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9.ムロンの決戦6


「近衛第一騎士団長」

「はっ!」

「指揮を貰うぞ?」

「はっ、これより近衛第一騎士団は近衛騎士団総団長指揮下に入ります」


 味方の元へエメリヒ王を伴いながら帰陣する道すがら、近衛第一騎士団の指揮権を自分の手元に収める。久しぶりに指揮するが、自分が最も経験豊富とも言える部隊規模と、馴染みのある団員たちだ。随分とおさまりが良い気がした。



「それでは頼んだぞ!こちらはお前たちの勇姿を利用して、散々味方を鼓舞させてもらうからな」


 エメリヒ王は伝令によって新たに前に出て来た近衛第二騎士団のもとに帰ると、自分に冗談を飛ばす。


「鼓舞しても、お釣りがくるほどの勇姿を見せてご覧に入れましょう」


 我ながらクサい言葉である。


「さぁ、時間だ反転する!」


 一度息を入れた近衛騎士達を連れて、今度は来た道を徐々に戻り始める。目標は今日2往復目の戦場中央だ。正面から見える帝国騎士団もこちらに向かって動き始めていた。


 そして後ろの方ではエメリヒ王が味方の鼓舞を始めたのか、喚声が上がり始めて自分達の背を後押ししている。


(さぁ、勢いよく飛び出して来たものの、どう戦うべきか)


 帝国の騎士団は本来歩兵が混じっているが、今回は騎兵のみを選抜したのか歩兵の姿が見えなかった。いつもの重装歩兵混じりであれば、この平原において全く相手にならない筈だったのだが……いつもであれば後方の魔導士や、退路の遮断を狙う歩兵達が今回意味をなさない為であろう。


 自分が思考している間に接近を続けた我々近衛騎士団と帝国騎士団は、互いに少し距離を取ったところで停止した。

 観察したところ、帝国騎士団に背中に弓を背負った弓兵の姿が見えない。こちらの機動力に数で勝つための完全な騎兵のみの編成だ。一方のこちらはフレディを始めとして騎射が出来る弓兵がいるが、普通の騎士達と比べるとどうしても攻撃力が落ちてしまう。


(誘い込んでみるか…弓騎兵を囮に帝国騎士団を誘導して、その横腹を騎兵に突き崩させる)


 心の中で考えが決まったら、騎兵を指揮するカールに意図を伝える。静かに何度か頷いたカールに騎兵の指揮を任せて、自分は集団の先頭へと出た。


「アーチャーは我に続け!!我々がこの大戦の口火を切る!!突撃!突撃!突撃!!」


 味方に決心を与える時間は必要ない。最初の頃とは違い、我々は今となっては王国で最も実戦を積んだ兵士達だろう。


 徐々に加速していく風景に、耳元を切り裂き始める風の流れ…感じていた若草の匂いは徐々に消えていく。

 我々の動きに呼応するように帝国騎士団の全員が行動を始めた。様子見して兵力を小出しにすることなく、最初から我々アーチャーに全力の兵士を当ててくるようだ。我々が徐々に敵の右側へと流れ始めるのに合わせて、その行き先を塞がんと馬首を調整しながらこちらに向かってくる。


(更に右へ、右へ)


 頭の中に最適な行動が浮かび、それが風景と重なって見える。自分のこれまでの経験が活きているのが分かった。我々の迎撃をせんと迫る帝国騎士団を見ながら、我々は適切な距離感を保つように方向を調整する。


 体に通していた弓を手に取ると、視界の端で後ろの味方が同じように弓を手にしたのが分かった。今更「構え!!」などと号令を発する必要はないようだ。


 背中の矢筒から矢を三つ引き抜き、番える。

 相手は帝国騎士団でそれなりに重装の騎士達だ。だがその装備の重さは帝国歩兵ほどではない。彼ら帝国騎士団はその馬の遅さと王国との差を知り、騎乗する騎士の装備を軽くしている。


(狙いどころは、顔面・首・腕の内側と脇腹・太腿)


 馬上から狙うことが出来るのは顔と首くらいだが、それだと反応されてしまいそうだ。距離を詰めてプレートアーマーの貫通を狙うのは危険…やはり、顔面の真ん中を狙うしかない。


 距離は十分近くなっていた。これ以上の接近を許すと離脱の際に背中に噛みつかれてしまう。


 番えた矢を素早く引ききり、先頭の男の顔へ向かって放つ。間髪入れず二つ三つ。2本目と3本目は敵の動きと避けを予測して少し違う場所へ…


 後ろのアーチャー達も自分に続いて、帝国騎士団へ速射を行った。


 手綱を握り直し、我々が放った矢の行方を見守るが…中って落馬したのは、ひとりかふたりだけだ。自分の矢を含めて放たれた矢のほぼ全ては、避けられ払われ、アーマーに弾かれていた。


 悔しいが、ここで欲を深くしない方が良い。


 そのまま左手に弓を握り、右手に手綱を握ったまま加速を始めた。

 それに続く味方のアーチャー達、この調子なら後ろに噛みつかれる心配も無いだろう。もう一度距離を取ったら、挑発がてら矢を射かけて誘導するだけだ。


 後ろの様子を伺うと、帝国騎士団は逃げる我々に追い付かんと、全力で騎馬を走らせている。一方的に射かけられてそのまま逃げられるなど、騎士にとって不名誉な事は無い。だが、我々に追い付くことが出来ないのが、帝国と王国の馬の差だった。


 我々も後方に迫る敵兵に射かけることは出来ないが、帝国騎士団も我々に追い付くことが出来ないまま距離が開き始める。


はじめまして。都津(トツ) 稜太郎(リョウタロウ)と申します!


再訪の方々、また来てくださり感謝です!


今後とも拙著を、どうぞよろしくお願い致します。

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