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8.コルトン丘陵の戦い6


 味方がその場に留まることなく帝国軍との乱戦に突入していく中、自分は丘の中腹まで登ると一度足を止めた。ここはよく戦場が俯瞰できた。


 王国軍騎兵と帝国軍騎兵の乱戦は規模を増しながら、更に激しくなっていく。後方に置き去りにした帝国軍歩兵達は、我々が居た丘の上で一度小休止を取っていた。既にカーマイン公が率いる3つの丘に布陣した歩兵達との交戦が始まっていて、その予備兵力のような形で状況を見ているのだろう。

 1000の騎兵を分けたネーフル子爵は、サルキに続いて見事に丘を登り切り、そのまま追撃する帝国騎兵に対して迎撃の体勢を整えている。


 帝国軍の本陣を奇襲できたなら一気に決着が付くのだが……

 頭の中に一度考えが過り、丘の中腹から帝国軍が陣取っていた中央の丘の様子を伺うと、そこにはまだまだ兵力が残っている状況だった。そこまで愚かなものはどこにもいないだろう。それに一番最優先で、防衛陣地化を施したのか、騎馬の突撃を止める為の柵や逆茂木がしっかりと建てられている。ここらは森が無いから持ち込んだのだろう。それはカーマイン公の本陣も同じだ。


 戦況を把握し、自分が出来る事を探す……


「フレディ!!」

「はい!ここに!!」

「50~60の別働隊を率いて自陣に向かへ。サルキが作戦に成功したのをみたら…打合せ通りにやるんだ」

「お任せを」


 正面の戦線は乱戦でマジックアローを使うような場面ではない。今自分にできるのはこれくらいだろうか…いや、普通の矢もあるじゃないか。


「アーチャーは自分に続け、暫く戦うぞ。その間の指揮はビスキュイ子爵に任せる」


 ビスキュイ子爵はカーマイン公配下の貴族だ。カーマイン公の下で騎兵部隊を率いているので、その指揮力を疑う必要は無いだろう。


 自分が直接率いるのは200程の部隊だ。馬上で弓を扱う事が出来る者をわざわざ選抜したのだ。

 一時小休止を挟めたことで、馬の息は十分回復している。丘の中腹から速歩で乱戦の谷へと下って行く。

 より大きく聞こえ始めた敵味方の声へ進んで行くと、気持ちが高揚しているのを感じた。これまでも戦い続けてきたが、弓を握る左腕にいつもより力が入っているのが分かる。

 近衛軍騎兵は戦闘から一時的に離脱し、後方で休憩に入っている。彼らは激しい戦闘で、足元には巻き上げた土が付着し、鎧や手甲、武器には血がべったりと付いている。馬は息が荒く、彼ら自身も肩で息している者が多い。


 我々騎士団のアーチャーは彼らの間を縫うように進み、戦場へと向かって行く。これが普通の諸侯であれば貴族旗を掲げて前線に向かうのだから、大歓声が上がるところだが、自分は近衛騎士団所属であるために、貴族旗は領地に置いたままだ。近衛騎士団が掲げる旗は、オロール王国旗であるオロール家の旗のみと決まっている。


 静かに近衛兵の間を通過すると、今度は次に乱戦に入ろうと待機している騎兵達の間を通る事になる。まだ谷の底には到達していないが、この軍団を抜けたところでようやく視界が開けた。

 より戦場に近くなんとか全体を見渡せるこの場所からは、今の戦況が良く確認できた。最初の激突で斃れたであろう兵士とその愛馬たちの死体を避けるように、王国と帝国の騎兵達が入り乱れている。一番最奥まで到達したか、流された王国兵は帝国の待機する騎馬列の寸前まで進んでいる。


「味方の援護をするぞ!目標は右翼側だ!!」


 状況を見るに右翼側が若干押されているように見えた。ならば一度戦いの形を整えなければならない。

 少しだけ場所を移動すると、全員が馬上で射撃体勢に入る。


「構えぇ!!……放てぇ!!」


 基本的に騎兵は風魔導士を連れていない。風魔導士が魔法を発動した地点に留まることが無いからだ。よって我々が馬上から放った矢は見事に敵に向かって直進していく。

 敵は鎖帷子などを着ているが、距離によっては貫通させることが出来るし、狙える者は露出している箇所を狙ってもいい。それでも無理なら馬自体を狙うか……基本的に馬の方にもしっかりと装備は付けられている上に、人間よりも頑丈であるために狙わない方が良いのだが、どうしよも無ければそこも選択肢に入る。それさえ難しくても、矢に狙われている状況というのは非常に相手の集中を削ぐために、味方の援護になる。


 我々の援護射撃によって徐々に右翼側の状況は我々に寄り始めた。

 帝国軍の後方隊から帝国左翼側へと向かう小部隊がある。王国側のアーチャーの登場に反応し、帝国軍も騎乗したアーチャーをこちらに向けて来たのだ。


 我々の攻撃が通るという事は敵の攻撃も通る。

 このまま王国軍右翼を押されるのは面白くない……背中にある矢筒の中から1本の矢を取り出した。ここまで出番が無かったマジックアローである。


「カンブリー!少し自分の周りに兵士を近づけないでくれ」

「”アレ”を使いますか!?」

「あぁ、出力を高めてまとめて吹き飛ばす。それなら帝国の対策も関係ない」

「分かりました!!」


 自分の周りに少しスペースが出来たのが分かった。


はじめまして。都津(トツ) 稜太郎(リョウタロウ)と申します!


再訪の方々、また来てくださり感謝です!


今後とも拙著を、どうぞよろしくお願い致します。

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