14.マイゼーナ城塞攻略戦11
「ロード・リデル…王陛下がお呼びです」
自分の天幕に入ってきたのは近衛第二騎士団の男だ。自分の所属している団以外の団長には、通常爵位を敬称としてつけるので、振り向かなくても分かる。
「承知した。直ぐに向かう」
何故呼び出されているかはもうわかっている。
「只今参りました」
「うむ、来たか。今回近衛軍を率いて奇襲するエドガーだ…知っているだろう?」
見慣れた顔がニヤニヤとこちらを見ている。
「知っているどころではありませんね」
「であれば話は早いな。同行して道案内して欲しい」
「承知しました」
エドガーは4000もの軍を率いて、1000の軍でも溢れそうな隘路へと向かう。それに全軍の土魔導士を搔き集めた100人だ。
「お久しぶりですね」
「そうだな…”ですね”か?」
「止めて下さいよ。部下ではなくなったと言えど、爵位はまだまだリデル伯の足元にも及びませんから」
「まぁ、なんにせよ大切なお客様は案内させてもらいますね」
「今回はリデル伯一人ですか?」
「皆には休んでおいてもらうよ、ただヨスという地図を描くのが上手い奴だけは同行させる」
「承知した。近衛軍の強さをご覧に入れましょう」
「エドガーが育て上げた兵士達の働きを見るのが楽しみだ」
エドガーの言葉の通りだった。
”近衛”軍という割には揃っていない装備を持っている彼らだが、数々の戦を重ねた近衛軍は連携の取れる練度の高い兵士達になっていた。
翌日の早朝に出発した我々は、規律を持った速さで南西へ一気に向かうとそのまま休むことなく森へと入って行った。近衛軍の存在をなるべく見えにくくさせるための方策だ。
彼らは山道に慣れていないながらも、6日程度を見ていた日程を4日目を終える時には、あと1日でマイゼーナ城塞の南西側にある城門へと到達するところまで来ていた。自分達が把握している敵の哨戒網の少し外側の場所である。
そして翌日、日の出前に出発した我々は敵の哨戒部隊を半ば無視しながら、全速力で城門へと到達した。霧と雨の中での行軍だった。
「おぉ、こいつはまたマイゼーナ城塞に似合わない貧相な城門ですね」
「だろう?攻城兵器が有ったら直ぐに抜くことが出来るんだが、この地形だからな出来ないと踏んでの作りだろう」
「その油断が命取りだという事を知らしめてやりましょう」
エドガーは4000の兵を通路のみならず城壁に向かってある程度薄く配置した。相手は哨戒兵の報告によって徐々に城壁の上の兵力を増している。これは時間との勝負であった。
「魔導士隊!前へ!!」
エドガーの号令で大盾の壁で守られた魔導士が前進を開始する。この頃には辺りに立ち込めていた霧が晴れ始めていた。
マイゼーナ城塞の予備門横にある城壁は斜面が深く沈み込み、堀も合わせて作られている事で正面波の高さを誇っている。この地形を土魔導士によって変化させ、より多くの兵士が活動しやすくすることが目的だ。
要塞を守る敵も明らかに異様な雰囲気を纏う二つの魔導士の集団に向かって、矢を必死に射かけているが、上空を守る風魔導士の防御によって有効な打撃を与えられていない。前の協商国との戦いでも我々は実際に苦戦したし、マジックアローが無ければ対策を打てないままだったであろう。
魔法を発動する魔導士の姿は見えない。だが、発動された事を示すように地面が歪み始める。今回は自分が攻められる側でもないし、攻める側でもない。案内役というのは随分と気楽なものだ。
歪み始めた地面を見た城壁上の敵の表情に驚きと恐怖が、陽の光に照らされてよく見える。敵は方々に走り、更なる援軍と魔導士を求める言葉を必死に叫んでいた。
「もう遅いな」
エドガーが呟いた瞬間に歪んでいた地面が一気にせり上がり、城壁上の敵へと迫る。そこに生えていた木々は、そのせり上がりに巻き込まれてあっという間に姿を消した。
地面は城壁の下10フィート程度の所まで迫ると動きを止める。この高さが土魔導士達がこの人数で動かす事の出来る限界なのであろう。動きが止まった地面を覗き込む敵兵は、少し安心したような表情をしているが、ここからが我々の本番だった。
「全軍!!突撃だぁ!!」
エドガーの声と共に角笛が鳴り響く。
4000の兵力のうち500が正面の城門から、1000が両翼からマイゼーナ城塞の予備門に迫った。残りの1500の兵は周囲に布陣して警戒している。
分解して持ち込んだ梯子が次々に城壁へと掛けられ、そこを大量の兵士が登り始める。特に両翼側はたった10フィート程度の城壁は、最早敵兵を防ぐ意味を成していない。城壁の上で必死の抵抗を試みる敵兵は徐々にその数を減らしていく。
城壁の攻めが始まってから半日もせずに、マイゼーナ城塞の南西城壁は我々の手に落ち、開かれた城門から4000の近衛兵が流れ込んだ。これに焦ったのはマイゼーナ城塞側だけではない。
エメリヒ王率いる本軍の方でも、予想以上の順調さにまだ城攻めが始まっていなかったのだ。予定通りの日程であれば、陽動として動くはずだった本軍もその役目は必要とされないまま終わった。
はじめまして。都津 稜太郎と申します!
再訪の方々、また来てくださり感謝です!
今後とも拙著を、どうぞよろしくお願い致します。




