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4.コルトン丘陵の戦い2


 我々の作戦は自分が提案したものに決定した。

 久方ぶりにマジックアローに依存しない戦い方をすることになる。


 自分で提案したものなのだから、必ず成功させるための努力を惜しんではいけない。その日のうちに自分は行動を始めた。1万2千の兵力の内半数に近い5000も預けられたのだ…出来る事は多い。


 まずは兵をそこら中に散らす。

 コルトン丘陵に散らばる村落という村落全てを見つけ出す為だった。川沿いから丘陵の谷間に存在する小さな村まで、菜種油を貯蓄していそうな村をすべて見つける。これが終わったら騎馬に菜種油の袋や樽を括り付けて、埋設する場所まで持ってくるのだ。


 その間に自分を含めた50騎は、戦場となるような場所をひたすら探す。


「ヨス、良さそうな地点は見えるか?」

「まだありません…ここは着火地点が少し遠い気がします。妥協しますか?」

「他になかったらここにしよう…時間次第だ」


 新しく良さそうな場所を見つけては、同じような話をしている。どこを妥協点にするかが戦いを決める上で重要だと、エメリヒ王が良く言っていたが、戦場の選ぶことなど初めてに近い自分には、その妥協を決めるのが非常に難しい。



「ここにしよう」


 我々がコルトン丘陵に到達した翌日の昼、ヴィアネッロ侯がアイビー山地の出口で帝国軍と交戦した報告を受けた日に、ようやく戦場として適していそうな場所を見つることが出来た。

 コルトン丘陵の中央部よりも少し王国側(東側)で、王国側が布陣する場所は回りの丘よりも少し高く、視界が開けている。一方の帝国側も布陣を妥協できる程度の高さと広さがあり、その後ろにある丘が罠を仕掛けるために動く我々の行動を隠せる程度に高いが、警戒させるほどの高さも無い。又、帝国側は日当たりの関係かよく乾燥している草が多かった。今回仕掛ける炎の罠であれば、更なる効果を見込めそうだ。あとは思惑通り帝国軍が布陣してくれることを祈るだけ。


「よし、油樽の埋設を始めるぞ!」


 この1日で周りの村から大量の油樽が見つかっている報告は受けているので、それを運び込まなければならない。

 まず最初に大量の人間と土魔導士を使って丘の麓を掘り起こすところから始まる。これは中々時間がかかる作業であった。油樽を埋設できるような穴の深さはそれなりに深い。この上から土を被せて干し草などで隠蔽するとなれば、さらに要求する穴は深くなる。


 更に確実にするための策としてヴィアネッロ侯に受けた提案があった。


 王国軍が布陣する場所にも埋設するのだ。


 機動力が高く統率の取れた動きをしやすい騎兵が布陣する両翼の丘周辺に油樽を埋設する。一度王国側の騎兵が敗れてその丘を手放す振りをしたのなら、帝国軍はこれを半包囲の為の好機と見て、丘の占領の為に兵士を送って来るだろう…これを利用する。


 この深い穴を広範囲に掘るのにはどうしても時間がかかるので、この穴掘りには最低限の警戒の為に兵士を残して、全力の人数を使った。


 作業は昼夜を徹して行われた。この間にも幾度となくヴィアネッロ侯は自分達の時間を作るために帝国軍に奇襲を繰り返し、時間稼ぎに徹してくれていた。


 そこにカーマイン公率いる王国軍2万6千がようやくコルトン丘陵の入口に到着する…我々が到着して4日後のことだった。


 カーマイン公の本軍には既に我々が練った策を伝え、承認を貰っている為に話が早い。

 コルトン丘陵の中を夜を徹して進軍した本軍は、我々騎兵が布陣位置まで誘導した。進軍を終えて休む間もなく、野戦築城のような形で丘の上に陣地を作り始める。

 本軍側の土魔導士と兵士の助力を借りて、罠の方にもかなりの作業の進展が見えた。王国側の罠の敷設は本軍に任せ、自分達騎兵は帝国軍後方の罠の敷設に集中する。


 ヴィアネッロ侯からそろそろ遅延の限界が来ているという報告が来たのは、我々がようやく敵陣背面の罠の敷設を終えた日だった。コルトン丘陵に本軍が到着して2日が経過している。


「帝国軍側の罠の敷設は全て完了しました。また周辺の村の住人は全て、王国本軍の陣地に運び込んでおります」

「…分かった」


 報告に来た騎兵に頷き返し、元の仕事に戻るように促した。

 帝国軍に策を漏らさないために、菜種油を買い取った村落全ての住人とその生活物資を、油と共に本軍陣地へと運び込んでいたのだ。元々王国に反感を抱く者達を手元に抱えるのは中々不安だが、仕方がない。

 作業をしていた者達を本軍の作業へと送ると、自分を含めた少数の人数で罠の周辺を最終確認の為に動き回った。


「いや、これは……随分人の気配を感じるな」

「まずいですね」


 罠周辺は特に人が動き回っていたせいか、随分と人間が残した痕跡を感じる。


「一度ここら辺をヴィアネッロ侯に通過してもらおう…痕跡を誤魔化さなければ」


 現状自分達に誤魔化しの手としてはそれくらいだ。直前までここで実際に人馬が動くところを見せて誤魔化すしかない。


「これ以上は出来ることが無い…戻るぞ」


はじめまして。都津(トツ) 稜太郎(リョウタロウ)と申します!


再訪の方々、また来てくださり感謝です!


今後とも拙著を、どうぞよろしくお願い致します。

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