第28話見えているもの
暗い部屋。
光っているのは、いくつかの画面だけだった。
その中のひとつに、
玲花の姿が映っている。
リビング。
「……」
シオンは静かに画面を見つめていた。
玲花が、ふと足を止める。
部屋の隅に視線を向ける。
「……あ」
小さく、声が漏れる。
気づきかけてる。
ほんの少しだけ。
「……惜しいな」
画面に映るその動きを、じっと追う。
触れそうな距離まで近づいている。
あと一歩。
「……」
ほんの一瞬、考える。
止めるか。
それとも——
「……まだ、いいか」
小さく笑う。
次の瞬間。
玲花の手が止まる。
自分の言葉で。
触れる前に。
「……うん、それでいい」
満足したように頷く。
自分でやめた。
それが一番いい。
画面の中で、
玲花はもう何も気にしていない。
さっきまでの違和感も、
なかったみたいに消えている。
「……大丈夫」
小さく呟く。
「ちゃんと戻ってる」
問題ない。
全部、予定通り。
椅子にもたれかかり、目を細める。
「……怖かっただろうな」
ふと、思い出す。
昨日のこと。
侵入。
あの男。
「……よく入ってこれたよね」
声は穏やか。
でも、少しだけ温度が下がる。
「次はないけど」
それだけ。
感情は大きく動かない。
ただ、事実として処理する。
視線を戻す。
玲花が座っている。
何も知らない顔。
いつも通り。
「……それでいい」
静かな声。
「知らなくていい」
ゆっくりと立ち上がる。
部屋を出る。
足音はほとんどない。
ドアの前で、少し止まる。
「玲花」
小さく名前を呼ぶ。
聞こえていないはずなのに。
「俺が守るから」
それだけ言う。
もう一度、画面を見る。
そこにいる限り、
何も問題はない。
「……全部、見えてるし」
小さく笑う。
「大丈夫」
その一言に、
迷いはなかった。
――第28話 終――




