10.マイゼーナ城塞攻略戦7
偵察に出て6日目の昼過ぎ、我々は尾根の上に生えてい木々の影からマイゼーナ城塞を観察していた。
「トレビュシェットの砲撃を受けているのに、随分と落ち着いたものですね」
隣に並ぶサルキが城塞内を見回している。
「あぁ、騒ぎは起きていないな」
「あれくらいであれば十分に防ぐことが出来るという自信の表れでしょうか?」
「かもな」
実際トレビュシェットは攻め寄せて以来稼働し続けているが、城壁が崩れる気配は未だにない。ひと季節分の時間がかかって、やっとのこと城壁が崩れるかどうかといったところだろう。
「一番高い山の尾根にはしっかりと城壁が建てられているな」
「こちらの方角の山から攻めるのは無理ですね…我々のいるところも遠いだけです」
「一見しただけで分かるのは、見た目通り堅い城だな。少し動こう」
マイゼーナ城塞北から東方面の偵察を終えた。正直収穫と言えるものは無い…唯一分かったのは、大方の予想通り非常に良い城で、堅い城だという事だけだった。防衛だけを考える城塞であれば報告で見ない堅さだ。その城の様子を必死にヨスが書き留めている。
我々はマイゼーナ城塞から尾根で身を隠しながら北へと歩みを進めた。
いくつかの哨戒ポイントに潜む敵を見つけて、それを避けるように進む。時には哨戒している兵士とマイゼーナ城塞の間に割って入るような動き方をするときもあった。
マイゼーナ城塞の城壁が山の尾根まで迫る場所には、城塞の主がいる館の塔がある。山の斜面に張り付くように建築されたキープには、相応の威圧感があった。城塞裏側からの攻めを考える際に真っ先に考えるのは、尾根伝いにキープ近くからの攻略を目指す事だろうが、2重の城壁と尾根よりも高い防御塔がある上に、足場が全く安定しない細い尾根のみが道となっている。自分達が偵察している場所からマイゼーナ城塞までの尾根付近は、樹木が伐り倒されておりそこを歩く者は一方的な的となる。
「こいつは無理だな」
「そうですね……城壁までしっかりとありますから」
一通り偵察を終えると我々は少し城壁から遠ざかるように進み、山を下って一日を終えた。
山中の気温は寒いが我々は火を起こす事は出来ない。よって暖を取ることも暖かいスープを飲むことも出来なかった。それに痕跡を残さないように我々は今着ている服の上から1枚布を被る程度であった。背中が痛いが仕方がない。それが少人数部隊による偵察というものだ。
7日目は見張りの交代の為に起きたままだった。一度起きた後に体が冷えていると、どうも眠りにつくことが出来なかった。
我々はゆっくりとまた山を登り…そして下る。それをふたつ、みっつと繰り返すと一度足を止めた。マイゼーナ城塞の城壁が山の尾根から離れて行ったのだ。ここまでの様子を見るに、山から離れるという事はもうすぐ要塞の終わりが近い筈だ。
「補給路あったと思うか?」
「うーん……わからんなぁ」
カールは首を捻りながら返答し、横にいるサルキも同様にかぶりを振っていた。
「こちら側ではないのか?それとも我々が見逃しただけか?」
「尾根沿いにあったとか?裏口みたいなのがさ」
カールの言葉にサルキが大きく首を振る。
「尾根の上は無いと思うな…この規模の城塞に対して必要な物資量を運び入れるには、それなりの規模の人数か多くの馬車か船が要る。あの尾根は馬車も船も使えないから人だろうが、山の上だからな…大がかりな荷物を背負って登れる人間が大量に必要だろう。そりゃ無理な話だし、非効率だ」
確かに納得の話だった。
「となるとサルキは途中にあった小川だと思うか?」
「水深が浅すぎて船が使えませんからね…ないでしょう」
「こりゃ補給路なんてないんじゃないか?」
「あり得ますね。取り敢えず北東側で抜け道になりそうなのは尾根くらいです」
「王陛下が言っていた包囲をするには広すぎるな。これじゃあ近衛軍を回しても薄すぎて包囲にならん」
自分達の中で粗方の予想は着いていた。エメリヒ王からはマイゼーナ城塞全周の偵察を求められているが、その必要は無いのではないかと思う。例えメイズ大公国国内からの支援がマイゼーナ城塞に入り続けようとも、正面からトレビュシェットや投石機によって城壁を崩してしまえばいいではないか。かなりの長期間になるだろうが、それでも一番現実的な選択肢な気がした。
「団長、進みますか?」
「……あぁ、取り敢えず北東側を見ないといけないからな。それからの動きは少し考えるが先に進もう」
そして我々は日が暮れるまでにもう一つの山を越えて野営を始めた。山間部の日の入りはかなり早いが、それにしてもマイゼーナ城塞に到着した時よりかなり短くなっていた。周囲の気温も相まってより秋の近さと、冬の足音が聞こえた気がする。
はじめまして。都津 稜太郎と申します!
再訪の方々、また来てくださり感謝です!
今後とも拙著を、どうぞよろしくお願い致します。




