表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
26/26

4.ヴァトーへ3


(こりゃまた随分と辺鄙な場所だ)


 これが自分が抱いた素直な感想だった。

 仮にも国家のトップを名乗っている首長が住む場所なのだから、最低でも長城のような硬い砦若しくは城程度が立っているものだと思っていたのだが、目の前の凪いだ入り江を見る場所に木材で出来た粗末な建物が広がっている。地面は降り始めた雪と地面の色でまだらとなり、空は冬のどんよりとした色でどこか憂鬱な雰囲気を持つ場所だった。我々の派手で綺麗に磨かれた鎧が、色彩の少ない風景で余計に目立っている。


「首長はこちらです」


 案内しているヴァトーの高官と思しき年配の男の鎧は、革の鎧に鉄の鋲を打った簡素なもので、他の兵士も同じようなものを装備しているが、デザインは全員バラバラで統一感が無い。確かに我々はヴァトーを国として認めているが、周囲を見渡している限り確かに海賊国家と呼ばれるのも分かる気がする。


 集落の中央部にある集会場で、首長に会う事をを許されたのはエメリヒ王に自分とボウデン総団長だった。木材で建てられた大きな集会場の中央には焚火があり、その奥に動物の毛皮を敷いた玉座が同じ高さにある。後ろには首長が戦場に立つときに使うものであろう装備が飾られていた。

 その玉座に座るのがヴァトーの首長であるヴィトセルク・バルグであろう。穏やかな壮年の男、恐らく40代前半といったところだろうか、銀髪に近い金髪で青い瞳に目元の皺と鼻っ面の傷に編んだ髭に王の風格がある。毛皮をマントとして被り、手元に置かれた剣には簡素だが鞘には歴戦の傷が刻まれていた。


 規模は違えど国の元首同士の挨拶で、立ち上がってお互いの挨拶が交わされる。訪問者側である我々から始まった挨拶は、自己紹介は正しくも長ったらしいオロール王国国王の肩書と、「ヴァトーの首長であるヴィトセルク・バルグである」の対比は、国力の違いに感じざるを得ない。

 自分達とヴァトー側の護衛は出入口付近、玉座のはすむかいに座ったエメリヒ王とバルグ首長の声が辛うじて聞こえる場所に立っている。薄暗い集会場で二人の表情は焚火に照らされ、どこか剣呑な印象を受けた。


「バルグ首長、お会いいただき感謝いたします」


 エメリヒ王はゆったりとした口調に、表情を崩して笑顔となる。


「いえ…このような田舎、わざわざオロール王国という大国の王に来ていただくような場所ではないのですがね」


 一方のバルグ首長は表情を崩さない。謙遜した言葉のように聞こえるが、余りに直截に何の用だと言っていた。表情からもそれは読み取れるほど固い。


「実は一つ、提案がありましてな」


 手早く用件を済ませろといった雰囲気を感じ取り、真剣な表情に戻ったエメリヒ王は直ぐに本題に取り掛かる。


「ほう、新たに我が国に支援でも?」

「いえ、ヴァトーには我々と共に歩んでもらいたい」

「……ほう。我々は既に共に歩んでいるのでは?」


 バルグ首長がエメリヒ王に向けた目は、言いたい事を明らかに察している様子が見える。自分達の隣に立つヴァトー側の護衛は表情は変えていないが、困惑している様子が目から伝わってきた。

 これからエメリヒ王が話す内容は、いつバルグ首長の剣が抜かれてもおかしくない内容だ。いざとなれば、この隣に立つ二人のヴァトーの護衛をどうやって倒そうかと、彼らの会話を聞きながら考えを巡らせる。


「今以上にもっと……そして力を貸してもらいたい。我々にはヴァトーの方々に満足していただけるものを用意する意思がある」

「……それは、我々にどうしろと言っているのだ?」


 エメリヒ王はバルグ首長の口から下るという選択肢を提示させたいのだろうが、バルグ首長はその言葉を絶対に言うつもりが無い。それを直ぐに察したエメリヒ王は、自らの口から言う事を躊躇わない。


「ヴァトーには、オロール王国となって貰いたい」


 エメリヒ王の言葉に隣に立つヴァトーの護衛が体を固めたのが分かる。自分もいつでも剣を抜けるように心の準備をした。


「……つまり、このヴァトーの首長である私に、ヴァトーを捨てよと…ヴァトーはオロール王国となると言っている訳だな」


 ゆっくりと瞬きをしたバルグ首長は、先程と同じ声色で問い直す。


「そうだ。聞き心地のいい言葉で飾るつもりは無い、その通りである」


 エメリヒ王は静かにバルグ首長を見つめている。


「ふふっ、大国の王が直接乗り込んで降伏勧告か」

「これは誠意だ。我々はヴァトーと共に歩みたい…今いる各部族の首長たちには王国貴族の位と、望むのであれば新たな土地を、海軍は王国海軍となり陸軍は共に肩を並べて戦う。全てのヴァトーの民には食料と王国で罪を犯した者には恩赦を」

「……」

「決してこの土地から出て行けと言うつもりは無い。軍を出す代わりに厳しい冬に食料で困る事のない生活になる」

「……我々に王国の為に血を流せと?」

「違う、共に国の為に血を流して欲しいのだ」

「話はそれだけか?」


 ヴァトーの護衛達がいつでも動けるように身構えたのが分かった。


「いや、まだある……我々はこの会談を終えた後にそのまま協商国を攻略するつもりだ。そこに海軍を、出来れば陸軍も……共に戦う第一歩として」


 ヴァトーにとってモーヴ協商国は幾度も、海の上ではここ最近も戦争を続けている仇敵である。

 少しバルグ首長の眉が動いた気がした。


はじめまして。都津トツ 稜太郎リョウタロウと申します!


再訪の方々、また来てくださり感謝です!


今後とも拙著を、どうぞよろしくお願い致します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
追いついてしまった 転生アーチャー見つけてここまてわ一気読みしちゃいました! 派手さはないけどめっちゃ面白いです!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ