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自傷ダメージだけで常に瀕死だったけど、2つ目の固有スキルは回復。  作者: アイギス


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鍛冶場にて

 地上へと戻った私は、その足でハンター協会へと向かった。

 受付カウンターで三十層踏破を報告すると、職員の女性が端末を操作しながら、ふと顔を上げた。

「おめでとうございます。……ところで、これからもソロで下層を活動される予定ですか?」

 その問いに、私は少し間を置いてから答えた。

 脳裏に蘇るのは、三十一層で目にした光景だ。果てしなく広がるフィールド、群れで行動する魔物たち、見たこともない強大な影。あの景色を思い出すたび、今の自分一人の力では、到底太刀打ちできないという現実を突きつけられる。

「……いえ。パーティーを組んでから、下層は探索するつもりです」

「承知しました。それが賢明かと思います」

 職員はそう言って、踏破証明書の発行手続きを進めてくれた。

 続けて、私はこれまで貯め込んできた素材の一部を買取に出すことにした。

・ジャイアントアナコンダの牙・肉

・ハイオークの牙・皮

・ハイオーガの角・皮・牙

・各種モンスターの魔石(小〜中)

・その他、道中で得た獣の肉・皮・牙類

 受付台にずらりと並んだ素材を前に、職員が一つずつ査定を進めていく。買取金額の合計が210万円だったと言う事を聞かされ、私は内心で小さく息を呑んだ。これだけあれば、当面の生活にはまったく困らない。

 換金を終えたあと、私は残しておいた素材を抱えて、協会内に併設された鍛冶場へと足を運んだ。

「双剣と、片手用の斧を二本、作っていただきたいんです」

 鍛冶師の男は、持ち込んだ素材――ジャイアントアナコンダの牙や、ハイオーク・ハイオーガの角や皮を一通り検分し、満足げに頷いた。

「悪くない素材だ。これなら、相当なものが打てるぞ」

 時間がかかると言われ、私はそのまま作業を見学させてもらうことにした。

 炉の炎が、オレンジ色に揺らめいている。鍛冶師は素材を丁寧に選り分けながら、まず芯になる金属の塊を炉の中へと差し入れた。

 真っ赤に焼けた金属の塊が取り出されると、鎚の音が響き始める。カン、カン、と規則正しいリズムが鍛冶場に満ちていく。打たれるたびに形が少しずつ変わり、やがて剣の原型が浮かび上がってきた。

「ここに、アナコンダの牙を砕いた粉を混ぜ込む」

 鍛冶師が説明しながら、炉の中に細かい粉末を振り入れる。金属が、わずかに違う輝きを帯び始めた。粘り強さが増すのだという。

 二振り目の刃を打つ間、彼はハイオークの皮を鞣し、柄に巻く準備を進めていた。手際よく動く職人の手つきに、私はただ見入るしかなかった。

 斧の方は、ハイオーガの角を粉末にしたものを刃先に鍛え込んでいるらしい。硬度が格段に上がる、と鍛冶師は誇らしげに語った。

 鎚を振るう音、炉の爆ぜる音、焼けた金属特有の匂い――その全てが混ざり合い、鍛冶場は独特の熱気に包まれていた。

 三時間ほどが経った頃、ようやく四つの得物が仕上がった。

 双剣は、これまで使ってきた片手剣よりも一回り軽く、それでいて確かな強度を感じさせる造りだった。片手斧は、ダランから貰った斧とはまた違う、滑らかな曲線を描く刃を持っている。

「どうだ、手に馴染むか」

 差し出された双剣を握り、私は小さく頷いた。

「……はい。とても」

 新しい得物の重みを確かめながら、私は鍛冶場を後にした。

 外はすっかり夕暮れに染まっている。これからは、二つの得物を携えて、さらに先の階層を目指すことになる。

 そしてその時は――きっと一人ではないはずだ。

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