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破棄とか面倒じゃないですか、ですので婚約拒否でお願いします ~徒然綴り〖短編etc〗  作者:
ネデルミス プルチェとカプシャ

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13/20

心に巣喰うモノ―3―



「………っ…」


 床に転がったカプシャの前で、横たわったままのプルチェが身動(みじろ)ぐ。その様を見て、カプシャはまるで芋虫だな…と、他人事のような感想を抱いていた。


「ぅ……ぅぁあ”あ”ぐぎぃぃぃ~~~~~!!!!!」


 痛むのだろうが、本気で煩い。煩いし、仮にも王女が発して良い声ではない。それ以前に女性が……いや、何でもない。

 兎に角、品性の欠片もなく、思わず『絞め殺してやろうか…』と感想を持つ程度には煩かった。

 だが怒鳴る体力も気力もない。


「いだい”ぃぃぃ…な、んで……なんで、こうなるのよ”ぉぉぉ」


 うぞうぞと、本当に芋虫のように身をくねらせたプルチェが、ゆっくりと仰向く。

 カプシャは勿論、プルチェも手足はがっちりと縛られていて、身体の自由はない状態だから、芋虫のように動くしかないのだ。


 顔は殴られた事でパンパンに膨れ上がり、元から不細工だとは思っていたが、更に不細工に見えた。

 だが、そこまで考えて、カプシャは苦い笑いが知らず知らずのうちに浮かび上がる。


 ――顔以前に、性格が不細工だったっけな……と。


 声に出して笑ったつもりはなかったが、プルチェがゆっくりと顔を向けてきた。


「っ!

 ちょ”…っくぅ…い”だい”……わら…ってんじゃ、な…いわよ……くぎぁぁ”ああぁ…」


 痛むなら喋らなきゃいいのに…と、妙に冷めた目で見ていると、プルチェが目を吊り上げた。

 もっとも縛り上げられたまま、床に転がりながらの事なので迫力はない。


「たす…げなさい、よ”……もう!! い”ぎいいぃい”!!!」


 プルガも、流石に女だからと無意識にでも手加減したのかもしれない。

 どうせなら声も発せない程殴っておいてくれれば良かったのに…と、恨み言を内心で呟くが、このままでは煩すぎて気が狂いそうだ。


「黙れ…」

「な!!??」


 普段から邪険にはされてきたが、それでも最後には折れてくれていたカプシャの、こんな地を這うような不機嫌な声は聞いた事がなく、プルチェは二の句が繋げない。


「黙、れっ…て言ってんだ、ろ。

 もうさ、終わ…りなんだよ。ちっ…くそ…いてぇな…」

「な…なんでそ、んな事…い”う”…いだい”……のよ…まだ、終わってなんかないわ!」


 ギャンギャンと耳障りな声が響きわたる。

 馬車内はある意味密室で、反響した声が更に脳を不快に揺さぶった。

 だが、カプシャには怒鳴り返す気力もない。

 だからぼそりと呟く。


「終わり…だ、よ。

 逃げ場なんか、あるもんか…あのおやじが、見逃してくれるなんて……ある訳…ないだろ」


 静寂が戻る。

 しかし、すぐに別の音に取って代わられた。


「いやよ…怒られたくない…。

 お父様、怖いのよ…直ぐ怒鳴って…しかも女の子を殴るなんて…うぅ…ヒック」


 すすり泣くように紡がれた言葉に、カプシャは双眸を閉じながら、ハッと鼻で笑った。

 プルチェは自分がやらかした事の重大性なんて、まったく…なーんにも考えてない事が、はっきりとわかる。カプシャは自身が小物だと知ってる。だから終わりだと思う。

 しかし、プルチェは自分は特別だとでも錯覚しているのだろう。特別だから、やらかしても怒られる程度で済むと思っているのだ。とんだ誤解…己惚(うぬぼ)れもいい所だ。


 カプシャは突きつけてやりたくなった。


 ――お前は特別なんかじゃない

 ――ただの恥知らずだと…。

 ――ただの能無しで極潰しだと。


 だが、全て自分に跳ね返ってくる。

 プルチェの啜り泣きを聞きながら、カプシャはゆっくりと目を閉じた。






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