14.着せ替え人形は金を想う
「殿下、お待ちしておりました」
「今日もよろしくね。それで、今回はこの子、スイウの普段着と、あとテルとジアの服を追加したいのだけれど」
先程の部屋の奥にあった通路を通って行くと、応接間よりも少しこじんまりとして装飾も質素な部屋に出た。そこでは頭を深く下げているおそらく服屋さんの方と、その後ろに大量に掛けられた服があった。
何百着とありそうな服に目を奪われているとエリシア様に紹介されて、私はとりあえず頭を下げた。
「承りました。どのくらい御用意致しましょうか」
「うーん、テルとジアにはそれぞれ5着で、スイウには20着お願い」
「えっ!?⋯⋯あ、ごめんなさい⋯⋯」
20着!?と聞いて思わず声が出てしまった。
いや⋯⋯服なんて3着もあれば十分じゃない⋯⋯?3あれば洗濯もして回していけるよ⋯⋯?それが20着?⋯⋯どうやって着るの?
でもエリシア様の考えは私とは全く違うようで⋯⋯
「⋯⋯確かに少ないかも。30着でお願いします」
「かしこまりました」
今度は声も出なかった。
いや、違うんですけど⋯⋯そういう意味のえっ!?じゃなくて、あの、多すぎるという意味なんですけど⋯⋯
かといって完全に私のためにやってくれていることだから、ここで訂正を入れるのもエリシア様に申し訳なく、結局言い出すことはできなかった。
「スイウ、どんな服がいい?」
「⋯⋯え?あ、えと、なんでも大丈夫です」
「じゃあ私が決めていい?」
「はい、もちろんです」
そしてエリシア様に尋ねられて、そう答えたのが運の尽きだった。
そこから私は単なるお人形として、エリシア様が選ぶ服を簡易更衣室に入っては着てその姿を見せるということを繰り返した。
最初は前世で着たことがないような服を着れて楽しい一面もあったけど、時間が経つにつれ、別に全部可愛いんじゃ⋯⋯?何が違うの⋯⋯?というマインドに陥って、とにかく疲れた。てか飽きた。
けどエリシア様は本当に楽しそうに私の服を選んでくれていたので、止めることもできず、結果⋯⋯
ワンピース:12着
ブラウス:15枚
スカート:10枚
ズボン:5枚
ふわふわの寝間着:3着
ドレス:5着
メイド服:1着
なんかちょっと和服っぽいけど袖が短い服:1着
もうよく分かんない服:2着
計:39着
あれ、私の勘違いかな⋯⋯?なんかものすごい数に膨れ上がっているのだけれど⋯⋯?
というか後ろの方の服は何⋯⋯?いつ使うの⋯⋯?
「殿下、この子可愛いですね。嫌がりませんし、どんな服着せても似合います」
「でしょ!スイウは可愛いんだから!ねー?」
すっかりテンションが上がっているエリシア様に頭を撫でられながら、まあ褒められるのは嬉しいのだけれど、私の思考はあることに囚われていた。
そう、服の代金である。
39着。枚数で言ったらそれ以上。しかも王城まで来るような店だ。絶対高級店に決まっている。
少なくとも前世で私が使ったお金総額よりは多いんだろうなぁ⋯⋯
私の服を選び終わっわた後は、テルとジアの番だった。
2人は追加で買うだけだったのでそれほど時間はかからなかったけど、やっぱりと言うべきか、5着より多くなっていた。
それが終わり、私達は洋服屋さんの元を後にする。具体的には、支払いの時間になって追い払われた。
ということで私とテルとジア、そして2人が登っている───着替える時だけ降りてた───クレアさんで先程と同じ通路を戻って部屋に戻ってくる。
そこで私はクレアさんに尋ねてみた。
「あの⋯⋯私の服って大体何円⋯⋯どのくらいのお金を払ったんですか⋯⋯?」
「さあ?まあ大体500万グリズくらいじゃない?あのお店もお手頃とはいえ高級店だし」
「⋯⋯えーっと、この国の一般的な家庭のひと月の生活費は⋯⋯?」
「30万グリズくらいね。でもなんでそんなこと聞く⋯⋯」
「すみませんクレアさん、私でも働けそうな場所ってありませんか?」




