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第六十一話 洞窟に至る道中にて

 ガタゴトガタゴト のしのしのしのし 端から見ると謎のパーティーが街道を行く。


 幸いな事に洞窟の近くまでは街道が通っているため、ミシェルの負担を少なく現地まで連れて行けそうだ。

 馬車に乗せて連れて行けるのもそうだが、何より街道には魔獣が出にくい。


 いざ戦闘となった時には馬車をパージして戦う事になるが、馬車にはそれなりの防御力があるとは言え万能では無い。従ってかばって戦う必要がある。


 となれば戦闘に時間がかかってしまって現地に着くのが遅くなってしまうと言うわけだ。


 ……悔やみの洞窟に魔獣が出なければ助かるんだけどな。恐らく何かしら棲んでいると思う。何か護る方法を考えておかないと行けないな。


 そんな俺の心配を余所にレニー達は楽しそうに雑談をしている。暢気なもんだが、緊張をほぐすためには悪くないな。


「ミシェルってこの辺じゃ見かけない顔だけど何処の街から来たの?フロッガイ?それとも宿場町のリバウッドとか?」


「いいえ、私はトリバでは無くてルナーサに住んでますの」


「へえ!ルナーサか、商人の国だよね、てことはミシェルも実家が商人とかなのかい?」


「そうですね、お爺様の世代からなんですが、ちょっとした商売をしていますわ」


「しかし、どうしてまたルナーサからわざわざ悔やみの洞窟に行こうと思ったの?何か訳ありみたいだったけど……」


 そう言えば洞窟最深部まで護衛してくれ,としか聞かされていない。我々はただの護衛役なので込み入った事情を知る必要は無いし,ミシェルにもその義務は無い。


 しかし、可能であれば俺も聞いておきたいな。なんというか、洞窟名からして嫌な予感がするし、情報はいくらあっても良いものだ。

 

 もっとも、情報はただでは無いのだが。


 何気ないレニーの質問だったが、ド直球過ぎてミシェルが考え込んでしまう。込み入った事情だからこそ話しにくいだろうに、折角盛り上がっていたガールズトークが終わってしまったじゃないか。


「そうですわね、詳しい話……は申し訳ありませんが伏せさせていただきます。でも、言える範囲で説明しますわ」

 

 無理に言わなくても良いんだぞと止めようと思ったが、いっそ言える範囲でも秘密を共有した方が依頼が上手くいくような気がしたのでそのまま話して貰うことにした。

 

「うちは元々ルナーサではなくてトリバに家があったそうなのです。その頃はまだ商家ではなく、狩りなどをして日々慎まやかに暮らしていたそうなのですが、お祖父様の世代で其れが変わりましたの。


 ある日とある商材を思いついたお祖父様はルナーサに身を移し小さなお店を開きました。其れが大成功して家族を呼び寄せ、以後大きな商会にまで成長し私は不自由なく生活させていただいてます」


 なかなか奮発した報酬だなと思っていたが、お嬢様だったとは。やはり話を聞いてよかったな!お嬢様を危ない目に合わせてしまったら今後どんな刺客を差し向けられるかわかったもんじゃない。 


 ……もしかしてミシェルの身分を知っている人が其の考えに至って依頼を断っていたってのもあるかもしれないな……。


「それで……、理由は話せませんが、ご先祖様が隠したと言われている家宝を取りに行くようお祖父様から言われました。それもなるべく早く手に入れるようにと」


「その家宝があるのが悔やみの洞窟ってことかい?」


「ええ……、まさかそのような名前で呼ばれ忌まれて居たとは私も知りませんでしが、お祖父様の話ではその洞窟の近くでご先祖様達は生活し、代々洞窟に祀った家宝を護っていたと聞きます」


「なんたってその家宝をルナーサにもっていかなかったんだい?持ってったらこんな苦労しないで済んだろうに。それに、護りも無しにそんなもん置いておいたらさ、あたいら見たいなトレジャーハンターに持ってかれちまうだろ?」


「それは……、そうなのですが、どうもその洞窟から持ち出すことが出来なかったようで、しかも祭壇の間に入るためには特別な鍵が必要で、下手な泥棒やトレジャーハンターには手を出せないと聞いています」


「実際うちのメンバーも尻尾を巻いて逃げ帰ってきたからな。案外その泥棒よけにひっかかったのかもしれないなあ」


 さすが剣と魔法の世界は話が違うな。よくわからないけど、何か特別な術がかけられていて護られているとかそういう話なんだろう。一族の者以外が近寄ると呪いが…とか。


 ……俺達呪われないよな……ミシェルの関係者だから平気だよな…?



「王家の森に神の山、そして悔みの洞窟かあ……」


「何か知っているのかレニー!」


「ん?随分濃い場所に住んでたもんだなあって思っただけだよ」

 

「なんだよそれは……。そう言えばレニーの家ってどこにあるんだ?実家じゃなくてフォレムの家な。リックのところにばっか泊まってたけど、まさか家なき子ってことはないよな?」


「家なき子って……そう言えば見せてなかったね。ねえカイザーさん、今日は早めに野営の準備をしようと思うけど良いかな?あそこに丁度良い広場があるしさ」


「そうだな、ここらで今日は休もうか」


「って、お前あれか?テントに住んでたのか?それって家なき子と変わらないぞ?」


「だーかーら!違うって!カイザーさん、お願いします!」


「おう、っと、レニー、ミシェル一応馬車から降りてくれるかい」


 乗せたままでも平気そうだけど、一応降ろしてからやらないとね。何か起きても困るしさ。 


 二人が降りて離れたのを確認し、馬車をレニーハウスに変形させる。と言っても例のコンテナ形態のことだが、中身はしっかりレニーが住んでいた状態で保持している。

 

 これにはレニーもニッコリって感じで、マシューとミシェルを中に案内している。


「じゃ~ん!これが私のお家よ!」


「なんだこれすげえ!ってか、お前カイザーに住んでたのかよ!」


「こ……これは…、なんとかして作れませんの?お金の匂いがしますわ!」


 様々な声が飛び交うが、どう考えても3人の寝床を作るには少し狭い。


 ……いよいよマシューにアレを打ち明ける時が来たか。

 

 


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