17.暇は人類の大敵
太陽が昇り、朝がやってくる。
今日こそはちゃんと起きれた私は、初めてちゃんとエリシア様に、おはようございます!と言えた。
そして昨日買ってもらった服に着替えて、朝ごはんも一緒に食べる。
私がすぐに食べ終わってしまったら、エリシア様は色々分けてくれた。⋯⋯そんなに羨ましそうな顔はしていなかったはずなのだけど⋯⋯
食べ終わる頃には、まだ目がしょぼしょぼしているテルとジアも起きてくる。朝はまだ猫耳もしっぽもだらんと下がっていて可愛かった。
そしていつもの意趣返しとしてテルとジアの口にご飯を運んで───これもまた可愛い───、王城までお仕事に行くらしいエリシア様と付き添いのハイネさんを見送り⋯⋯暇になった。
いやまあそりゃ昨日の今日で準備できるとは思わないけど⋯⋯なんか拍子抜けというか、完全に気持ちを持て余している。
ちなみにエリシア様の私室にある本を読めばいいじゃないか、とも思ったのだが、許可をとって見てみたら物の見事に資料の山だった。
私の絶望顔にエリシア様が苦笑いをしていたらしい。
ということで、手持ち無沙汰である。ただ椅子に座って足をぷらぷらさせるくらいしかやることがない。お願いだから何かをさせて欲しい。
「そう思いませんか?クレアさん」
「いや急に同意を求められても」
今応接間にいるのは、私とテルジア、そしてハイネさんの代わりであるクレアさん。
クレアさんは昨日と同じく子猫2人に引っ付かれている。
それを見ながらただぼーっと椅子に座っている私⋯⋯改めて考えるとめちゃくちゃカオスだった。
「⋯⋯いや、なんなのかちゃんと言ってよ」
「⋯⋯え?その暇だなぁ、って」
するとそれを聞いたクレアさんはげんなりとしてこくりと頷いた。
「それは私も同意するけど⋯⋯あんたらがいなければ今頃私だって姫の傍に⋯⋯」
「そういえば、今日はなんでクレアさんなんですか?ハイネさんじゃなくて」
ちょっと疑問に思って尋ねてみる。
その質問にクレアさんは、え、それ聞くの?と言うような顔を浮かべた後、目を逸らしながら答えてくれた。
「⋯⋯⋯⋯別に、今日の仕事はハイネの方が得意だから、って言われて⋯⋯」
「役立たず?」
「いらない子?」
「戦力外通告受けたんですね」
「シバくぞクソガキども」
と言いつつも、しがみついているテルとジアに何かすることもない。もちろん私にも。
ただこれ見よがしにため息をつくだけだ。
「⋯⋯あれ、ハイネさんって強いんですか?一応守護騎士のクレアさんよりも?」
「なんかスイウまで私のこと舐めるようになってない⋯⋯?別に今日は書類仕事よ」
「騎士なのに書類仕事???」
「そりゃするわよ、始末書とか⋯⋯まあそれは一般的な話で、うちら、第一王女陣営は極度の人員不足だから護衛騎士でも色々とやる必要があるの」
⋯⋯一般的な騎士は始末書を書くのか?
その話はともかく、エリシア様の味方である文官が足りない───約1名しかいない───ため、武官であるはずの護衛騎士も文官紛いのことをやっているらしい。
で、普段の簡単な仕事ならクレアさんでも問題ないけど、難しい仕事が立て込んだりするとハイネさんにチェンジ!となるのだとか。
「なんか、大変なんですね」
「そうよ。特にあなたたちが来てからはね。余計に1人取られるんだから」
『⋯⋯ごめんなさい』
「うっ、⋯⋯別にあなたたちが謝る必要は⋯⋯私の言い方が悪かった、ごめん」
クレアさんは申し訳なさそうな顔を浮かべた。そして、ごめんね⋯⋯?と恐る恐るジアの頭に手を伸ばして、無事に触らせてくれたことにほっとしている。
やっぱりツンデレだなぁ。
「それにしても、なんでそんなに人が少ないんですか?王女様なら、取り入りたい人も沢山居そうですけど」
「⋯⋯⋯⋯」
「クレアさん?」
「⋯⋯うん、まあ色々あるのよ。詳しい話は姫本人に聞いて。⋯⋯いややっぱ姫にも聞かないで」
明らかに話を濁していたので、そこを追求することはやめた。
でも⋯⋯分からん、なんでエリシア様を敬遠する理由があるんだ?今のところ何が問題なのか皆目見当もつかない。
結構いい人なのになぁ。少なくとも私の2度の人生の中でお父さんとお母さんの次くらいには優しいと思うのに。
けどその分、私が役に立つということもできるのか⋯⋯頑張ろ。
しばらく(3分)経つと、やっぱり話が戻ってきた
「ねえクレア、ひま」
「あそんで」
「え、遊んであげてるじゃん、ほら」
「クレアさん、立ってるだけで遊んであげてるは無理があると思いますよ」
テルとジアが、登った状態でクレアさんを揺さぶる。それで体幹がブレないクレアさんは本当に凄いのだけれど⋯⋯
そこで少し考える素振りを見せた後、ハイネさんは面倒くさそうに言った。
「じゃあ外、行く?」
『行く!』
「え、外?」
その言葉に2人は大きく返事をしてクレアさんから飛び降りた。
対照的に私はあまり意味が分からず、とりあえず席から立つもその場に立ちつくす。
外?出れるの?
するとテルとジアに両手を掴まれて引っ張られた。
「わっ!」
「スイウ、いくよ」
「お外」
「えっと、ちょっと待って、外ってどこなの?」
ドアの手前、とりあえずテルとジアを止めて尋ねると、クレアさんは呆れたように答えてくれるのだった。目の前を指さしながら。
「中庭よ。今日なら、まあ文句も言われないでしょ」




