三対三の戦術
三十二層へと戻った私たちは、まず残っていたエレメンティスの討伐に取り掛かった。
数時間をかけて、一体、また一体と確実に数を減らしていく。その間、私たちは絶えず作戦を練り直していた。
「紫苑、エレメントブレイカーってスキル、鑑定で見てみたんだけど」
私が差し出した情報を、紫苑が覗き込む。
『エレメントブレイカー――エレメント系統に対し十倍のダメージを与える。存在値が大きいほど倍率が上昇する』
「これ、ラストアタックで使うのが一番効率良さそうだね」
「問題は、タゲの取り方」
鏡花が、剣を研ぎながら口を挟む。
「データ書籍によると、エレメント系統は通常『カローリ・ドゥーホフ』――精霊の王に分類されるみたい。物理攻撃だけじゃタゲが取れないどころか、魔力の乗っていない攻撃だと、その分が自然に回復しちゃうんだって」
「つまり、魔力を込めた攻撃じゃないと話にならないってこと」
「そういうこと」
私たちは、一つずつ役割を確認し合った。
「エレメンタリニティー三体を、まず中央のエリアに引き寄せよう。三対三の状況を作れば、各個撃破されずに済む」
「了解。私がデバフで足止めするから、その間に引っ張って」
紫苑の提案に頷き、私たちは残りのエレメンティスを片付け終えた後、改めてエレメンタリニティーの群れへと近づいていった。
魔力を込めた一撃を、一体ずつに当てていく。苛立たしげに唸り声を上げながら、三体の巨影が、ゆっくりと中央へと集まり始めた。
「よし、来る!」
陣形を整え、三対三の状況が整う。
「紫苑、まずは陰術で削って」
「任せて」
紫苑の詠唱と共に、独特な紋様が空間に広がる。エレメンタリニティーたちの属性倍率が、二段階――体感できるほどはっきりと、削り取られていくのが分かった。
続けて紫苑は、陽術で自身の属性値を引き上げる。第二職の柔術士を前面に押し出し、サポーターとタンクを兼ねた立ち回りへと切り替えていった。
「鏡花、距離取られたら薙刀、詰められたら刀で!」
「分かってる!」
エレメンタリニティーが距離を取れば、鏡花は薙刀のリーチを活かして牽制する。逆に間合いを詰められれば、瞬時に刀へと武器を持ち替え、鋭い斬撃を叩き込んだ。紫苑の属性付与のおかげで、その一撃一撃が確かなダメージとして通っている。
私は、魔法使いの職業効果を活かしながら、サブアタッカーとして立ち回った。属性付与された攻撃に対する被ダメージが二十パーセント減少し、逆に敵への与ダメージは二十パーセント増加する――その補正のおかげで、私は比較的安定して戦場に留まり続けることができた。
削り、削られ、また削る。長い攻防の末、三体のエレメンタリニティーが、揃って瀕死の状態にまで追い詰められた。
――その時だった。
「っ、何か来る!」
鏡花の叫び声と同時に、三体の輪郭が、不気味に膨れ上がっていった。




