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破棄とか面倒じゃないですか、ですので婚約拒否でお願いします ~徒然綴り〖短編etc〗  作者:
ファング

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9/10

一筋の光明―4―



「…なんだ」

「相変わらずの荒れ具合と昏さね。

 ま、気持ちはわかるよ…アタシだって似たようなものなんだから。

 …………はぁ…。

 それでなんだけど…デマンが呼んでるんだわ。

 奥の部屋へ行ってもらえる?

 あぁ、ギルドマスターの部屋だよ」

「………」


 無言のままカウンターを離れたファングは、指示通りギルドマスターの部屋へ足を向けた。

 いつもの事で、ノックもなしにドアを開けて中に入ると、デマンからお叱りの声が飛んできた。


「てめぇ…いい加減にマナーくらい覚えな!

 何度言ゃぁ覚えるんだろうねぇ」


 デマンの横に座るギルドマスターもたじたじである。

 だが、その正面……テーブルを挟んで、デマンとギルドマスターの向かい側に座る人物に、ファングの目は釘付けになった。


 髪色は違う。

 あんな華やかな青金ではなく、深い緑色。

 だが、顔立ちはあの王子と似ていた。


 じっと睨み付ける様に見据えたまま、ファングは声を絞り出した。


「お前…あの時の…」


 デマンがすかさず『言葉!!』と叫んでいるが、睨まれた人物の方は、特に気分を害した様子はなかった。


「覚えてくれていたとは驚きですね。

 言葉を交わしてもいなかったので、忘れられていても仕方なし…と思っていたのですが」


 言葉とは裏腹に、深い緑色を纏う彼は、愛想笑いの一つも浮かべていない。


「ですが、きちんと挨拶をした事もありませんでしたね。

 改めて…私はレヴァン・ロージント。

 ラフィラス王子殿下の側近を務めております」

「……貴族が俺に何の用だ…」


 ファングの態度にデマンがすっ飛んできた。

 そして頬に盛大な一発…。


「いい加減にしなッ!!!

 そんなだから、ランクも上がらねぇんだよッ!!!」


 流石に予測していたのか、拳を受けたものの、無様に吹っ飛ばされていないファングに、デマンは溜息を零した。


「はぁ…お前にうってつけの仕事だと思ったんだけどねぇ」

「仕事…?」


 存在感のないギルドマスターは、この場をデマンに任せる事にしたのか、茶うけ代わりのリンゴを頬張っていた。


「そうだよ。

 そちらの公子様からの話でね。

 で?

 聞く気はアンのかい?」


 ファングはムスッとしたまま、それでも近くの椅子を引っ張ってきて腰を下ろし、デマンを見る。

 貴族からの依頼なんて虫唾が走るが、デマンからの直々の声掛となれば、そのままぶっちぎるのも躊躇われたのだ。


「やっぱりあたいが行くべきかねぇ…」


 デマンが疲れたように零すが、レヴァンは凪いだ様子で傍観している。


「行く…遠出か?」

「…そうだよ。

 でなきゃ、こんな話…あたいの方が受けたいくらいだ」


 デマン自身が受けたい話なのに、ファングに回すとはどう言う事だ?…と、眉根を寄せた。


「やっと興味が出たんだね…。

 ちゃんとした依頼なんだから、しっかりと聞いてくれねぇと困るんだ」

「…わかった」


 デマンが不機嫌に話し出す。

 話の内容は魔石を集める為に、各地をまわる……簡単に言えばそう言う事だった。だが、単に数があれば良いと言う話ではない。

 色々な魔物から魔石を入手し、それの保有魔力含め、大きさ等々…多岐に渡って検証するというのだ。


「狩る魔物は大物も含まれてくる。

 だから実力のない冒険者なんて、お呼びじゃないんだよ…どうだい?

 ファングなら実力は、あたいが保証できるんだが。

 まぁあんたが断るってんなら、他を探すがね」


 なるほど…理解はした。

 目標を決めずに、大物まで含め、ある意味手当たり次第に狩ると言う事だろう。そうなればなかなか戻って来る事も難しいし、体力勝負な面も大きい。

 冒険者として引退も見えてきたデマンには、少々厳しい依頼と言う事だ。


 しかし『何故自分に?』という疑問は消えない。

 何しろデマンにも耳タコになる程度には、マナーだの言葉遣いだの注意されている。しかしそれらを聞く気のないファングは、思い切り不適格だと思う。

 言葉を飾らず直球で聞けば、デマンの顔がクシャリと歪んだ。






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