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13.ホリゾン平原の戦い5


 エメリヒ王が自分にやってもらいたい事は粗方予想が着く。伊達に長いことエメリヒ王の側で近衛騎士をやっている訳ではない。


「集団で動く土魔導士を仕留めて貰う」


 予想は当たりだ。


「大盾(タワーシールド)を持った歩兵のシールドウォールに強固に守られた土魔導士は、普通のアーチャーでは直ぐに仕留められなかったらしい」

「こいつの出番という訳ですね」


 背中の矢筒からマジックアローを一本引き抜いて見せる。

 マジックアローについた二つの綺麗な玉は活躍したそうに、篝火をゆらゆらと反射して怪しげに光っていた。


「そう言う事だ。魔導士を仕留めることが出来れば、我々も少しは余裕が出来る」


 今日、モーヴ協商国と戦った感触はあまりよくなかった。

 モーヴ協商国の陸軍兵が攻め寄せていた場所はまだいい。問題はライラック王麾下のモーヴ協商国海兵だ。彼らはかなり強い…特に接近を許した後の柵を挟んだ狭い場所での戦いが上手かった。恐らく船上で戦う海兵ならではのバランス感覚と動きだろう。敵の土魔導士が一気に堀を埋め立てて、ライラック王の海兵が襲い掛かって来たならば、苦戦は必至だ。


「承知しました」


 エメリヒ王の納得の采配である…が、それはそれとしてまた小間使いかという気持ちが無いと言ったらうそになる。またもや王の側に立っているだけの戦場にはならなそうだ。



 翌朝から別行動となった我々近衛第一騎士団は、戦線の中央で全員が騎乗した状態で待機した。

 土魔導士の魔法の発動と共に、敵兵が流れ込んでくることが予想される為に通常の編成である。馴染みのメンツに馴染みの状態…もはや緊張もしない。一緒に戦って来た信頼がある。


「いやぁ、今回の”王のお使い”は有難いですね」


 フレディがこちらに笑いかける。先程までカールなどは「また小間使いだよ!」と文句を垂れていたが、それは昨日の激戦を一日王の側で過ごすことが出来たから言えることだ。アーチャーとして一緒に戦っていた奴らは皆、待機の時間に休憩出来る事を嬉しく思っている。


「あぁ、手が休まる」

「ガランス伯はいつ来るのでしょうか」

「分からんな……ここ5日間くらい情報が入って来ていない」


 あと数日耐えたら援軍が来るとは全軍に周知されているが、それが本当か分からない。モーヴ協商国側も領内を素通りさせる事は無いだろう。強いていうのであればクロッカス王が戦下手だという点で、可能性が少しあるか。それでもクロッカス王配下が全員無能なんてことは考えられない。


「先は長いぞ、体力を節約していけ」


 自分から言えることはそれくらいだ。


 今日も朝からモーヴ協商国軍の猛攻は続いていた。

 各地に同時に襲い掛かる敵兵は土塁に取り付き大きな被害を出しているが、その突撃に自分達も無傷とはならない。風魔法の合間に直射されて撃ち抜かれる者や、敵が突き上げた剣や槍に貫かれる者がいた。

 初めて土塁の上に登り切られたのも今日の昼前だった。それでも急いで集結した歩兵達が何とか土塁の下まで敵兵を追い落としている。こういった時に騎兵が多いオロール王国軍は便利だ。厳しい場所に騎兵を派遣して押し返した後に他の場所に転進するという方法が使える。


「敵の土魔導士だ!!」


 ついに敵の土魔導士発見の報告が届いたのは、軽いパンで昼食を済ませたすぐ後だった。

 あらかじめ放っていた騎兵の一人が、こちらに叫びながら駆け込んでくる。この息の荒れ方は相当に遠くから走ってきていた。悠長にその場に留まって報告を聞く時間は無い。


「行くぞ!!近衛第一騎士団、前進!前進!!前進!!!」


 場所を聞く前に王国近衛騎士団伝統の三号令をかけて、騎兵が走り込んできた方向に進み始める。

 その様子に慌てて馬首を返した騎兵が追い付きながら、上がった息と共に報告をくれた。


「はぁ、はぁ…場所は東端です!本当に一番東端です!!」

「ご苦労休んどけ!!俺らの昼食の残りと水がある!隙に飲み食いして良いぞ!!」


 戦場の端まで向かうのにどれくらいの時間がかかるのか、その頃には土魔導士は居なくなっていそうだが、向かわない訳に行かない。それに土魔導士が来たという事は敵兵が集結して狙ってきているという事で、厳しい状況に追い込まれている事は違いない。


「カール!!」

「ここにいる!」

「来い!!」


 少し馬の脚を早めたカールが自分に追いつき左へ並ぶと「なんだ!?」と叫んだ。相変わらず近衛騎士らしからぬ熊みたいな声と見た目だ。それが自分の心を落ち着かせる。


「恐らく土魔導士を倒す事は叶わん!我々は乱戦の援軍と覚悟した方が良い!」

「了解!伝える!!」


 するすると後ろへ下がっていくカールを視界の隅に置いたまま考えた。


(これは厳しいのではないか?土魔導士を倒すのは簡単ではないぞ)


 10フィート(約3メートル)の堀を埋めるための魔法の発動時間はそれなりにかかるだろうが、魔導士が集合している場所を予測している位でないと到底間に合わない。

 むしろ我々が最初からいる場所に運よく来るか、来る場所を予測しておくしかない。特に今回のように戦線の端に来られたら絶対間に合わない。


はじめまして。都津(トツ) 稜太郎(リョウタロウ)と申します!


再訪の方々、また来てくださり感謝です!


今後とも拙著を、どうぞよろしくお願い致します。

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