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破棄とか面倒じゃないですか、ですので婚約拒否でお願いします ~徒然綴り〖短編etc〗  作者:
ラフィラス

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3/10

あの日から―2―



 そして現在、無事ロズリンド領となる事が決まったこの地で、再び悲しい事故が起こる事のない様にと、急ピッチで結晶を囲う建物を建造中である。

 とは言え一朝一夕で出来上がるモノではなく、警備兵を配置し、目隠し布も活用している状態だ。

 建造に(たずさ)わる職人達の安全の為にも、目隠し布等の使える物を使って、踏み入ってはいけない部分の境界を示す事は必要だった。


 『また後で来るよ』と言って背を向けたラフィラスは、目隠し布の外へ出る。

 出た途端、誰が置いたのか知らないが、簡素だが祭壇と呼べそうな台座が目に入る。その上や横には供物や花束が、山の様に積まれていた。


 祭壇の前には住人か、それとも旅人か…知る(よし)はないが、人々が地面に膝をついて祈りを捧げている。

 黙して祈るその姿は静謐で、周囲の物音までも消し去ってしまったかのような錯覚を覚えた。


 言葉が出ず、立ち尽くしてしまったラフィラスに近付いてきたのはヨナスだ。


「殿下」


 ハッとしたように、振り返ったラフィラスを見て、ヨナスは首を傾けた。


如何(いかが)なさいました?」

「ぁ……ぃゃ…」


 そこで言葉を切ったラフィラスは、祈る人々に顔を戻す。

 それにつられるようにヨナスも人々を見て、悲し気に目を伏せた。

 だが、ラフィラスに伝えなければならない事があったのを思い出し、ヨナスは再び彼へ向き直る。


「殿下、ザッタニフ公爵令嬢から、晩餐への御「断りを頼んでも良いだろうか?」招待が……ぁ、はい」


 ヨナスに最後まで言わせる事なく、ラフィラスは一蹴した。

 先んじてあったネデルミスとの会談に、ロズリンド王国に戻っていたベネティ・ザッタニフ公爵夫人も同席する事になり、彼女の娘と息子も、マナウトにやって来ている。


 まだ夫人は離縁した訳ではないし、子供達もマグノリア家に養子となった訳ではない。

 なのでラフィラスからすれば、彼等(かれら)は等しく隣国ネデルミス人だった。


 そんな彼等だったが、その中でヨラナ・ザッタニフ公爵令嬢は、何かにつけてラフィラスと接触しようとしている。

 ラフィラスにとっては正直面倒でしかないし、何を望んでいるのかも不明で不気味で仕方ない。


 何より、大事なエリルシアとの時間を邪魔される事で、嫌悪にまで至ってしまっている。

 勿論、そんな感情を(わず)かにでも気取らせるヘマはしないが…。


 ロズリンドとの縁を深めようとするのは、他国貴族としておかしな話ではない。だが、それならそれで、是非とも王都で頑張ってくれと言いたいのを、ラフィラスは飲み込んでいる状態だ。


「この地は確かにロズリンドへの割譲が決まっている。

 しかし、まだネデルミスの民の出入りも多く、全てが完了した訳ではない。

 まだ外交に割ける時間は、この地にも僕にもない。

 ヨナスには面倒を掛けるが、丁重に断っておいて貰えるだろうか…」

「承知しました」


 物言いも所作も、控えめで丁寧なものだったが、その声には有無を言わせないモノが含まれていて、返答は了承しかない。

 側近であるレヴァンが居れば良かったのだが、彼は現在(から)の…魔力を失くした魔石の収集の為に不在なのだ。

 それで騎士であるヨナスの負担が増えているのだが…今、不用意に新しく人を入れるのも警戒してしまう為、仕方ない。


 ラフィラスもひっそりと溜息を零し、その場を離れようと足を踏み出した。

 今日もやる事は多い。


 領民の移動、それに伴って荷車の往来も多く、事故他への注意を怠る事は出来ない。

 この後、エリルシアの傍にラフィラスが、ゆっくりと留まる事が出来る時間は多くないだろう。それでも食事を此処(ここ)に運び込めば、その間だけでも近くに居る事は出来る。

 今一度振り返って、自嘲するような笑みを浮かべた。


「……ごめん…。

 鬱陶しいって思われるかもしれないね……それでも、少しでも傍に居たいんだ…」


 呟きを残し、ラフィラスは今日の仕事を片付ける為に、その場から立ち去って行った。






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