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3.ヴァトーへ2


 砦の中を通る為には防衛の為に細く曲がりくねった道を、衆人環視の元で進まなければならなった。

 普通の見た目の者もいれば、両腕に刺青を入れた者や顔に刺青を入れた者、王都であれば治安の悪い街区にいるような輩の見た目をした者達が沢山いる。ただ、彼らも我々に鋭い視線を向けるが、それ以上のことをするつもりは無い様子だ。逆に彼らもオロール王国の国王に斬りかかれば、この半島に住む者全員が世界の果てまで追いかけられることも分かっているだろうし、そもそも友好国であるはずなのだ…視線からはそれを感じることは出来ていないが。


 街も内包されたこの砦の中央付近で、砦を預かっている者とエメリヒ王が軽くあいさつを交わし、直ぐに反対側まで進んだ。特に何事も起きていないが、これから先の場所で起きたならばこの砦付近を突破しなければならない。頭の中に砦の構造は粗方入れたが簡単にはいかなそうだ。出来れば来た時と同じく、ゆったりと帰りたいものだ。


 ヴァトーからは、ただ”砦”と呼ばれている場所を過ぎると、右手の丘陵が落ち着き半島唯一の耕作可能地帯が両手に見え始める。半島の両端が見えるほどの平地と広がる畑を横目に見ながら、何もない街道を進むと、今度はひとつ目の長城と呼ばれる場所に到達した。


 ”長城”とは呼ばれている…が、目の前の土塁を見て長城と呼ぶ者はいないだろう。城と呼ばれるものは高い城壁に塔があり、硬い門があるといった印象だが、この長城は5フィート(約1.5メートル)程度の土塁があるだけだ。馬がこの段差を越えることは出来ないだろうが、歩兵がまとまって越えようと思えば可能な高さなのだ。

 無駄とも思えるこの低い長城にもしっかりと強みがある。街道沿いに出て来た目の前の高い石積みの城壁をもつ砦と、周辺に連携する4つの砦が侵攻を遅延させるのだ。長城をもって時間を稼ぎ、主要な街道を硬い砦で死守し、周囲の砦からの援軍で挟撃する。一度に全ての砦が包囲されているのであれば、今度は海賊たちが後方地域に上陸し、後方の地域からの動きを遮断する。そうして幾度も協商連合の侵攻をはじき返して来た。


 街道沿いの堅い砦に入ると今度は野蛮な印象よりも、規律を持った軍隊といった印象を受ける。それは装備が統一されているからなのか、比較的刺青が入っていないからなのかそれは分からない。こちらを怪しむ視線は変わらないが、今にも襲ってくるのではないかという不安は無い。

 視線を受けながら通過した砦は分厚く広い石造りの城壁を持っていて、トレビュシェットで弾を撃ち込んでも、簡単には崩れ無さそうだ。既に日が暮れかけていることから、砦の前で一泊して翌日の出発となる。


 翌日早朝に出発した我々は、遠くに見える砦と徐々に起伏が増す半島の景色を見ながら、数日かけてヴァトー半島の入口最後の関門となっている長城に到達する。この第二長城と呼ばれている場所は名前の通り長城である。

 東西に湾がありヴァトー半島の中でも狭く10マイル(16キロメートル)程度の横幅の場所に、30フィート(約9メートル)の長城が完全に建造されていた。必要な間隔に拠点となる塔が存在し、長大な城壁が連なっているのだ。例の如く街道が長城にぶつかる所には、重厚な門を持った砦が鎮座していおり、端は荒れている入り江に張り出していて、一分の隙も無い。

 この第二長城はヴァトーという国家にとって陸上側最後の砦であり、長城が完成して以来一度も突破を許していない。


 遠くから見ると地平線のように見える長城は、到達し見上げるとその頑強さが良く分かるものだった。左右を見ると本物の地平線の先まで続く背の高い城壁が見える事で、簡単にここを通ることが出来ない事が分かる。協商連合がいつまでもヴァトーを陸上から攻略できず、海軍を増強し始めるのも納得だ。


「おい、こりゃすげぇな」


 近衛騎士団の誰かが呟いた独り言が自分の耳に入ったが、納得して首を縦に振りそうになってしまう。

 エメリヒ王はこの長城を睨むような視線で見ていた。表情を見るにこの防御を持つヴァトーと敵対した場合に、陸上から攻める方法を考えているのだろう。同時に自分も長城内部から脱出する方法を考えてみるのだが…これが全く思いつかない。こんな高い壁をどうやって超えるべきなのだろうか。

 少しの不安を覚えた個人の感情を余所に、砦の門は解放され長城の内部へと近衛騎士団は入って行った。


 ここからは更に景色が一変する…より森が深く歩きづらい土地となるのだ。

 ヴァトー国内の中心部に近づくほど、街道は狭く起伏のあるものになっていく。昔の流れ者達が根城にしたのも納得の歩きづらさである。余程これまでの平地の方が、国内の中心部らしかった。

 街道の所々に木の影から見える小規模な砦は、攻め寄せる者達の障害となるだろうし、狭く、曲がりも起伏もある街道は大軍の移動に向かない。ヴァトーの民たちとすれ違う為に、列を2列にしてもギリギリなのだから、王を護衛する近衛騎士としては気を張らざるを得ない。


 そんな旅を10日ほど続けたところで、ようやく半島東岸の先端部にあるヴァトーの首長が住む場所へと到着した。

 

はじめまして。都津トツ 稜太郎リョウタロウと申します!


再訪の方々、また来てくださり感謝です!


今後とも拙著を、どうぞよろしくお願い致します。

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