19.マイルーム
「さて、スイウの部屋を作りましょうか」
中庭から部屋に戻る───結局3回も飛んでもらった───と、クレアさんが出来ない仕事を全て終わらせて来たハイネさんが待っていた。
クレアさんは帰ってくるなり、もう姫の所に行って良いですよ、とハイネさんに言われ、凄く複雑そうな顔でエリシア様の所へ向かった。
もうちょっと素直になればいいのに。
「えっと、部屋ですか?」
「ええ。流石にいつまでも姫の部屋というのは問題なので」
まあそりゃそうだよね、と納得する。エリシア様は一国の王女様なのだ。
でも少し寂しい気も⋯⋯いやいや、そんな事私に限ってあるわけない。子供じゃないんだから、うん⋯⋯
「スイウ、一緒?」
「僕たちの部屋?」
「兄妹ならまだしも、異性同士が同じ部屋は問題なので別の部屋です」
『?』
部屋を作ると言っても大体は決まっているみたいで、私の部屋は応接間に付いている客室のうちのひとつになった。テルとジアの部屋の隣だ。
応接間は、ドアから入り正面にエリシア様の私室へと繋がる扉がある。右側にはキッチンやお手洗いと倉庫的な部屋があって、反対側には3つの客室。
そのうち1番エリシア様の部屋に近い部屋をテルとジアが使っていて、私は真ん中の客室らしい。
とりあえず入ってみると、とりあえず広かった。知っていたけど。
流石にエリシア様の部屋と比べれば小さいけど、前世の私が暮らしていた部屋(4人部屋)の10倍くらい広そう。
部屋の中央にはダブルくらいの大きさのベッドが鎮座していて、オシャレなランプが枕元に付いている。そのベッドを中心に半円のカーペットが広がり、壁にもアンティークショップでありそうなランプが付いている。
窓は無いけれど、クローゼットが部屋の奥に付いていて、高級そうな光沢を持つ机と椅子もある。
総じて、高級ホテルのスイートルームに勝るとも劣らない綺麗な部屋だ。実際に止まったことなんて無いけど。
「⋯⋯豪華すぎません?」
「⋯⋯まあ、気にしないでください。あなたは姫に保護されたのですから」
曰く、エリシア様の管理できる場所じゃないと面倒臭いのだとか。具体的に言うと、いつぞやの第2王子みたいな存在に絡まれるらしい。
うん、それはちょっと、嫌だな⋯⋯
「スイウに合わせた机と椅子は持ってきますけど、水槽はどうしますか?」
「お願いします」
「分かりました。後でクレアに運ばせましょう」
あ、クレアさん、なんかごめんなさい⋯⋯
反射的に答えたら流れ弾を食らわせてしまったクレアさんに心の中で誤っていると、テルとジアがハイネさんの背中から出てきて、興味深そうに耳をひょこひょこさせながら中を見渡す。
「なんか似てる」
「でもせまい?」
「え、これで狭いの?」
「あなた達の部屋は2人用ですからね」
ふーん、とテルとジアは分かっているのか分かっていないのか微妙な返事をした。そして興味を無くして2人でじゃれ合いを開始する。気ままだなぁ。外で遊んだ後なのに、何処にそんな元気が残っているのかは私には分からないけど。
その後、ちょっとした小物の相談をしてから、ハイネさんは備品を取る為、大人しくしているように、との言葉を残して部屋から出ていく。
ドアがしっかり閉まったのを確認して、私は小さくガッツポーズをした。
ここで重要なことは何か?
部屋には私とテルとジアしかいないこと、つまり私が何をやっても止める人がいないということだ。
ということで、私は部屋に入った時からずっとやりたかったことを遂に実行しようとした。
まあ正直ハイネさんが居ても許してくれそうではあるけど、その場合は心理的ハードルが高いので、結局今が一番の好機なのだ。
「あ、テル、ジア、ちょっとこっち来て」
『?』
2人を呼び寄せて、その手を掴む。そして私は自分のベッドに向けて走り出す。
テルとジアもその意図をすぐに理解してくれて、次の瞬間私達はベッドにダイブした。
ばふん、と身体が跳ねる。その後に身体がマットレスに沈む。
それだけだ。でも何故か無性に楽しくて、私は大きな声を立てて笑った。
しょうもないと言えばしょうもない。でも前世に出来なかったことをやれただけで、私は楽しいのだから問題無い。
身体をひっくり返して天井を見上げると、テルとジアの顔としっぽが視界に入った。
2人が顔を擦り付けて来たので、私もお返しにと彼らの頭撫でて、わちゃわちゃして過ごした。
ハイネさんが帰ってきた時に、ぐちゃぐちゃになったベッドを見てため息をついたのは言うまでもない。




