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3.王国会議2


 戦力の配分が発表された後は、戦略についての話し合いが始まった。

 全体としての目標はどうするのか、何を達成した事を以って各軍の勝利とするのか。どこを失ったことで敗北とするのか。何が重要か、どこが大変か、どれが簡単か。

 オロール王国の内乱が終結した時には経験不足の貴族ばかりであったが、今となっては幾度も戦いを潜り抜けて来た者達が増えている。指揮官となる貴族の頭数は十分で、その配下の兵士達も経験を積んでいるだろう。


 議論は活発だった。

 それぞれが自らが考える一番いい方法を忌憚なく意見する。伝統のある貴族であれば遠慮するのかも知れないが、成り上がってきた者達が多くいるこの議場は遠慮を知らない。そして、今この場で起こっている活発な議論が良い事なのは間違いなかった。


 王国会議は6日に渡って続いた。

 寝る時以外は全員が大ホールに缶詰であった。エメリヒ王が食事でさえ、その場に持ち込んで食べているのだ。その他の者達もそれに倣っている。


 大いに白熱した王国会議は7日目の昼過ぎに閉会した。

 疲れ果てた表情の皆の顔を見回した後、エメリヒ王が椅子から静かに立ち上がる。


「全ての種族を等しく彩る”色彩の神々”が、我々に加護を下さるであろう。我々は誇り高く、愛情深いオロール王国の民であり、全ての国民が栄光あるオロール王国の柱石だ。我々はベルディグリ大陸に恒久の平和を齎す色彩の神々の使者とならん。皆の努力と奮戦に期待し、オロール王国会議を終わる…これがベルディグリ大陸における最後の戦争となる事を願っている」


 エメリヒ王の演説に大きな歓声が上がり、オロール王国会議は終わった。

 諸侯はその演説の熱に走らされるが如く、各地の自軍の元へと馬を走らせた。普段であれば使う馬車も今回は誰も使わなかった。熱もあるが悠長な旅を出来るほど、帝国の戦争が遠いわけではなかったのだ。


「リデル」

「ここに」


 諸侯が退出し、寂しい状態の大ホールにはエメリヒ王と自分を含めて6人しかいない。

 オロール国王は自室以外のどんな時でも場所でも最後に入室し、最初に退室するのが慣例であるが、今回に限っては全ての諸侯に声を掛けるために最後まで残っていた。


「どこの領土が欲しい?」


 エメリヒ王は空いた椅子を眺めながら、こちらに視線を向けずに問うてくる。エメリヒ王は帝国の領土のどこが欲しいかと聞いている事は、察しの悪い自分にもわかった。


「私には領土欲はございませんので」

「そう言うな。今回もリデルには十分働いてもらうつもりだからな」


 エメリヒ王の言葉に、自分はまたもや近衛騎士らしい事が出来ない事が分かった。また王の小間使いとして、マジックアローを背負ってあちこち走り回るのであろう。だが、今回ばかりは事情が違う!


「無論、粉骨砕身させて頂きますが、マジックアローを持った優秀な部隊が居りますので、私に出番があるかどうか」


 僅かながらの抵抗だ…というのも、ついにマジックアローを使う事の出来る者が、長年の訓練で出始めたのだ。

 パウラはよくやってくれた。15覚醒の風魔導士達にひたすら魔力の扱い方を訓練し続けて、マジックアローを放つことが出来るまで鍛え上げたのだ。幾度も王都へと帰る度に悪態を吐かれたが、ついにやり遂げてくれたのだ。たった6人であるが、お陰で今回の6つの軍全てに一人づつマジックアローが放てる者がいる。それは勿論エメリヒ王率いる近衛軍にも一人いる。

 扱いは各軍団長に任命された者が機を見て使う形になるのだが、エメリヒ王配下の近衛軍にも一人いる事で、自分の出番は大幅に減る事が予想された。


「それはどうかな?リデルは今までの運用実績と私からの厚い信頼があるからな。要所で出て貰う事になるだろう」

「……お任せください」


 エメリヒ王自ら、リデル・ホワイトに厚い信頼があると仰られるのであれば、こう答えるしかない。自分としては、威力偵察は部下の近衛騎士団に任せて、近衛第一騎士団は是非ともエメリヒ王の護衛だけに集中していたい所なのだが……


「だからだ。どこの領土が欲しい」


 再度の問いに今回は少し真面目に考える為の間を置く。エメリヒ王の考えでは、此度の戦いで自分に武功を積ませて昇爵させた後、旧帝国領のどこかを任せたいのだろう。


「……北の方がいいです。出来れば樹海に近い場所で」

「ほう、樹海に近くていいのか?」

「少しの間ですが樹海の側に住んでおりましたので、少し森と雪が恋しく」

「カーマイン公が辺境伯だった時代か」

「はい……妻の生まれも樹海近くですし、自分も猟師一家の生まれですので、森が近くにあると安心いたします」

「相分かった、働きを期待しているぞ」


 エメリヒ王はそう言い残すと、椅子を立ち自室に歩き始めた。その後ろを自分を先頭に5人の騎士が続く。

 大ホールから退出する時に後ろを少し振り返る。次にこの王城の大ホールに入る時は、一体自分の立場はどうなっているのか…戦勝の宴か、引き分けの王国会議か、敗北の籠城か。まだそれは分からない。


はじめまして。都津(トツ) 稜太郎(リョウタロウ)と申します!


再訪の方々、また来てくださり感謝です!


今後とも拙著を、どうぞよろしくお願い致します。

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