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破棄とか面倒じゃないですか、ですので婚約拒否でお願いします ~徒然綴り〖短編etc〗  作者:
ファング

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10/10

一筋の光明―5―



「……嬢ちゃんの…姫さん絡み…だからだよ」


 低く、下手をすると聞き逃しそうな程小さく紡がれた言葉に、ファングの肩が揺れた。


「この公子様は姫さんの為、王子様からの依頼で魔石を集めたいんだとさ。

 理由は「あぁ、それについては私の方から話すとしましょう」…頼みます」


 デマンの言葉を遮ったレヴァンは、相変わらず冷ややかな表情を崩す事無く、淡々とこれまでの状況、そして打てる手立てについて話し始める。


 数多の魔石を集め、検証したとしても、それがエリルシアの目覚めに繋がるかはわからない。しかし出来る事は全てしておきたいと締めくくったレヴァンに、ファングはいつの間にか姿勢を正していた。


「どうでしょう?

 詳しくは聞いていませんが、小耳に挟んだ話では、貴方もウィスティリス嬢とは縁深い様子。

 彼女の為に、力を貸しては頂けませんか?」


 それに対するファングの返事は『はい』でも『いいえ』でも、罵倒でもなかった。


「すぐ準備する」


 止める間もなく、ファングはギルドマスターの部屋を後にした。

 あんな話を聞いて、いつまでも腐ってなんて居られない。


 絶対成功する訳ではない。

 だが、まだエリルシアの為に自分が出来る事があった。それだけで身体中に力が戻ってくるような感覚を覚えた。

 暗がりの中に見えた光明を、何としても掴むのだ。


 ずんずんと大股に歩き去って行くファングの背を見送りながら、カウンターのモナッタは小さく零す。


「ったく…。

 荒れも昏さも、何処に行っちまったんだろうねぇ。

 ほんと現金な奴」


 だが、その口元は微かな笑みを湛えていた。








「あそこか」

「えぇ、町から距離があるのは僥倖ですが、近隣の村ではやはり影響が出ています。

 狩っておいた方が良いでしょう。

 こんな外れの村では、行商人が来ないと困りますからね」


 ちょっとした高台から、レヴァンとファングは森を見下ろしている。


「既に検証済みの飛竜種ですから、こちらとしては有益とは言い難い……ですが、こんな辺境でも人々に恩を売っておけば、後から役に立つ事もありますからね」


 にこりともせず、ぶっちゃけるレヴァンに、ファングは『そうだな』と呟いた。

 続かない会話を互いに苦痛と感じない二人は、存外相性は良かったらしい。


 見送ったデマンは心配していたが、今ではすっかり馴染んでいる。



「あ、いたいた。

 レヴァン様ぁ、兄貴ぃ! 昼飯ができたっすよ!!」


 リコに片思いをしていて、てっきりウィスティリス領に残ると思っていたソッドだったが『おいらが居ないと、兄貴は料理とか…細かい事がからっきしっすからね!』と、魔石収集と研究の旅に半ば強引に同行していた。


「「………」」


 ファングもレヴァンも無言だが、決して空気は重くない。

 ソッドも何時もの事だと気にもしない。


「あ! 飛竜、狩る事に決まったみたいっすか?

 この時期だと卵があるかもっすから、レヴァン様も襲われるかも…剣は持っといてくださいよ?」


 ソッドの言葉に、レヴァンの眉根がピクリと歪んだ。

 相変わらず荒事は苦手らしい。

 だが、ファングがさらりと言い放つ。


「問題ない。

 俺が仕留める」

「……えぇ、是非ともお願いしますよ」


 ファングにレヴァン、そしてソッド。

 3人と、他に研究者やレヴァン付きの従者もいるが、彼等の旅はまだ続く。

 だがラフィラスから時折届く手紙には、少し嬉しい報告もあったりするので、気持ちが沈む事はない。光明はまだ途切れてはいない。


 見ればソッドは、しゃもじを片手に振り回している。

 緊張感のなさに脱力を覚えるが、ファングとレヴァンは互いに小さく苦笑を浮かべ、ソッドの方へと足を向けた。








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