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クラスの一軍女子に嘘告されたので、あえて全力で乗っかってみた  作者: 針坂時計


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7/9

#7 vs女子

「嘘いいなさい」


 上手いことやったさ、と肩をすくめて言うと、華はそう断言した。


「嘘じゃねえよ」

「嘘よ。何年幼馴染やってると思ってんの」


 助けを求めて駿輔を見ると、困った顔で苦笑していた。

 バレバレか。


「はぁ……。あたしも迂闊だったわ。まさかあんたに彼女が出来てるなんて思いつきもしなかった」

「いや、彼女じゃないが」

「は?」


 華はチベットスナギツネみたいな顔になった。心底呆れたときにする表情だ。


「あー……うん、なんとなくわかった」

「何がだよ」

「あんたたちの関係。あと、あんたの何処がダメなのか」

「あ? お前に何が」

「無駄だよ、蒼太」


 駿輔が苦笑しながら言った。


「こういう時の華ちゃんは無敵だから」

 

 どうやら、相変わらず駿輔は華の尻に敷かれているらしい。


「とにかく、あんたは早めに謝りなさい」

「何を謝れってんだよ」

「自分で考えないと意味ないでしょ」


 フレンチクルーラーを食いちぎり(文字通り)ながら華は言う。口元に付いたクリームを駿輔が紙ナプキンで拭った。

 うん、完全に説教モードだ。こういう時の華に何を言っても無駄だってことは、これまでの付き合いでわかっていた。


 しかしな、今日一日取り付く島もなかったんだぞ。

 仮に俺に何某かの落ち度が合ったとしても、どう謝ればいいのか。


「そんなの、あんたの無駄にデカい声でなんとかしなさいよ」

「そうだね。勢いとパワーが蒼太の持ち味みたいなとこあるし」

「お前らなあ」


 俺が苦笑すると、二人は笑った。

 元気づけようとしてくれるのが分かって、何処かささくれ立っていた心が少し落ち着いた。

 全く、持つべきものは友だちだ。




 

「佐伯ぃ、ちょっとツラ貸しな」


 まるで頭に入らない授業を聞き流して迎えた休み時間、風花のグループの鈴木と斎藤が俺の席に乗り込んできた。

 危機的状況を察した伊藤くんは早々に逃げ出していて、鈴木と斎藤は二人で伊藤くんの席に勝手に座った。

 二人とも怒っている表情だ。顔がいいだけに怒ると凄みがある。ギャルこわい。

 

「あんたさ、風花に何したの」

「冤罪だ。わしじゃない、わしはやっていない!」

「茶化すな」

「あ、はい」


 と言われてもな。散々考えたが本当に心当たりがないのだ。華の件は風花の一方的な勘違いだし、弁解もさせてもらえないのではどうしようもない。


「いいから。昨日あったこと細大漏らさず全部ゲロしな」

「はい」


 

……


 

「あんたが悪いわ」

「だね。佐伯が悪い」


 反論しようとする俺を鈴木が片手で制した。


「考えてみなよ。待ち合わせの場所に行ったら、風花が知らない男と親しげに話してる姿を見たらさ、あんたどう思う?」

「どうって……」


 想像してみる。

 俺の知らない男、イケメンで背が高くて、ボケを挟まないスマートな話題で風花を笑顔にさせられる男。

 二人の間には親密な空気(俺と華のような?)が流れていて、風花もまんざらでもなさそうな様子で……


「嫌だな」

「でしょ」

「ああ、凄く嫌だ」


 胸がムカムカとして、頭がカッとした。どけ、そこは俺の場所だ、と想像上のイケメンをブン殴りたい衝動に駆られた。

 ……そうか、そういうことか。俺にとって華はただの幼馴染だが、風花にとっては知らない女だもんな。

 こんな思いを風花にさせていたのだと思うと、ブン殴るべきはまず俺なのだろう。だが、先に風花に謝らなきゃ。


「風花は?」

「今レイナがトイレに連れ出してる」

「そうか。帰ってきたらちゃんと謝る」

「ちょっと待って」


 今度は斎藤が俺を制した。まだ何かあるのか。


「あんたさ、風花がなんであんなに頑なになったか、ちゃんとわかってる?」

「え」

「風花が何に傷ついたのか、風花があんたのことをどう思ってるのか、ちゃんと考えな。謝るのはそれから」

「そうだね。……女の子はさ、不安なんだよ。この人は自分のことをどう思っているのか、自分はこの人にとって一番でいられているのか。ずっと不安なの」

「そう。だから女の子を安心させてあげるのが男の甲斐性ってやつだよ。男なら腹ァくくんな」

「言っとくけど、このまま問題を中途半端にして後悔すんのは、絶対あんただからね」

「あんたが後悔するだけならうちらは関係ないの。でも風花を傷つけたまんまにするのは絶対に許さないから」


 言いたいことを言うと、二人は揃って自分の席へ戻っていった。


 ……俺は。

 俺は風花のことを、どう思っている?

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