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自傷ダメージだけで常に瀕死だったけど、2つ目の固有スキルは回復。  作者: アイギス


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まがい物の宝箱

十六層に足を踏み入れると、それまでの草原に、ごつごつとした岩場が混じり始めた。地面は所々えぐれ、大小の岩が転がっている。視界の悪さのせいか、モンスターが不意に岩陰から飛び出してくることも増えた。

 最初に襲いかかってきたのは、岩の隙間から這い出てきたゴブリンの一団だった。ソルジャー格の一体を先頭に、後方からメイジらしき個体が魔法の詠唱を始める。

 ――前衛から潰す。

 気配を殺して距離を詰め、先頭のゴブリンの首元に短剣を突き立てる。そのまま回転させて斬り飛ばし、返す刀でもう一体。詠唱中のメイジには、隙が生まれた瞬間に踏み込んで仕留めた。

 十七層に入ると、今度は茂みの奥から突進してくるウルフの群れに出くわす。四つ足特有の直進的な動き。突進の軌道を見切り、正面から迎え撃つ。何頭かは、突進に合わせたカウンターで一撃のもとに沈めた。

 十八層――岩場がさらに険しくなったその階層で、私は少し奇妙な光景に出くわした。

 開けた空間の中央に、ぽつんと宝箱が置かれている。

「……罠、かな」

 データ書籍に書いてあった注意事項を思い出す。宝箱の金属部分が全体の15~20%を占めていれば本物、それより少なければミミックの可能性がある。

 目を凝らして観察する。金具の面積は、明らかに基準より少ない。

「やっぱりね」

 私は懐から火炎瓶を取り出し、宝箱めがけて投げつけた。

 炎に包まれた瞬間、宝箱が咆哮を上げて跳ね起きる。予想通り、ミミックだ。

 大きく口を開けたその瞬間――本来なら横一文字に斬るのが正解だと分かっていたはずなのに、とっさに動いた剣は、十字を描くように斬り込んでいた。

 悲鳴のような声を上げて、ミミックが崩れ落ちる。

「……あれ?」

 妙な違和感を覚えながら、私はドロップアイテムに視線を落とす。

 防御力に見合わない、大きすぎるドロップ量。そして――見慣れない、淡く光る鍵のようなもの。

 試しに固有スキル【鑑定】を使うと、視界に表示が浮かび上がった。

『ハイミミック(レアモンスター)を討伐しました』

『条件を満たした上でハイミミックを討伐したので唯一スキル【亜空間庫】を獲得しました』

 思わず息を呑む。

 まさか、あの宝箱がレアモンスターだったなんて。

 誤って十字に斬ってしまったことが功を奏したのか、単に運が良かっただけなのか。理由は分からないが、確かに新しい力を手に入れたことだけは間違いなかった。

 しばらくその場に立ち尽くした後、私は気を取り直して歩き出す。

 十八層の奥、次の階層へと続くゲートが、静かに私を待っていた。

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