2.冒険者ギルド②--〔冒険者ギルド〕
第4話を開いていただき、ありがとうございます!水月です。
少しずつ物語が動き始めていきます。
ゆったり楽しんでいただけましたら嬉しいです。
それでは、本日のシーンもどうぞお楽しみください!
扉をくぐった瞬間、空気が変わった。
焼いた肉の香ばしい匂い。
酒の香り。
そして、鼻の奥にかすかに残る鉄と革の匂い。
街路を満たしていた華やかな香りとは違う。
ここには、仕事を終えた者たちと、これから仕事へ向かう者たちの空気があった。
広い酒場には、丸い木のテーブルがいくつも並んでいる。
鎧姿の男。
大剣を壁へ立て掛ける戦士。
槍を磨く青年。
地図を広げて何かを話し合う一団。
女性の姿もあるが、多くは男たちだった。
豪快な笑い声。
木杯を打ち鳴らす音。
依頼の話。
武勇伝。
様々な声が入り混じり、まるで一つの生き物のような活気を生み出している。
街の喧騒とは、明らかに違っていた。
街が人々の暮らす場所だとすれば。
ここは冒険者たちの居場所だった。
命を懸けて生きる者たちだけが持つ熱気が、この空間を満たしていた。
テンマは思わず辺りを見回す。
誰もが堂々としている。
ここでは自分だけが場違いな気がした。
その時、近くのテーブルから笑い声が聞こえた。
「去年も東で竜が出たらしい」
「またか」
「討伐隊が出るって話だ」
別の男が木杯を傾けながら笑う。
「竜騎士になれりゃ、一生遊んで暮らせる」
「だから若い連中が無茶するんだよ」
「命あっての金だってのにな」
男たちは豪快に笑い合う。
テンマはその会話を横目に通り過ぎた。
竜を倒し、騎士になる。
それがこの国では誰もが知る栄誉なのだろう。
けれど。
父は何を思って騎士になったのだろう。
名誉のためか。
家族のためか。
それとも――。
そこまでは考えず、小さく首を振る。
今の自分に答えは分からない。
父の剣は、まだ持つ資格がない。
ならば。
まずは、自分の足で歩き始めるしかない。
そう思い直し、受付を探して視線を巡らせた。
すると、一角だけ空気の違う場所が目に入る。
酒を酌み交わす笑い声も。
依頼の相談をする声も。
そこだけは、不思議と少し遠く感じる。
丸い木のテーブルを囲むように、十人ほどの客が静かに耳を傾けていた。
中央に座るのは、一人の吟遊詩人。
膝に抱えた竪琴を優しく爪弾き、穏やかな旋律を奏でている。
やがて、静かな歌声が流れ始めた。
――♪
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