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リィンカーネーションの理 〜そして僕たちは異世界で巡り会う〜  作者: 奥槻 庵
第三章 襲撃

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第32話 燐光

 イゴールは忌々しそうに舌打ちすると、急に割り込んできた若者に目を向ける。

 そして威嚇するように大声で怒鳴り散らした。

 

「なんだ、てめえは? クソガキが!」

 

 フィンはそれには答えず、呼吸を整えるように大きく息を吐き出すと背筋を伸ばし双剣を抜く。そして右手は額、左手は腰の高さに据え、剣先を相手に向けて身構えた。

 

「フィン……気をつけろ。その剣に触れると力を奪われるぞ……」

 

 教え子の登場に気づいたエリックが、地面に横たわりながら助言を投げる。

 

「……魔剣か」

 

 フィンは顔をしかめた。

 魔剣と対峙するのはもちろんはじめてだが、エリックの言葉とその様子から、どういう能力があるのかなんとなく想像することができた。

 ただでさえ体格でも劣るのに、そのうえ相手の剣に触れずに戦わねばならないとなると、なかなか面倒である。

 

 ——こんなことなら、フアナを置いてくるんじゃなかったな……。

 

 フィンは苦笑いを浮かべた。

 イゴールは、たったひとりで双剣を向けてくるのが、まだあどけなさも残るひょろっとした若者だと知ると、血走った目で睨みつけ、威嚇するように怒声を張り上げる。

 

「ガキが調子に乗るな‼︎ ケガするまえにとっとと家に帰って、母ちゃんのおっぱいでも飲んで寝ちまえ‼︎」

 

 ぶっ!

 

 イゴールの脅し文句に、よからぬ想像でもしたのか、地に倒れたままのエリックが吹き出した。

 フィンは思わず軽蔑の視線を向けてしまう。

 すぐに気を取り直し、フィンは年齢のわりに落ち着いた口調で答えた。

 

「……残念だが、俺はガキじゃない.そこで寝ているエリックの一番弟子だ。悪いけど、師匠の仇は討たせてもらう」

 

 そして、ふと小首を傾げると、フィンは大仰に驚いたような表情で叫んだ。

 

「……あ! そうか、俺が怖いのか⁉︎ それで俺を帰そうと必死に……それは気づかなかったな……」

 

 フィンは外見こそ十三歳の若者だが、その内面はいちど成人を迎えたこともある、いわば人生を繰り返すベテランである。こういう相手の癪に障る嫌味な言い回しには自信があった。

 

 はたして狙いどおり、盗賊団の首領はただでさえ険しい顔をこの世のものとは思えない憤怒の表情に染めあげて、罵詈雑言をまき散らしながら襲いかかってくる。

 その力任せな一撃をかわすと、フィンはがら空きになった脇腹めがけ小剣を叩き込んだ。だが、身体を守る鎖帷子によって刃が弾かれてしまう。

 しかし、ここまでは想定内だ。

 フィンは斬りつけた勢いそのまま、さらに腰を回転させ、もう一方の小剣を今度は突き立てるように脇腹へ打ち込んでいく。鋭く研ぎ上げられた剣先は、鎖帷子の連結された鉄製の輪を突き破り、わずかではあるがイゴールの皮膚を貫いた。

 イゴールは手負いの獣のように吠えた。

 

「このッッッ——!」

 

 激しい怒りで語彙すらも失い、聞き取れないなにかをわめき散らしながらイゴールは魔剣を振り回してくる。まるで小蝿でも追うかのような粗雑な連続攻撃だが、その一撃は重く、鋭く、触れるだけでも十分に致命傷になりうるものであった。だが、フィンは巧みに歩法を操って、距離を調整しながらかわしていく。

 当たらないと察したイゴールが追撃の手を止め、ふたたび二人は睨み合いとなった。激しい攻撃を立て続けにくり出したイゴールが息を切らしながら憎々しげにつぶやく。

 

「……ちょこまかと動きやがって……逃げ足だけは一丁前だな……」

 

 その言葉にもフィンは耳を貸さず、黙ってイゴールを睨みつづけた。

 触れたらおしまい、という魔剣相手である。フィンも必死であった。基本的には挑発し激怒させて単調な攻撃を出させる、というシンプルな作戦である。

 

 ——どこまで通じるだろう。

 

 気を抜くと、不安で押しつぶされそうになる。

 フィンはあえて思考から目を背け、目の前の相手だけに集中することにした。

 いつでも動けるよう直立したまま重心だけを落とし、腰の高さで両剣を構える。やや開きぎみの両腕に持たれた二本の小剣は、共にイゴールの喉元へと向けられていた。

 転生前、日本で教わっていた二刀流とは、手に持つ武器も違えば、相手の動きや防具も違う。だが、どうしても構えなどは似てしまうこともある。

 木村宏基だった頃に武芸のさまざまな基礎を叩き込んでくれた山村七海の顔を、ふと思い浮かべた。

 

 七海先輩だったら、どうやって戦うかな?

 

 すでに遠い記憶になりつつある師の動きを思い起こしながら、フィンは鋭く息を吐いた。そして反射的に吸い込んだ吸気によって”過限駆動(オーバークロック)”を発動させる。

 世界の動きが瞬時にして緩慢なものへと変貌した。

 睨み合っていたイゴールの表情から瞬時にしてリアリティが失われる。まるで精巧にできた蝋人形のようにその瞳の焦点からフィンを見失い、その汚れた肌すらもいつまでも質感を失わない作り物のように見えた。

 フィンは、魔剣アルドゥングを構えるイゴールに向かって、真正面から飛び込んでいく。

 時間停止ではない。あくまでも行動速度を上げるだけでしかない。

 以前、エリックにも避けられたように、経験値の高い剣士には通じない可能性もあった。だとしたら小細工なしに最短距離で一気に攻め込む方がいい。

 狙うは、無防備に露出した首元であった。

 イゴールの構える魔剣をわずかに避けるように身体をひねると、右手の剣を凄まじい勢いで突き出した。

 突撃による重量と加速度が乗った剣先があやまたずイゴールの首元に吸い込まれていく。

 だが、そのとき魔剣アルドゥングが赤く光を放った。

 途端にフィンは重圧によって全身が押しつぶされるような感覚に襲われる。異能も強制的に解除され、急激に速度を取り戻す世界の中で、フィンは突っ伏すように地面に倒れ込んだ。

 

「——ぐぁっ!」

 

 フィンは鈍い悲鳴を漏らす。

 異能解除の反動による頭痛に苛まれつつ、それ以上に突如重くなった自分の身体に驚きを隠せずにいた。

 

「……な、なんで?」

 

 喘ぐようにつぶやく。刀身を妖しく光らせる魔剣の姿に、嫌な予感がした。

 

「……触れていないのに……」

「おいおい。誰が触らないとダメって言ったか?」

 

 通常の時間の流れに戻ってきたイゴールは下卑た笑いを漏らしながらおどけるように言った。

 

「こいつはな、近ければ近いほどたくさん生命力が吸い取れるって代物だ。触った方が早えってだけで、離れてたって奪おうと思えば奪えんだよ」

 

 イゴールは蔑むように笑いながら、地に伏すフィンの背中を泥だらけの足でぐっと踏みつけた。

 

「最後の変な動き……ひょっとして貴様、異能持ちか?」

「……だったら……なんだよ?」

 

 地面に押さえつけられ、フィンは息苦しそうに答える。

 

「やっぱりな。オレの手下にも弓の異能持ちがいてな、発動させるときの雰囲気がそっくりなんだわ。……おかげで助かったぜ」

 

 イゴールは汚い歯を剥き出して笑った。

 つまりは、フィンが異能を発動させた瞬間、その雰囲気から危険を察知して、瞬時に魔剣を発動させたらしい。一瞬でも判断に迷っていたら、オーバークロックの状態にあるフィン相手に完全に出遅れていたはずである。その戦闘における決断力たるや、フィンの師であるエリックにも匹敵するものであった。

 

 やっぱりだ。

 バカのひとつ覚えのように加速するだけでは勝てない相手も出てくる。

 フィンは己れの無策を呪った。

 

 そんなフィンの脇腹めがけて、イゴールは強力な蹴りを叩き込む。泥で汚れた革靴の先端が脇腹の肋骨へと食い込み、あまりの激痛にフィンは息を飲み込んだ。

 蹴られた勢いで泥だらけの地面を転がるフィン。

 呼吸ができない。

 内臓すべてを潰されたかのような激しい痛みに呻きながら、顔を歪めた。

 

「フィン‼︎」

 

 離れた場所から見守っていたエリックが叫ぶ。

 その声に応える余裕は、いまのフィンにはなかった。

 やがて泥や砂粒を踏みしめながら近づく足音に、恐る恐るフィンが目を開くと、倒れたフィンの身体をまたぐように立つイゴールの姿があった。その手にはだらりと無造作にぶら下げた魔剣アルドゥング。

 

「てめぇは、こいつを怖がっていたようだからな。こいつの能力でその命、根こそぎ奪ってやるよ」

 

 ニタニタと笑いながら、フィンの柔らかな首筋にアルドゥングの鋭利な先端をそっと乗せた。力は込めていないものの、魔剣そのものの自重によってゆっくりとフィンの皮膚を押し下げていく。ほどなくして皮膚を突き破り、じわりと湧き出した赤い液体がその剣先を取り囲んだ。

 針で刺すような痛みにフィンは思わず左手を伸ばし、赤い刀身を握ってしまう。

 イゴールはニヤリと卑しい笑みを浮かべた。

 

「さらばだ。小僧」

 

 その声に反応したかのように、魔剣の刀身が光を帯びる。

 

「ぐぉぉおお……!」

 

 フィンは魔剣を握ったまま、苦悶の叫びを上げた。

 急激に全身から抜き取られていくような感覚。

 虚脱感、無力感、倦怠感……あるべきものが失われた状態を指し示すさまざまな言葉で表される感覚がフィンを襲っていた。魔剣から左手を離したくても、それすらも意のままにならない。じわじわと命を削られ、ただ衰弱していくばかりであった。

 大きく声を上げる力も失い、フィンはだらりと口を開けたまま虚空を見つめる。

 

「——フィン‼︎」

 

 名前を呼ぶエリックの声が、遠く隔てられたところから聞こえるようであった。フィンはぼんやりとエリックの姿を思い描いた。この世界の剣術を叩き込んでくれた師であり、歳は離れているものの転生したフィンにとっては兄貴分のような存在でもあった。

 そして、フアナ、だ。

 育ての親であり、転生神の忠実なる御使いでもあるフアナ。その身を地上に堕としても、未だどこか侵しがたい神秘的な雰囲気を帯びる、小柄で物静かな美女。その印象は、初めて「転生の間」で出会ったときと比べれば、かなり人間らしい、感情の喜怒哀楽や意志のようなものを感じるまでに変わっていた。

 

 ……いまごろ心配してんだろうな……。

 

 朦朧と薄れていく意識のなかに、眉を寄せて心配するフアナの姿が浮かび上がる。

 それはフィンの守護を命じられた転生神の使徒としての失敗による落胆ではなく、純粋に母親としての嘆きであるとフィンは信じていた。

 

 ……ごめん。

 

 フィンは、心の中の美しい母の姿に謝罪した。

 それをきっかけとするかのように、一気に記憶があふれ出す。

 フアナを使役する転生神リィン。

 金髪になり、目鼻立ちのはっきりした神々しい顔立ちへと修正されていたが、前世でつきあっていた外尾燐その人であった。宏基としての最後を迎えた水神森中央公園の夜。刺客の凶刃に散った仲間たち。中学以来の親友、有坂遼太郎。剣術の師匠である山村七海。そしてかわいい後輩の関口未央。……隣村から脱出する幼い黒髪の少女ミア。転生前の最期と転生後の人生がぐるぐると脳裏にめぐる。

 転生後も楽しかった。

 フアナ、エリック、ダーシーの笑顔に囲まれた過ぎし日の記憶がよみがえる。これはいつのことだっただろう? よくわからない。——わからないけど、幸せな充足感だけがフィンを包みこんだ。

 すでに外界の音はなにも聞こえない。

 肌に触れる感覚もない。

 握っているはずの魔剣の存在感もなく、ただ真っ白な空間に投げ出されたかのような、そんな錯覚を覚えていた。まるでリィンに招かれたときに訪れた「転生の間」の乳白色の空間のようであった。

 また、あそこへ戻るのだろう。

 短いあいだではあったが初めての交際相手であった燐の、はにかむような笑顔を思い浮かべた。

 

 ……燐。

 

 そのとき、左手に違和感が走った。

 いままで途絶えていた感覚がたったひとつ繋がったことによって、たちまちフィンの意識は正気へと立ち返った。浮遊感のある淡い白濁した世界のなかから、ふたたびコルト村の泥だらけの街道の上へと放り出される。

 相変わらず視界はおぼろげで、声を上げることもできない。

 しかし、喉元に食いこもうとする魔剣アルドゥングの存在と、その剣身をつかむ左手の感覚を取り戻していた。なかでも薬指に痺れるような奇妙な違和感がある。

 よく見えない目を細めながらも向けると、かすかに見えたのは、ぼんやりとした視界をほんのりと明るく染め上げていく乳白色の光であった。

 左手から放たれた淡い光は周囲をほのかに照らしつつも、吸い込まれるように赤みを帯びた刃の内部へと取り込まれていく。それは魔剣の吸収能力によるものだったのか、それとも左手から生じた乳白色の光の性質だったのか、見極めることはできなかった。

 燃える鉄のようなあざやかな赤色に輝く魔剣へと吸い取られた光は、その内部に菌糸をはりめぐらせるかのように放射状に白く繊細な網目を侵食させていく。

 フィンは目を見開いた。

 

「な……⁉︎」

 

 喉から声にすらならぬ空気の塊を漏らすと、あとはただ絶句する。

 

 白い網目模様が魔剣の中に広がっていくにつれて、フィンの脳内に膨大な量の情報が洪水のように押し寄せていた。

 それはイメージや音声、匂いや感情、さまざまな形式の情報だった。具体的な情景イメージもあれば、見たこともない文字の羅列を眺めている映像もある。

 魔剣アルドゥングになる前の真っ赤に焼けた金属を金床の上で激しく叩き鍛える鍛冶職人の鬼気迫る姿も垣間見た。魔剣に付与された魂糸のエネルギーを奪いとる複雑な術式の構文にも、わけもわからぬままに触れた。

 それら途方もない量の情報が瞬時に、まるであたまのなかへ直接ねじ込まれたかのように、フィンの脳内にひらめいた。

 一瞬のうちに処理能力をはるかに超える情報量に晒されたフィンは、なにが起こったのか理解することができず、すっかり混乱におちいっていた。

 そのあいだにも白い光に侵食された魔剣はその赤い輝きを失い、鈍色へと姿を変えていく。変貌はフィンの触れた箇所を中心にあっという間に広がっていき、魔剣はその剣身から赤い光を失うこととなった。

 

 それがどういうことか、なぜかフィンにはわかった。

 

 ——魔剣は、死んだ、と。

 

 魔剣の死によって、フィンから奪われていた生命力は解放され、元の持ち主であるフィンのもとへと逆流するように戻っていく。活動する力を取り戻したフィンは、長い眠りから覚めたかのように「はぁっ!」と大きく息を吸った。

 たちまちに衰えていた視力がよみがえり、世界が輪郭と質感を取り戻す。

 フィンは、ただの金属へと変わり果てた魔剣から手を放し、その左手をまじまじと見つめた。薬指にはフアナが「凛との絆」と冗談めかしていっていた指輪のような痣がある。赤褐色だったそれは、コントラストの関係なのか、いつもよりも黒ずんで見えた。そこからいまも乳白色の淡い光が漏れつづけている。

 

 ……これはなんなんだ?

 

 ただの痣だと思っていたものが不思議な光を生み出し、なおかつ魔剣を無効化したという事実に、まったく理解が追いつかず、フィンは困惑したように左手の薬指を見つめていた。

 だが、それは魔剣の持ち主だったイゴールも同様で、突如として生命力の供給を断たれたイゴールは、あきらかに動揺した様子で立ち尽くしていた。

 

「……な、なにしやがったんだ……てめぇ?」

 

 震える声でフィンに問いかける。

 だが、もちろんフィンも答える解は持っていなかった。ただ、これが好機だということだけは理解していた。

 フィンは仰向けに倒れた状態のまま、一瞬のうちに身体をひねると、フィンにまたがるように立っていたイゴールの股間を思いっきり蹴り上げた。鎖帷子の防御力の恩恵にあずからない箇所への一撃にイゴールはたまらず濁った悲鳴をまき散らす。

 

「ゔ……ぉ……!」

 

 フィンは後ろに転がると身体を起こした。倒されたときに手から離れた双剣の片割れがすぐそばの地面に落ちているのを確認すると、駆け出しながら拾い上げた。そして勢いそのまま、股間を押さえながらうずくまるように身体を丸めるイゴールめがけて突進していく。

 

「覚悟っ!」

 

 フィンの叫びにイゴールはちらりと視線を向ける。脂汗を流す苦悶の表情のまま、なんとか身体を起こすと、さきほどまで魔剣であった代物を振りかぶった。

 

「——なめんじゃねぇっ! クソガキ!」

 

 上体をねじり倒すように渾身の力を込めて長剣を振り下ろすイゴール。

 フィンは真っ向から迎え撃つべく、大きく踏み込むと裂帛の気合とともに一気に飛び込んでいく。

 

「ぅおらっっっ!」

「うおぉぉぉぉぉぉ!」

 

 両者は交差した。

 激しく金属がぶつかりあい、互いにこすれる耳障りな音が響く。

 全力で打ち下ろされたイゴールの長剣はその先端で大地を切り裂き、深くめり込んでいた。かたやフィンはというと、その攻撃をかいくぐり、筋肉で盛り上がったイゴールの両腕の下にもぐり込んでいた。

 交差したとき、強烈な斬撃を受け流した小剣は、そのままイゴールの脇の下へと突き立てられている。大腿筋と背筋の力を連動させて思い切りねじ込まれた剣先は、見事、硬い鎖帷子を断ち切り、その刃を腋窩にえぐり込ませていた。

 小剣が抜かれると、切り裂かれた血管から勢いよく鮮血がほとばしる。

 

「……ぐぁあっ!」

 

 全身を駆け抜ける激痛に思わず悲鳴をあげる盗賊団首領。その手から長剣の柄が抜け落ち、地面でガシャッと乾いた音を立てた。

 フィンは抜き去った小剣を構えると、間髪をいれずにふたたび突き出す。その鋭利な切っ先は、痛みによって前かがみになっていたイゴールの喉元をあやまたず貫いた。

 

 ヒュウゥッ。

 

 イゴールの息が漏れ、かすかに質の悪い笛のような音を立てる。

 驚愕をその顔に張りつかせて盗賊団の首領だった男は、崩れ落ちるように地面へと倒れた。魔剣アルドゥングにて王になることを夢見た盗賊は、その生涯をコルト村で終えることとなった。

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