11.マイゼーナ城塞攻略戦8
「団長、どうします?」
我々は更に2日を掛けていくつかの山を越え、ついに山地の端と言える山の尾根に到達していた。目の前に見える光景はメイズ大公国内だ。
いくつも重なり合うように平野部に張り出している山の尾根と、その連続する山の隙間を埋めるように畑が埋め尽くしている。なんとか国を支える食料を作ろうとしているのが伺えた。
視界の範囲にはふたつの城塞が見える。ひとつは立派な領主の城であるだろう石造りの城。それとマイゼーナ城塞から続く道にある木材で出来た簡素な砦がある。恐らく物資と兵士をマイゼーナ城塞に入れる前の集積地になっている砦だ。周囲が畑の中に突然高い木製の砦がある者だからかなり目立っていた。
「うーん…ヨスが地図を描き上げるまで考えさせてくれ」
副団長であるサルキが自分に対して問うたのは、これからマイゼーナ城塞反対側の偵察もするかどうかというものだった。
現状、自分は悩んでいる。
正直なところでは偵察を継続してこれ以上の収穫を得られると思えなかった。だが、もう一方でマイゼーナ城塞の南西側を偵察することで、この戦いで非常に大事になる弱点があるのではないかという気持ちにもなる。
考えながらヨスが風景と手元の紙を見比べながら、地形を描き上げる様を見つめてみる。
流れるように見える風景全体を描き上げると、次いで細かい所まで描きこんでいく。彼が地図作りの名手と呼ばれているのは、この細かい場所に対する気づきだろう。彼が紙に描きこまなければ気に留めていなかった箇所がある。さらにその紙の裏にはある程度先の地形を予測した文言を書き加えて、気づいたところもメモとして他の紙に残している。
素人目に見ると無駄な時間や手順が一つも無いように見えた。彼は職人だ…王国の中でも貴重な才能を預かっている事に、今更ながら気が付いた。
「団長、終わりました」
ヨスの声を受けて、サルキが自分に視線を向けて来る。先程の問いの答えを求めているようだった。
「進むぞ…マイゼーナ城塞の南西側も偵察に向かう」
「一度味方陣地へ戻ってから向かいますか?」
「いや、あそこに平地側へ張り出した尾根が見えるだろ?あの場所であれば、平地に身を晒す時間も少なくなる。暫くメイズ大公国内を移動して、あの尾根からの移動を目指そう」
「戻った方が簡単なのでは?」
「一度陣地に戻ることになれば、もう一度行きたく無くなるからな。そうだろう?」
「まぁ、それは確かに」
「そして、王陛下もこの人数になった俺達に無理は絶対させないだろう…恐らく本陣待機だ。となれば、南西側を他の近衛が偵察するか、近衛軍から選ばれた者達が樹林に入ることになるな?」
「間違いなく…王陛下は全周の偵察を狙っていますから」
「そうなれば、マジックアローなどの魔獣に抵抗する手段を持たないまま、皆が森へ入る訳だ。それなりの被害が出るに違いない。俺達でさえアレだからな」
味方に犠牲を強いる事を避けたい…自分が考えたのはそれだけだった。
自分がにお人好しだとは思わないが、ここで帰陣する選択をしてしまうと自ら味方に損害を押し付けてしまう気がする。かと言って自分が犠牲になるつもりもない。勿論生き残り、元気に味方陣地まで帰るつもりだ。
我々はメイズ大公国内に向かって歩み始めた。
そして偵察に出発して11日目にマイゼーナ城塞付近の尾根から見えた場所に到達する。
「予想以上に砦が近いな」
物資を集積する木製の砦が、我々が反対の山へ渡ろうとする場所の近くにあった。目と鼻の前という訳ではないが、昼間で見張りが立っていたならば、労せずとも見つかるだろう距離だ。
「夜まで待ちましょう」
「待つしかないか……」
夜が来ると我々は影から影へと移動し、反対側の尾根に向かって森を渡った。
我々にしては珍しく不意に敵に見つかることもなく、無事に渡れたのには少し驚いた。
そこから我々は至って順調に行動を続けた。哨戒をしていた兵士を2人倒しているのにもかかわらずだ。正直なところここまで順調だと逆に不安になる。
確かに哨戒兵の死体はフレディとテリアが隠したはずだ。だが、近くで魔獣も倒しているのにも関わらず、それが見つかるのが遅すぎる。少人数で動くようになったことで進むスピードはかなり速いが、それを含めても敵の捜索隊に一度も遭遇していない上に、木製砦の警備も通常通りと言った感じであった。
この感じている不安を改めて味方に共有する事はしない。
嫌な想像を口に出してしまえば、それが起きるのが戦場というもの。自分は”それ”が起きた時に備えて考えを巡らせておくだけだ。それにこのメンツであれば、全員が可能性を考慮しているだろう。
今自分が一番に考えるべきは、如何に仕事を素早く終わらせるかだ。
ヨスは夜になるのを待つ時間を利用して、更にメイズ大公国の奥の地形まで観察して、書き留めていた。自分が今できる仕事は、彼を護衛しながらマイゼーナ城塞の弱点を探すこと。それに集中する。
はじめまして。都津 稜太郎と申します!
再訪の方々、また来てくださり感謝です!
今後とも拙著を、どうぞよろしくお願い致します。




