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クラスの一軍女子に嘘告されたので、あえて全力で乗っかってみた  作者: 針坂時計


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#2 vsゲーセン

 勢いとテンションで湊を強引に連れ出すことに成功した。

 余談だが「付き合うのはいいが避妊はちゃんとしろよー。学年主任に吊るし上げられるの私なんだからなー」と言い放ったみっちゃん先生は普通に問題教師だと思う。


 さて、第2ラウンドの会場はゲーセンである。

 ビデオゲームじゃなくてプライズがメインのほうな。アミューズメントストアって言ったほうが適切かもしれん。

 明るくて解放的だし、色んなプライズマシンがあるから見てて飽きない。遊ぶにしてもそこそこの出費で済むからカネのない学生にも優しい。しかもそれなりに騒がしいから、会話するには必然距離を縮める必要がある、故に初デートにおすすめだ、と物の本に書いてあった。実践するのは俺も初めてだけどな!


 湊はちょっと不満そうな顔をしつつも、珍しいのか店内をきょろきょろと見回している。


「こういうとこあんまりこない感じ?」

「んー、たまに付き合いで来るぐらい」

「そっかー。俺も久々だけど結構楽しいよ。女性客も多いし」

「えーなに、ナンパ?」

「そそそそんなわけないでござるよ」

「なにそれ、ウケる。ま、佐伯くんにそんな甲斐性なさそうだもんね」

「蒼太ね、そ・う・た。repeat after me ,SO・U・TA」

「うっざ。無駄に発音いいのまでうっざ」

 

 話しながら、湊の目はぬいぐるみ系のプライズを行ったり来たりしている。ぬいるぐるみ好きなのかな? かわいいところあるじゃん。

 


 ぬいぐるみを中心に色んな台を冷やかす。人気のキャラとかアニメキャラ、元ネタすらよく分からないイロモノまで様々で見てて飽きない。

 主に俺ばっかり喋ってるが、湊の様子もまんざらではなさげだな。


「あ、これ……」


 湊が足を止めた。

 えーと、にゃん侍……? 刀持って眼帯に着流しの猫のキャラだ。プライズあるあるの謎オリジナルキャラクターだ。

 

「このキャラ好きなん?」

「うん……ねぇ、佐伯くん」


 湊がニヤリと意地悪な笑みを浮かべた。

 

「ふーか、この子欲しいな。取ってくれない? カッコいいとこみせてよ、彼氏クン」


 はーん、なるほど。大人しくしてるなと思ってたら、こういうのを探してたってわけか。

 こういう武器持ちみたいなキャラは重心が偏るから難易度が高い。それを俺に取らせて散財させようって腹か。

 オーケーオーケー。

 

「よっしゃ! まかせろりー!!!!」

「え」


 悪いな湊、ここは俺の土俵だ。





「ほい、どうぞ」

「あ、ありがと……」


 北里先生1枚を犠牲に、にゃん侍なる謎キャラクターをゲットした。

 ふっふっふ。こういうのはコツがあるんだよ。狙ったのが2つある内の取りやすい方だったのもあるが。


「……ふーん、やるじゃん。ちょっとだけ見直したかも」

「え、マジ!?」

「ちょっとだけだよ、ばーか。ちょーしのんなし」


 湊はべー、とかわいい舌を出した。なんだこれ、ツンデレか?

 ま、第2ラウンドも俺が1本先取だな。

 湊もぬいぐるみ自体はしっかり抱いているあたり、好きなのは本当なのかもしれない。


 さて、1本取ったら催してきたな。


「悪い、ちょっとトイレ行ってくる。ここで待ってて」

「ん、いってら」



 

 ……ふう、戻ってきた。

 湊は……いたいた。さっきの台から少し離れたところに立っている。

 しかし、改めて見ると立ってるだけでもめちゃくちゃ可愛いな。通りすがりの男どもがチラチラ見てるし、声かけようとしてるやつらもいる。

 悪いな、今日だけはその子は俺の対戦相手なんだ。


「おまたせ」

「おかえり」


 湊はずっとさっきのにゃん侍の台を見てるが、もう片方も欲しいのかな?

 いや、先客がいるな。小さな女の子を連れたママさんぽい人。


──やだー! にゃんさむほしいー!

──ごめんね、ママこういうの得意じゃないのよ


 あー、なるほどな。

 さっきも言ったがにゃん侍みたいな武器を持ってるタイプは難易度が高い。アームもちょっと弱めだったから、俺でも5ゲームかかったしな。

 あのママさんはそんなにゲームやるタイプには見えないし。

 しかし、湊は何がそんなに気になるんだろうか。

 

「ねえ」

「ん?」

「いい?」


 湊は抱きかかえたぬいぐるみをちょっと掲げてみせた。

 ……へぇ。


「風花ちゃんがいいなら、俺はいいよ」

「……ありがと」


 湊はぬいぐるみを備え付けの袋に入れて、母子に近づいていった。

 ……いいとこあるじゃん。一軍女子なんてのは、もっと自己中の塊みたいなもんだと思ってた。



「あの、すみません」

「はい?」

「これ、よかったらお子さんに」

「いえ、そんな、とんでもありません」

「私があげたいので。ダメでしょうか?」

「いえ、でも……本当にいいのかしら?」

「はい、お子さんのところにいたほうがこの子も幸せでしょうし」

「う、うーん……。わかりました、ありがとうございます。れいちゃん、このお姉ちゃんがにゃん侍くれるって」

「ほんと!?」


 会話についていけずにキョロキョロしていたれいちゃんとやらが目を輝かせて喜んだ。

 はは、子どもはかわいいな。小さい頃の妹を思い出す。


「でも、おねえちゃんはいいの……?」

「ん、君は優しい子だね。お姉ちゃんの分はそっちのお兄さんがまた取ってくれるから、大丈夫だよ」


 待ってェ!? そいつ取るのにも結構苦戦したんだけどォ……?

 湊はぬいぐるみをれいちゃんに渡すと、顔をこっちに向けてニヤリと笑った。おい、さっきまでの優しい笑顔どこ行った。


「できるよね? か・れ・し・くん?」


 ……オーケー、2本目と行こうじゃないか。

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