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16.メイズ大公国の終焉


 エメリヒ王率いる近衛軍は最低限の守備兵をマイゼーナ城塞に残すと、メイズ大公国の中へと侵攻を始めた。既に大規模な兵力を持っていない事が分かっているために、近衛軍を5つの軍団に分けると、各城や村と街の攻略を進めて行った。

 メイズ大公の居城であるメイズ城を包囲を開始したのはその内の3つの軍で、残りの軍はエメリヒ王が率いてアイボリー城塞へと向かった。我々近衛第一騎士団は、ボウデン総団長率いるメイズ城包囲軍の内にて、半ば休憩を含めのような包囲を行っていた。

 既に冬も中頃となり年を越す寸前といった時期だ。メイズ大公国領らしく深く雪が降り、気温が下がった事で、どこの部隊も動きを止めていたのだ。


「ったく、時間だけ食わせやがる」


 ボウデン総団長が悪態を吐いているのは、王が近くにいない為か。


「春先に動き始める感じですか?」

「そうだな」


 時間は淡々と進む。

 寒さに耐え、雪に耐えながら冬を越し、ようやく昼間は暖かい時期になり、エメリヒ王と東方公のアイボリー城塞の攻略が始まった報告を受けた。これを受けて、我々近衛軍もメイズ城の攻略を始める。

 至って正攻法である攻城兵器を用いての攻略だ。彼らに最早援軍を送る勢力は無く、ただ緩やかな落城が迫っていただけだった。


 アイボリー城塞の陥落。

 この報告が我々の元に届いたのは、メイズ城が落ちた翌日であった。エメリヒ王はアイボリー城塞に籠っていたメイズ大公とその親族を全て、幼子から年寄りまで即日処刑した。大公国民にまで手を出していないところは、オロール王国とメイズ大公国の因縁を考えるのであれば、まだ優しいのかも知れない。



 エメリヒ王はメイズ城へ一度入城すると、メイズ大公国の完全併合を各地に宣言した。

 百年単位の戦争の終結は、後から見てみると兵力が勝る方が一方的に圧倒した戦いと言っても良い。メイズ大公国が滅亡した事で、オロール王国は大陸の西側で主たる敵は居なくなった。あとは、多少の領土が王国内に食い込んできているムタルド教国と、諸国家連合のみといった具合だ。


 エメリヒ王はメイズ城を出発すると、オロール王国王都であるオレンジへと真っ直ぐ帰還、全土に戦勝の布告を出して、夏の季節を丸々使ったお祝いの宴を盛大に開催すると、論功行賞と叙爵を行った。

 今回自分を含めた近衛騎士団には主に新たな領土が与えられた…それは東方公が旧メイズ大公国領に転封となったことによって空白地となった王都東側の土地だった。勿論のこと東方公以下、旧東方大公の部下達は一様に不満を示したがそれは、新たな土地と領有している土地の拡大という事実から黙殺された。

 近衛騎士団には昇爵などは無い。知り合いで昇爵したのは唯一エドガーのみで、子爵位を授けられている。



 オロール王国は大陸東側に敵が居なくなったことにより、大きな兵力の動員が可能になった。これにより、来たる帝国との最終決戦に向けての準備が始まった。


 最初に起きたのはムタルド教国が奪った土地の奪還と、ベルディグリ大陸からの追い出しだった。南方に備えていたカタラーニ侯とパーシアン候の麾下軍が東国地域からの兵士で増強され、2万という大軍を以ってムタルド教国との戦端を開いたのだ。

 ムタルド教国は大きな兵力を持った国ではない上に、旧王国であった城などはこちらの調略を受けて、枯草に火を放つかの如く、1年も経たずに次々と陥落していった。そして、侵攻を開始の翌年にはムタルド教国は50年前の国境である、海峡南部へと追い出されていった。


 ここからオロール王国は更に動きを加速させる。


 ムタルド教国を不毛な土地へと追い落としたカタラーニ侯とパーシアン候の軍2万の内、カタラーニ侯の軍1万が西方に位置する諸国家連合に矛先を向けた。

 カタラーニ侯は今はエメリヒ王の猶子との婚姻を受けて公爵となっているカーマイン公の軍と合わせて3万の連合軍とすると、諸国家連合レイトリバー東岸の各城に遅いかかかったのだ。この急襲により、レイトリバー東岸の都市国家群は次々に陥落した。レイトリバー東岸側にある諸国家連合の国家群を全て陥落させるのに二つの季節さえかからない早業だった。


 この動きには理由がある。

 

 スプルース帝国が前年に大陸西側を完全に統一したのだ。


 事ここに至って、ベルディグリ大陸の覇者を決める最終決戦がついに目の前に迫っていた。

 オロール王国全土にスプルース帝国との戦争が迫っているという空気が流れ始める。エメリヒ王始めとする国を率いる立場の者達は勿論、行商人から畑を耕す農民まで、誰も彼もが「帝国との戦争は来年か、再来年か」と議論をしている。この状況はスプルース帝国においても同じであろう。


 王国が悪い、帝国が悪いという話ではない。


 これはベルディグリ大陸に国家という概念が出来て以来、戦乱を繰り返してきた者達の宿命なのだ。


はじめまして。都津(トツ) 稜太郎(リョウタロウ)と申します!


再訪の方々、また来てくださり感謝です!


今後とも拙著を、どうぞよろしくお願い致します。


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