新たな武器の手応え
二十五層のボスを退けたあとも、私は同じ戦場に留まり続けていた。
理由は単純だ。手に入れたばかりの能動スキルと固有スキルを、実戦で確かめておきたかった。
幸い、ハイオークは一定時間でリポップするらしい。姿を見せた二体を前に、私は左手の斧を構え直す。
突進してくる一体の拳を紙一重で躱し、間合いを詰める。
――スラッシュ。
意識して発動させると、振るった剣に淡い光が纏わりつくのが見えた。通常よりも深く、重い斬撃が巨体の脇腹に食い込む。これが能動スキルの力か、と小さく息を呑む。
もう一体の拳が迫る。今度はあえて躱さず、紙一重で受け流した。
――カウンター。
攻撃力と技量が乗った一撃が、相手の顎を打ち抜く。これまで使っていた剣士の「カウンター」とは、また違う感触だった。威力そのものは互角でも、発動の間合いが心なしか広い気がする。
二体を相手取りながら、私は何度もスキルを使い分けた。固有スキル【追撃ダメージ】は、どうやら一定数の攻撃を連続で当てた後に自動で発動するらしい。三撃目、四撃目あたりで、普段より明らかに重い一撃が乗る瞬間があった。
五度目の討伐を終える頃には、どのスキルも体に馴染み始めていた。流れるような連携で敵を崩し、隙を見て斧を叩き込む。五年間、自傷ダメージ一本で戦ってきた身としては、手札の多さに戸惑いながらも、どこか心が躍るのを感じていた。
満足のいく手応えを得たところで、私は二十六層へと歩を進めた。
この階層からは、地面のあちこちに小さな岩の塔のようなものが立ち並んでいた。視界を遮るその陰から、ゴブリンの一団が次々と飛び出してくる。気配を殺して間合いを詰め、首元に短剣を突き立ててから回転で斬り落とす――その動きに、今はスラッシュを織り交ぜる余裕すらあった。
オークの群れも、以前より数が増えている。三体、四体と連なって襲いかかってくる相手を、カウンターと追撃ダメージを軸に着実に捌いていく。
二十七層に差し掛かる頃、視界の端のレベル表示は95に達していた。
――あと少しで、百か。
これまでの道のりを思えば、途方もない数字だ。だが今の私なら、きっとそこへ辿り着ける。そんな確信めいた予感を抱きながら、私は次の階層へと続くゲートを見据えた。
空はすでに茜色に染まり始めている。今日はここまでにしよう、と私はセーフスペースへ足を向けた。
マジックバッグから携行食を取り出し、簡単な夕食を済ませる。斧の刃を確かめ、剣の柄を握り直す。両方の得物が、今はもう違和感なく手に馴染んでいた。
夜空を見上げながら、私は静かに目を閉じる。
――明日には、きっと百に届く。
そんな予感を胸に、私は深い眠りへと落ちていった。




