2.王国会議
王国会議の為に王城の大ホールに貴族が揃った。
エメリヒ王が余裕の笑顔を浮かべながら立ち上がる。
「諸君、王国会議を始めよう」
エメリヒ王の一言から王国会議が始まった。
最初の王国会議に参加した者達の爵位は上がり、参加している貴族も増えた。それだけ王国が拡大し、戦力が増強されたという事だろう。ここに参加している顔ぶれにエドガーが居るのにも慣れた。
「さて、帝国であるが我々に対して宣戦布告と戦力の動員した。これに応えて我々もそれを迎え撃つ準備は整えたわけだ……まずは戦力配分と行こうか。モーラ公、状況説明を」
エメリヒ王の着席と入れ替わるようにモーラ公が立ち上がり、中央の床に広げられたベルディグリ大陸の大地図へと歩み寄る。その手にはステッキが握られていて、それを使って各地を指し示していく。
「まず、ムタルド教国について…奴らが軍を向かわせるのはシトロン海峡だ。ここに2万の軍勢とそれを運ぶための船を大量に用意しているという情報がある。次に諸国家連合1万の軍…ここは彼らの目的は、旧領の奪還で、それに大義名分の通り帝国軍1万の援軍を加えて2万の軍となっている」
実は既に諸国家連合と帝国の軍とは既に交戦が発生していた。
渡河を目論む敵軍に対して守備に定評のあるカタラーニ侯が、幾度となく弾き返し、または上陸させてから包囲して壊滅させたりと、多彩な方法で防衛をしている。
「続いて一番の脅威である帝国軍であるが……敵はいつも通り、大きく軍を3つに分けている。北、中央、南に各4万づつの配置だ」
皆、いつも通りだなと言った風に落ち着いて頷いているが、今回の帝国軍の規模はいつもの倍以上と言っても良い。既に知っている者が大半と言えど、動揺を隠しているようにも見えた。
「我々はこれらの敵に対処するために、海軍を含めて軍を6つに分ける」
今この場で話されている内容は、いつも通り既に大方の貴族の同意を得ている。
事前に王と派閥の筆頭となるような大貴族で話し合い、結論が出されたものを下の貴族に伝達しているのだ。
「まず海軍1万について……海軍の主任務は内海であるカナール海全域の確保と、それに注ぐレイトリバー渡河の際の支援になる。彼らの渡河を阻止し、各沿岸地域を荒らして欲しい。又、積極的に帝国海軍の撃滅を図れ、率いるのはバルグ候だ」
「お任せください」
バルグ候は海賊国家ヴァトーの元首長であり、沿岸地域を荒らすのは大の得意だと言っても良い。それに他にも指揮下にあるのは元モーヴ協商国の海軍で正規戦にも強いのだ。これ以上の適任は居ないだろう。
「ムタルド教国に対応するのは、東方公5000の兵に頼みたい…2000の兵が援軍として加わる。7000の兵でムタルド教国に大陸の地を踏ませないでくれ」
「承知致した」
東方公は真顔のまま少し頷いた。だが、周囲の者達に少し驚きの声が広がる。
各方面軍の中で一番兵士の数が少ないのだ。公爵であるにも関わらず、爵位の下位あたる侯爵よりも少ない。いくら代替わりして若いとは言え、冷遇と言っても過言ではないだろう。だが、これはエメリヒ王の目論見であった。エメリヒ王としては先代王までに付き従って来た四方大公の生き残りである東方公爵家にこれ以上の権力を持たせたくなかったのだ。
「続いて……」
そこらで起こる話し声を無視して、モーラ公が話を続ける。
「諸国家連合と帝国の連合軍2万に対してだが、引き続きカタラーニ侯に任せるが、そこにパーシアン候に5千の軍を加えて、1万3千を率いて貰う。目標は敵軍の撃滅と諸国家連合の攻略だ…海軍と連携し、達成することを願っている」
「必ずや」「奴らに後悔させて見せましょう」
カタラーニ侯が落ち着いた様子を見せ、パーシアン候は意気高揚と言った具合だ。
少し東方公の表情に視線を移すが、東方公は全く表情を変えていない。本当に何とも思っていないか、その若さの割には悔しさを噛み殺す術に長けているのだろう。
「続いて南方はカーマイン公が指揮をする、これにはヴィアネッロ侯も加わってもらう。合わせて3万の軍だ。目標はレイトリバーの西岸、帝国南方地域にある我々の橋頭保から、敵領内へと深く攻め入ること」
カーマイン公率いる軍は前回の帝国との戦争で得た、レイトリバー西岸の橋頭保から帝国を脅かすらしい。その為に攻めに強いヴィアネッロ侯を配下に加えているのだろう。もし、これが上手く行くのであれば、帝国の南北の連携を切ることが出来る。
「中央については、王陛下自ら3万の近衛軍を率いて親征なされる」
大ホールに集まった貴族から大きな歓声が上がり、それに応えるようにエメリヒ王は片手を挙げた。
「最後に北については、私が3万の兵を率いて対峙することになる。中央部で戦う王陛下の支援を行いながら、北方の防衛を行う」
旧カーマイン辺境伯領で今はベゴニア辺境伯領となっている最北の辺境は、今回も守りの為に全力であろう。幾度となく攻勢を弾かれた帝国は今回あまり注力していないらしい。その代わりに中央に近く、山脈の終点から攻勢を仕掛けてくる予想だった。
はじめまして。都津 稜太郎と申します!
再訪の方々、また来てくださり感謝です!
今後とも拙著を、どうぞよろしくお願い致します。




