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破棄とか面倒じゃないですか、ですので婚約拒否でお願いします ~徒然綴り〖短編etc〗  作者:
レヴァン

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5/10

君の為に出来る事―2―



 慌てて階段を駆け下りる。


「殿下……申し訳…ございません……」


 レヴァンの声にラフィラスが顔を上げた。

 その顔色は悪く、目の下のクマが酷くて、繊細な美貌が台無しになっている。

 ……尤も、ラフィラス本人はそんな事、全く頓着する事はないだろうが…。


「大丈夫?

 まだ辛いようなら、もう少し休んでいると良い」


 自分の方が病人のようなのに、それでもレヴァンを気遣う彼に、薄く笑うしか出来なかった。


「いえ、問題ありません。

 それで…今は何を……?」


 ラフィラスを始めとした彼等は、現在進行形で何をしているのだろう…と覗き込んだ。

 テーブルの上には地図が広げられている。


 そのテーブルを囲む様に座っているのは、マーセルにヨナスと言った先発の面々に、見知らぬ人物も散見出来た。

 そんなレヴァンに答えたのは、マーセルだった。


「処分されていない使用済みの魔石について、近隣の領主や代官達に訊ねている所でなんですよ」


 見知らぬ人物達は、どうやら近隣の領主や代官だったらしい。

 しかし使用済み……つまりは『空の魔石』と言う事だろうが、『それについて』と言うのはどう言う事だろう……その疑問は表情に出てしまっていたようだ。

 ラフィラスがポツリと呟く。


「彼女から(もたら)された情報で、レヴァンは現在も検証していると言っていたよね?

 空の魔石が魔物の発する瘴気を吸収するかもしれないと…。

 もしかしたら、それが使えるかもしれないと思ったんだよ…」


 ラフィラスは、一瞬泣きそうに顔を歪めてから、深呼吸をして再び口を開いた。


「エリ…エリルシア嬢は、瘴気を抑え込む為にあんな事をしたのだろう…だったら、瘴気を少しでも早く取り除けば……って…」


 レヴァンはハッとした様に目を見開いた。

 そしてラフィラスを凝視する。


「レヴァンが実験を進めていてくれたおかげだ…」


 ラフィラスはそう言って頭を下げる。

 だが、レヴァンの中では別の感情が湧きおこっていた。




 ―――違う

 ―――自分は悲しみに…絶望に沈んでいただけ…

 ―――もう諦めていた

 ―――どうにか出来る可能性を、模索しようとはしなかった…

 ―――未来(さき)ではなく現在(いま)に絶望していた

 ―――そして絶望に身を(ゆだ)ねていただけだ



 あぁ…とレヴァンは呻いて、右手で顔半分を覆った。


 敵う訳がなかった。

 立ち塞がる壁を前にしてなお、現実を受け止め自らの足で立ち上がり、現状を変える方法を模索するラフィラスに、誠実に仕えるのだと決めたのは自分だった筈なのに……。


「ですが魔力を使い切った後の魔石なんて、邪魔になるだけですからねぇ…。

 何処も早々に処理済みらしくて」


 マーセルが溜息交じりに溢す。


「だけど……だからと言って、可能性をみすみす手放すつもりはないよ。

 僕は…僕達はなんとしても彼女を取り戻すんだ」


 レヴァンは俯いたまま、それでも微かに口角を上げた。


「……私がやりましょう」


 レヴァンは顔を上げ、きっぱりと宣言する。


「以前に…魔石の残骸は集めている所だと言っていましたよね。

 いくらかは、既に我が領にある実験施設に運び込んでいた筈です。まずはそれを此方(こちら)に移送しましょう」


 ラフィラスはレヴァンを見つめてから、苦しそうに目を伏せた。


「……頼んで…良いのだろうか…」


 返事は一つしかない。


「当然でしょう。

 私は貴方の側近です。

 何より私自身、彼女を取り戻せるなら取り戻したい」


 『例え自分が選ばれる事はなくても』…と言う言葉は呑み込んだ。

 ラフィラスに向かって言う言葉ではないし、それ以上にエリルシアが幸せになれるなら、それで良いと思える。


「まずは自領へは使い出そうと思うので、魔馬の使用許可をお願いしたい。

 後は数名、護衛を選出しても?

 以前から打診していた各領地へ、私が直接交渉に行ってきます。

 使者を出すよりは早く、そして確実でしょう」


 そう、ラフィラスと、何よりエリルシアの為に出来る事をしよう。

 レヴァンにとって、多分…最初で最後の恋心を捧げし相手であるエリルシアを、この世界に取り戻すのだ。

 瘴気と言う害悪の好きにさせたくないし、させはしない。


 レヴァンは呆気にとられるマーセル達に一礼し、今にも泣きそうに唇を噛み締めるラフィラスには、迷いのない頷きを一つ……そして未来(さき)へ進む為に動き出した。








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