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12.マイゼーナ城塞攻略戦9


 メイズ大公国領内に存在する木製砦の前面を渡って14日目。

 我々はマイゼーナ城塞の城壁が再び山の尾根に張り付き始める場所に到達した。ここまでは平和そのもので、敵兵にも魔獣にも大きな獣にも遭遇しなかった。


(ここまで静かなんだったら、もう少しちょっかい出しても良かったか?例えば木の砦に火を掛けたら大打撃だったな)


 余りに平和な時間が続くものだから、ふとこう思ってしまったのだ。


 それが全くもって良くなかった。


「団長…今……」

「あぁ」


 木の影に二人、確かに敵の姿が見えた。

 これまでの経験を踏まえると哨戒兵だ。まだまだマイゼーナ城塞の城壁までは遠い場所の筈で、ここらにいるという事は、索敵範囲を広げているとしか思えなかった。


「仕留めるぞ」


 自分はカンブリーとアントンを指差した。

 二人は静かに頷き、動き出した自分に追従する。


 静かに彼らの姿がはっきりと見える位置まで移動し、木の影からそれを観察する。服装は以前倒した哨戒兵と同じだ。メイズ大公国軍のどこかの部隊が良く使う装備なのだろう。同じ装備ということは常備兵と予想され、それなりに訓練を積んで来た者達に違いない。

 彼らは前回の哨戒兵と違い油断していなかった。時々身じろぎしてみせるが、それでも動きはほぼ無い。彼らは彼らの祖国であるメイズ大公国内に侵入した”何者”かの存在を知っているのだろう。


 弓と矢を静かに、なるべく小さくゆっくりとした動きで構えると、2人に向かって放つ。

 彼らは動かなくなった。


 ここで一つ警戒しておかなければならない点がある。

 周りに哨戒兵が配置されていないかだ。偶に警戒を濃くする時に相互監視できる位置に哨戒ポイントを作ることがあるのだ。そのために静かにそのままの姿勢で静かに周囲を伺い続ける。


 敵の動きは無さそうだ。カンブリーとアントンに静かに頷いて、前進を始める。

 彼らの死体がある哨戒ポイントまで到達した時に、もう一度周りを観察する…動きは無い。ここでようやく折り重なった二つの死体に視線を向けた。


 足で折り重なったメイズ大公国兵の体を剥がして、ひとりひとりの装備に目を向ける。

 遠くから見た通り、彼らの装備は統一されたものだ。メイズ大公国の貴族が指揮する兵士の一人だろう事が分かる。剣と鎖帷子にどこかの貴族の紋章が描かれた鎧を着用している。この場にエドガーが居たのならば、直ぐに貴族が何処の誰かを教えてくれそうなものだが、エドガーは今や軍の指揮官とも言える立場だ。仕方がないので、自分でそこに描かれた紋章の形を覚える。


「こいつらだけなんでしょうか?」

「近くには他の哨戒兵は見えないな」

「どうします?」

「少し膨らんで、城壁を避けよう…この場に哨戒兵を配置している意味が全くないという事はない筈だ」


 我々は城壁から離れてまた森の中を歩き始める。時たま木々の隙間から見える城壁を確認しながら動くと、幾つかの連携した哨戒ポイントを見つけた。その度にその連携の間を抜けるか、避けるように進んで行った。

 連携された哨戒ポイントの敵兵を倒すと、我々の存在と場所が簡単にそして早い段階で露見する。それは避けなければならなかった。察するに我々はメイズ大公国の哨戒網のど真ん中に居るのだから、余計にだ。


 敵の警戒がより強くなっていくことが分かり、マイゼーナ城塞の城壁を視認することは諦めて我々はより森の中へと入って行った。地面は平坦から登り、下りと変化していく中で、暫く下りが続いた時間があった。その後に我々の前にひとつの光景が見える。


「敵が使っている予備の補給路か」


 斜面の先に見えるのは整地された地面だった。


「みたいですね……」

「本当にあったか」


 恐らく目の前に見えているのはマイゼーナ城塞の前後の門が包囲されるか、何らかの事故によって使用できなくなった際に使われる予備の補給路だろう。確かに整地されているが地面には薄く草が生えているのが分かる。そこまで使用頻度は高くなさそうだ。


「哨戒網はこれを守る為か…少しマイゼーナ城塞とこの予備街道の様子を確認しなければいけないな」


 近衛軍が森を突破して全面包囲するというのは現実的でない。となれば今行っている攻城兵器による正面突破か、敵が予期していない場所からの奇襲が我々の選択肢となる。今、この補給路の脆弱な部分を確認することが出来れば、後者の選択が出来るだろう。それが我々近衛第一騎士団に王が偵察を命じた理由でもある。


「行くぞ」


 敵の哨戒網に引っかからないように、だが補給路を見失わないように我々は進んだ。これが非常に大変だった。マイゼーナ城塞側としては絶対にこの補給路の監視をしたい訳で、それの間を搔い潜ることになる我々はどうしても道なき道を含む悪路や、山の斜面に張り付くように移動しなければならない。それもどうしても見つかってしまいそうになる場所なんかは夜の闇に紛れて動くことになる。当然、足を軽く捻る奴は出て来るし、顔に木の枝が激しく擦れて生傷を作ることもあった。

 それでも我々は本来1日程度の道を3日かけて踏破し、マイゼーナ城塞に予備補給路が吸い込まれる場所まで到達した。18日目の事だった。


はじめまして。都津(トツ) 稜太郎(リョウタロウ)と申します!


再訪の方々、また来てくださり感謝です!


今後とも拙著を、どうぞよろしくお願い致します。


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