11.ホリゾン平原の戦い3
ホリゾン城に籠る兵士2000、それを包囲する我々近衛軍とヴァトー連合軍が1万1000、更にそれを2重に包囲するモーヴ協商国2人の王の軍が9000と、我々はほぼ同数の戦いになっていた。
「流石はライラック王であるな」
エメリヒ王は感心していたが、我々包囲されている側はそれどころの話ではない。
いつ何時ホリゾン城の軍と2人の王の軍が仕掛けて来てもおかしくないのだ。ガランス伯の到着は最短でも15日程度かかる見込みで、ライラック王が合流した事で敵軍が戦機を逃さないと考えると、今にも戦闘が始まってもおかしくないのだ。
「戦の準備をせよ!ガランス伯到着まで耐えるぞ!!」
モーヴ協商国の本軍が動き出すまでに、我々は更に陣の増強をすることとした。これではどちらが攻めているのか分からない。
土魔導士が堀をさらに深くして、そこで生まれた土砂を土塁として利用する。柵はこれ以上増やすことが出来なかった。冬の長い期間を包囲戦していた事で、木材や馬車を解体した資材は燃料として使われていた。
「さぁ、動け動け!!決着は近いぞ!!」
エメリヒ王と共に陣内を見回ると、どこからともなく味方を激励する現場指揮官の声が聞こえる。
その声に応えるように鎧を身に着けた兵士達が右へ左へと動き回っていた。食べ物は十分に持って来ていたお陰で、彼らの血色は良い。動かなかったことによって多少の体力の衰えはあるかもしれないが、十分に戦う英気を養ったと言っても良いかもしれない。
ホリゾン城の備えに3000、内訳は右翼側を守る1000のヴァトー陸軍に、出入口がある左翼を守るエドガー指揮下の2000の近衛兵。今まで塔や防御設備、街壁に指向していたトレビュシェットや投石機、バリスタは城門へ順番に射撃しながら城内から敵が打って出て来るのを牽制している。
動きのある後方の包囲陣、モーヴ協商国本軍に対しては8000の兵が備えた。出入口がある左翼側にはエメリヒ王が率いる近衛軍5000と自分を含めた近衛騎士団。右翼側にはボウデン総団長率いる3000の軍が守る。
「お前ら!来るぞぉ!!気張れぇ!!!」
モーヴ協商国の本軍が完全に終結したのは2日後で、攻撃を仕掛けて来たのはその翌日の早朝からだった。我々は最低でもあと13日の陣地防衛をしなければならない。
柵に立てかけられた盾の隙間からエメリヒ王と共に敵の様子を伺う。
「最初は定石通り弓からか」
盾を持った歩兵に守られた弓兵が我々を間接射撃で撃ち抜こうと弓を上に向かって構えているのが見える。いよいよ始まる戦闘に周囲から荒くなった息がいくつか聞こえて来た。
ふたつ、みっつと呼吸をしている内に、敵からの一斉射撃が始まる。
それに反応した各地の風魔導士達が同時に風魔法を発動し、エメリヒ王のマントを揺らし王家の紋章をはためかせ、自分の首に巻かれた白色のストールを揺らした。
風魔法が敵の矢を地面へと叩き落す…が、この規模の戦場ではいくつか抜けるものが存在し、遠い所で敵の弓が立てかけられた盾に当たった鈍い音がした。
「応射!!よぉーい!!」
今度はこちらの射撃。
「うてぇ!!」
同時に風魔法の発動が止み、その間隙を縫ってこちらから間接射撃で放たれた矢が敵へと向かって行く…が、相手も同じく風魔導士の魔法によりこちらの弓を叩き落した。間を抜けた矢は弓兵の前に歩兵が構えたシールドウォールに防がれる。
この矢の応酬が暫く続いた。長い時間ではないが、その数に任せた重厚な射撃で、風魔法が弓を落とした地点は、矢が積み重なっていく。
「来たぞ!備えろ!!」
モーヴ協商国軍は弓兵を下げ、歩兵達の前進を始める。
シールドウォールを維持したまま我々の土塁まで来た様子を見ると、風魔導士は前面に風魔法を展開せずに、上空からの間接射撃を警戒している様だ。であるならば、自分達の出番だ。
「王陛下、ここはお任せを!」
「頼んだぞ」
エメリヒ王は土塁の上から後方へと撤退する。本来だったら自分も一緒に交代するのだが、この防御戦闘は自分が最も得意とする弓の腕の見せ所だ。近衛騎士団のアーチャーのみを土塁の上に残し、あとはエメリヒ王と共に後退とした。
堀の前まで到達した敵兵は、シールドウォールの後ろに控えさせた兵士達に堀の中へ物を投げ込ませ始める。その手には廃材や割れた陶器なんかも含まれていて、とにかく堀を埋め立てる事を優先しているといった感じだ。ここまでの手順は通常の攻城戦のような形で進んでいる。ただ、土魔導士は登場していない。土魔導士はどこかでまとめて運用して、一気に攻める機会を伺うつもりだろう。
「お前ら、埋め立てる隙を狙え!シールドウォールに隙間が空く!」
声に出しながら狙った廃材を持った敵兵を、隣にいたフレディの矢が撃ち抜く。
「やるな!」
「任せて下さいよ!いつも団長の姿見てるんですから!」
「それじゃあ、これも真似してみろ!」
自分は3つの矢を連続して3人の頭に当てる。手に持っていた彼らの廃材が足元に落ちて、シールドウォールを形成する歩兵がバランスを崩したところを、さらに矢筒から引き抜いた矢で2人を撃ち抜いた。
「いや、それは無理ですよ!」
フレディは冗談だろといった風に、敵に視線を向けながらこちらに声をかける。
雰囲気は良い。我々も随分と戦場慣れしたものだ。
はじめまして。都津 稜太郎と申します!
再訪の方々、また来てくださり感謝です!
今後とも拙著を、どうぞよろしくお願い致します。




