↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
89/94

3.帝国皇帝の親征3



 近衛軍は山地にその兵力を隠しながら、帝国皇帝ヴェルデの動向を細かく探った。

 更に自城に帰還したモーラ公へ、すぐさま今できる最大の兵力を率いてエメリヒ王の下に来るように伝令を出した。あとは王国の各地に今出せる兵力を拠出するように伝え、海軍のバルグ候には、これ以上帝国領から兵力が王国側に渡ることが無いように、レイトリバーを封鎖を伝えた。


 一方のヴァルデ帝国皇帝の親征軍は、暫く中央平原北端にてその足を止めていた。


 これは我々王国にとって非常に幸運な事だったのだが、この年は珍しく中央平原においても非常に大量の雪が降り積もったのだ。

 普段の中央平原は北部であっても、春先までに膝丈程まで雪が残っているくらいなのだが、今年は自分がエメリヒ王と合流した日以降、暫く降り続けて人の背丈よりも積もったのだ。豪雪と言ってもいいこの状況では、誰も軍を動かす事は出来ない。


 これを利用してエメリヒ王は「雪を司る色彩の神の名を持つ、リデル・”ホワイト”が合流したからだ!!」「我々には色彩の神々の加護がある!!」と王国軍の士気を維持するために、様々な方策を用いていた。



 そして、豪雪が溶け始める春先には事が動き始める。


 最初の動きは王国側からである。より早く雪が溶けていた南方や、そもそも雪の量が少なかった東方からの援軍が、付近まで寄って来ていた事で、素早い合流が可能になった。

 これにより王国側兵力の合計は6万にも届くことになる。雪解けの後にモーラ公が合流したなら7万となり、帝国軍との差は無いと言っても過言ではなくなるだろう。唯一の懸念点を挙げるとするならば、王国の強みである騎兵戦力が合わせて1万5千程度と、本来この軍編成であれば2万以上いる数より、大幅に少なくなってしまっている事だ。


 エメリヒ王はこの軍の集結と共に直ぐに動こうとしていた。

 モーラ公との合流の為に王国内側を北上し、より安易な兵力の集結を図るつもりだった…が、自然がそれを許さない。

 先程述べた通り、今年の冬は中央平原全域に雪が降り積もり、特に北側が豪雪となっていた。これにより、例年であればそこまで酷くならない場所や街道でも、雪解け水によって泥濘と化していた。馬車は行軍に着いて来ることが出来ず、馬もそれを嫌って動いてくれない事もあった。勿論人間も…特に徴兵した者が多く、慣れていない者が多い今回は行軍がままならなかったのだ。


「王陛下、無理です。我々はこれ以上進むことが出来ません…」


 完全に訓練の行き届いている軍と、そうでない後方集団が切り離されて行軍を止めている時に自分が進言をした。いつもであればボウデン総団長がしていた仕事は、彼の戦死によって自分に回ってきている。


「職人や馬車は後ほど合流してもらう事にするか……」

「いえ、軍でさえまともに動けていない現状では困難です。下手したら合流できないどころか、置いて行かれた彼らの心情も悪くなります。再集合の為に地面が乾燥していた昨日の野営地に戻りましょう」

「引き返せというのか?」

「はい」

「帝国軍が王国領内で鼾をかいて寝ているのにか!?」


 エメリヒ王は自分の思い通りに動いてくれない軍隊に、心の苛つきを隠せていない。近衛軍は常備軍でくれんが行き届いているために、今までこのような場面は少なかった方なのだ。それをエメリヒ王がようやく自覚したともいえる。


「どちらにせよ、帝国軍は残雪で進軍できていない事が分かっていますし、我々と同じく泥濘と化すこの地に苦戦することは間違いないでしょう」

「そうだ!だからこそ我々の強みである騎兵を押し付けることが出来るだろう?王国騎兵で奇襲したなら、ほぼ同数の帝国騎兵は手玉にとれるだろうし、その後に動けない帝国の重装歩兵共を刈り取ってしまえば良いだけだ」


 エメリヒ王の言葉も一理あるが理想論が過ぎた。

 彼は自分で物事を進めるが、きちんと説得する材料をそろえたならば無理を通して来る暴君ではない。頭の中で浮かぶ反論の材料「どれほどの泥濘か予想が出来ない」「騎兵のみで奇襲しても泥濘が深ければ機動力の差は無くなってしまう」等を、ひとつづつ説明していく。


「なればその時間を使って、この統率の取れているとは言えない王国軍の訓練を致しましょう」


 自分が最後を締める提案をすると、黙って聞いていたエメリヒ王は渋々と言った様子で頷く。


「あぁ…分かった、分かったよ。最近ボウデンに似て来たと言われないか?」

「偶に言われます」


 ボウデン総団長がエメリヒ王にどういう態度だったかは知っている。それが古い付き合いから来る物もあるだろうが、王の一番側に立ってみるとその立場が人との接し方を変えるのかも知れないとも思える。


「……総団長」


 ようやく結論を出して引き返そうとしたところで、自分に「カーマイン公が引き返す提案をしています」と伝令が伝えて来る。


「丁度良かった、こちらもその結論を出したところだ。カーマイン公に昨日の野営地点まで下がるように伝えてくれ」


 他の諸侯に提案される前に自分からエメリヒ王に提案できてよかった。自分以外から提案されるとエメリヒ王からの諸侯の心象が悪くなりかねない。


はじめまして。都津(トツ) 稜太郎(リョウタロウ)と申します!


再訪の方々、また来てくださり感謝です!


今後とも拙著を、どうぞよろしくお願い致します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。