18.モーヴ協商国の終焉
モーヴ協商国に存在する二人の王は、それぞれの城で数百の寡兵をもって最後の抵抗を試みた。
これにそれぞれ近衛軍とガランス伯麾下の軍が対応し、激しい抵抗をうけながらも落城、王を捕縛の後に斬首となる。
その後は近衛軍・ガランス伯軍共にホリゾン城を拠点として、各地で降伏せずに抵抗を行う者達へと討伐軍を差し向けた。その途中にようやく雪解けを迎えたメイズ大公国の軍が動いたという情報を得たが、実情は寡兵でメイズ大公国に保護を求めた旧モーヴ協商国の貴族に、援軍を送り込んでいたのみであった。
メイズ大公国のメッセージとして保護した場所に攻めてくるような事があれば、全軍を向かわせる意図があったと思われるが、こちらも損耗した軍の回復に努める事が優先となり動くことは無かった。
翌年の収穫の季節までオロール王国に大きな動きは無い。ホリゾン城を拠点として一年半の時間を掛けて未だに抵抗している場所を討伐し、海賊と化したモーヴ協商国の海軍を国軍となったヴァトーの元海賊がひたすら狩り続けたくらいだ。
一方のメイズ大公国は、我々が残党にかかり切りのうちに調略を仕掛けてきており、5つの城が裏切った。これらの城は領主が今回のホリゾン平原の戦いで死亡した者達で、その家族がオロール王国に降るくらいならばとメイズ大公国に靡いた形だ。これ以上の裏切りを防ぎたいエメリヒ王は、ガランス伯とその麾下軍を、隣接するクロッカス王の居城であったクロッカス城へと向けて、元モーヴ協商国西側地域のこれ以上の離反を防ぐための監視役とした。
1年半に及ぶ残敵の掃討である程度反乱の芽を摘めたことから、エメリヒ王は完全なモーヴ協商国の併合を大陸に布告した。
そして約束通りにヴァトーの諸首長はモーヴ協商国の東半分とジェルソ辺境伯領を分割して与えられ、モーヴ協商国の西半分はジェルソ辺境伯領領主であったバルナべ・ジェルソと一部をガランス伯に侯爵の爵位と共に与えられた。無論ヴァトーの各首長にも領地の広さに似合った爵位が与えられている。
これにてモーヴ協商国との戦役で得た褒賞の配分が終わり、大陸東側世界は作物の収穫と冬へ向けてひと段落となる。戦勝の余勢を駆ってメイズ大公国に攻め入ろうと意気込む者達も居たが、これからメイズ大公国とその付近は深い雪に覆われる。手出しが出来ない状況であった。
我々がモーヴ協商国との戦いをしている間の他国の動きを少し話しておかなければならない。
南方のムタルド教国は我々オロール王国に度々侵入し、国境の変更を企んでいたがそれを守備する諸侯が撃退していた。これにより勢力図は変わっていない。
我々の最大の敵とも言える帝国は、オロール王国に一切手を出してこない代わりに、ついに獣人国家のモルドレを滅ぼした。最後まで抵抗した3つの城に籠った者達は、ひとりも生き残ることが出来なかった。
このモルドレの滅亡を以ってスプルース帝国の他国への侵攻はさらに加速した。間を置かずに遊牧民族連合体の”シャモア”と鍛冶国家の”エカルラート”に同時に攻めを始めたのだ。これが1年前の事だが我々王国がモーヴ協商国にかかりきりで、モルドレも攻め滅ぼした彼らは後顧の憂いが無く、順調に侵攻を進めている。すでに2国の3分の1程度の領土を奪い取ったという話だ。
ベルディグリ大陸の反対側で起こっている戦乱だが、この帝国の行動が我々に関係ないとは言えない。
まず、スプルース帝国が強大になるのはオロール王国として憂慮すべき事であるのは間違いないが、それ以上に非常に質が高い武器を輸出していたエルカラートは、南方のムタルド教国経由で大陸東側にも武器を流していたのだ。
これが停止した事で大陸東側の諸国…と言ってももはや王国のみだが、エルカラート産の武器に代わる武器工廠を作る必要に迫られたのだ。鍛冶国家の名前の通り、非常に質の良い武器を作っていたエルカラートは、戦場で長く生きる玄人たちが挙って使っている武器となっていた。現に近衛騎士団の各団長は自分という例外を除き、エルカラート産の武器を使っている。それに一般兵に渡す程度の出来である武器も、出来るのであればエルカラート産を買い溜めしていたくらいだ。
以上の事から鉄鉱床の少ないオロール王国は絶対にエルカラート産に及ばないと言えど、少なくとも代役として流れて来る程度の武器量が必要になった。
この武器不足を解決する方法……それは鉄鉱床をいくつか抱えるメイズ大公国にいち早く侵攻する事だった。よって、エメリヒ王は王国会議を経ずにメイズ大公国へ翌春の侵攻を発表する。
毎年どこかの国と戦争しているという、非常に負担の大きいこの現状に反対したい者はいただろうが、出来る者は居なかった。領地を預かる者であれば、膨大なエルカラート産の武器が流れて来なくなった時に、王国は大きく武力を失うことは分かり切っていたからだ。
はじめまして。都津 稜太郎と申します!
再訪の方々、また来てくださり感謝です!
今後とも拙著を、どうぞよろしくお願い致します。




