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第11話見えないままの愛

夜。


屋敷は静まり返っていた。


暗い部屋の中、唯一の光が静かに揺れている。


シオンの前に並ぶモニター。


いくつもの映像が分割され、無機質に映し出されていた。


廊下。


階段。


窓際。


そして――玲花の部屋。


ベッドの上で眠る彼女の姿が、静かに映っている。


規則正しい寝息。


無防備な横顔。


「……ほんとに、無防備」


シオンは小さく笑った。


指先で、そっと画面に触れる。


まるで本当に触れられるかのように。


「ちゃんと見てないと、心配になる」


独り言のような声。


誰もいない部屋の中で、その視線だけが玲花へ向けられていた。


しばらく黙ったまま見つめ続けたあと、シオンは静かに立ち上がる。


足音を立てず、廊下を歩く。


向かう先は決まっていた。


玲花の部屋の前で、わずかに足を止める。


そして、そっと扉を開けた。


月明かりが薄く差し込む室内。


ベッドの上では、玲花が静かに眠っている。


「……起こさないから、大丈夫」


小さな声で囁く。


誰に言い聞かせるようでもなく。


シオンはゆっくり近づき、ベッドの横へ腰を下ろした。


少しだけ身をかがめ、眠る玲花の顔を覗き込む。


「ほんとに可愛い」


その声は、ひどく優しかった。


そっと髪に触れる。


起こさないように。


壊れ物を扱うみたいに、慎重に。


「……ちゃんと、ここにいる」


安心するように。


確かめるように。


指先が頬に触れかけて、止まる。


ほんの少しだけ迷ったあと。


シオンは静かに身を寄せた。


そして、玲花の額にそっと口づけを落とす。


触れるだけの、軽いキス。


「愛してる」


囁くような声。


返事はない。


当然だ。


玲花は眠っている。


それでもシオンは、満足そうに小さく笑う。


「ちゃんと、見てるから」


その声は優しくて。


けれど、どこか重かった。


シオンは静かに立ち上がる。


最後にもう一度だけ玲花を見つめる。


それから音を立てないように部屋を出ていった。


扉が閉まる。


再び静寂が戻る。


玲花は眠ったまま。


何も知らずに。


ただ――ほんの少しだけ。


寒気のような感覚に、小さく寝返りを打った。


――第11話 終――


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