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破棄とか面倒じゃないですか、ですので婚約拒否でお願いします ~徒然綴り〖短編etc〗  作者:
レヴァン

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4/10

君の為に出来る事―1―



 全てが夢か幻のように感じられて、酷く現実感がない。

 吹き荒れた風はピタリと止んで、まるで何もなかったかのような錯覚に陥りそうになる。


 陥りそうになる…と、まだ踏み止まる事が出来たのは、目の前にある大きな結晶のせい…。

 その中には時間が停まったみたいに、動く事のない愛しい少女の姿があった。


 初めて気になって、初めて手を伸ばして、初めて愛しいと思った存在。




 何故、どうして…そんな言葉ばかりが脳内を駆け巡り、空回り続ける。


 そして聞こえてきた侯爵の悲痛な叫び…。

 それさえぼんやりと声の方を見遣るだけで、言葉そのものは鼓膜を素通りし、意味を持ったモノとして耳から脳に届かない。



 レヴァン自身、自分が荒事や突発的な事に弱いのは自覚していた。

 でなければ、今は勿論、エリルシアが空を舞う刃に貫かれた時も、ラフィラスを狙う賊を前にした時も、こんな無様を晒しはしなかっただろう。


 そう…思うのに、身体はピクリとも動かなかった。




 ガクガクと揺さぶられる。

 やがて焦点が合い、目の前に青金を纏う自分が居た…いや、ラフィラスだ。


「レヴァン!

 しっかりしてくれ!!」

「…………ぁ…」


 更に揺さぶられて、レヴァンはやっと意識がはっきりとする。


「わ…たし、は…」

「レヴァン……」

「……殿下…」


 意識は身体に戻ったのに、やっぱり現実感がない。

 いや、違う……きっと認めたくないだけだ。

 そう認識した途端、絶望感に囚われる。




 ―――彼女は死んだ…死んでしまった……

 ―――私をこの空虚な世界において、逝ってしまった…

 ―――もう出来る事なんてない

 ―――ある訳がない

 ―――あぁ、私はどうして生きているのだろう…

 ―――何故彼女が犠牲にならねばならなったのだろう…

 ―――例え私を見てくれずとも、彼女には生きて笑っていて欲しかった…

 ―――それなのに……




 彼女が自分の方を向いてくれない事は、薄々気が付いていた。

 多分、それは自分のせいもあっただろう。

 レヴァンは、エリルシアを得ようと…彼女自身に手を伸ばすより先に、外堀を埋めようと無意識に小狡(こずる)く立ち回っていた……その結果だ。


 とても貴族的な…と言ってしまえばそれまでだが、相手が悪かった。

 レヴァンと同じく、エリルシアに思いを寄せたラフィラス…。


 彼はその想いを素直に、彼女に向けていた。

 何処までも不器用で、だけど真っすぐにエリルシアだけを見つめるラフィラスは、レヴァンからはとても眩しく思えた。


 自分と似た外見なのに、その内側は自分とは全く違う。

 まるきり光と影だ。


 いや…それも違うのかもしれない。

 生まれてから影の中に置かれたのはラフィラスの方だ。


 思い返せばレヴァンは守られていた。


 確かに学校はとても居心地が悪かったし、嫌な事ばかりだったが…戻って見れば不器用な祖父も、静かな祖母も慈しんでくれた。

 賑やかな母は、レヴァンを見るなり泣き出してしまい、苦しい程に抱き締められて、居場所はあったのだと思えた。

 ケラック達使用人達も心を砕いてくれている事は、いつしか心に染み入って来て、戻った最初に感じていた孤独は、気付けば鳴りを潜めていた。


 父とか言うウッカーに関しては、意見も感想も差し控えるが、それでも言えるだろう…。

 レヴァンは、ラフィラスに比べればずっとマシだった。





 気付けば……見覚えのない部屋でぼんやりと座り込んでいた。

 あの場の誰かが、此処(ここ)へ連れてきてくれたのだろう。


 身体は重いが、ふらふらとレヴァンは立ち上がった。

 エリルシアを失った…しかしレヴァンは貴族で、ラフィラスの側近だ。

 いつまでもこうしている訳にはいかない…と、ようやく動こうと考える。


 何の装飾もなく、安っぽい室内を見回してから扉に近付く。

 恐らく庶民向けの宿か何かだろう。

 ドアノブ一つとっても、粗末なものだ。


 廊下に出ると、どうやら2階らしい。

 吹き抜けになった階下を手摺越しに見下ろせば、幾つも雑多に並んだテーブルの一つに、ラフィラス達の姿が見えた。






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