らず知らずの内に時間は経ち、太陽が高いところまで上がっている。クレアさんに肩を叩かれて、はっと顔を前に向けると、テルとジアはいつの間にか大分遠くまで行ってしまっていた。



「ちょっと遠く行っちゃったから、移動するよ」


「あ、はい、分かりました。でもなんであんな遠くに行くんですか?」


「さあ?私も聞きたい」



立ち上がり、2人を追いかけ中庭を歩いていく。広すぎて歩いても歩いても全然端にある城壁が大きくなってこないのが凄いところである。



けど歩くというのも楽しいので問題はない。というか今なら何をやっても楽しく感じられる気がする。

根気強く歩いていると、段々とテルとジアが何をしているのかも見えてきた。これは⋯⋯上に手を伸ばして何かを追いかけてる?



そこでふと空を見上げてみると、小さな鳥の影が見えた。多分あれを追いかけているのだろう。

今は遠いから小さく見えるけど、近くで見たら凄く大きいんだろうなぁ。⋯⋯あれ、もしかしたら食べられちゃう可能性あるのでは⋯⋯?いや、そもそも人間を食べる可能性も⋯⋯



「?急に裾掴むなんて、どうしたの?」


「いや、その⋯⋯鳥って人を食べることはありますか⋯⋯?」


「まあそんな事も無くは無いけど、そこまで凶暴な鳥は大体駆られつくされたはず」


「じゃあ魚は⋯⋯?」


「え、食べるんじゃないの?なんでそんな事⋯⋯あ、あなたって魚人族だったわね、忘れてたけど⋯⋯自認魚なの?」


「自認は人ですけど、なんか本能的に恐怖を感じるんですよ⋯⋯」



多分高所恐怖症や閉所恐怖症とかと同じような感じだと思う。最初にテルとジアに会った時と同じだ。頭では安全なことが分かっているけど、恐怖を感じてしまう。

⋯⋯いやこれ、実際に安全かどうかも分からないじゃん⋯⋯異世界だし⋯⋯



「じゃあ、確かめてみる?」


「⋯⋯え?」



確かめてみる⋯⋯⋯⋯何を?と私が脳内で問いかけている間にクレアさんは私を片手で抱えて、軽くジャンプする。

するとそれだけで私とクレアさんは3メートルくらい浮き上がって、



「総て散らせ、『縮爆』」



その言葉と共にクレアさんの足元で爆発が起き、とてつもない速度で上昇する。



思わず目を瞑り⋯⋯そして次に目に入ったのは、大地に広がる人の営みの結晶だった。



ちょうど真下には今まで居たであろう緑の中庭と、後宮と王城とその他色々、そしてそれを囲む多分城壁であろう線。

そこから扇形に小さなつぶつぶ、建物が一面に広がっていく。道路があったり、塔や広場も見える。そしてそこには、多分数え切れないほどの人がいるのだろう。



初めて見る異世界の街の様子。それに私は思わず感嘆の息を漏らし、そして次の瞬間には重力を感じた。



「ひゃああああああああっっ!!??」


「大丈夫よ、安全だから。⋯⋯『縮爆』」



また爆発が起きて、落下速度を相殺したクレアさんは軽やかに陸へと降り立った。



「ほら、大丈夫だったでしょ?」


「⋯⋯確かに着地の衝撃は殆どありませんでしたけど⋯⋯」


「じゃなくて、鳥」



空を見上げると、先程の鳥は背を向けて急いで逃げている最中だった。

そりゃ、あんなとんでもないスピードで人が飛んできたら逃げるよね⋯⋯



「ねえクレア、やって」


「スイウだけずるい」



と、私がなんとも言えない感じで鳥を哀れんでいたら、急いで駆け寄ってきたテルとジアに、クレアさんがせがまれた。

クレアさんは、しょうがないなぁ、とか言いながらちゃんと飛んであげて、2人にもう1回を所望されていた。



私はそれを見ながら先程の空で見た光景を思い出し⋯⋯⋯⋯私ももう1回頼もうかな⋯⋯




タイトルがあれですけど、全然宇宙まで行ってるとかそういう訳ではないです。他のタイトルが思いつかなかった⋯⋯

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