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14.ミデュテラトの戦い6


 落ち着いた土埃の先に見えたのは……目も覆いたくなるような光景だ。


 赤く染まった大地に、人間だったものと思しき塊と、ゆっくりと蠢く負傷した馬と兵士。この状況を見て何が起きたのかと、右往左往しながら混乱するメイズ大公国の騎兵達。

 先程までそこに居たメイズ大公国の騎兵の、隊形中央部が完全に粉々になっていた。恐らく敵兵の半数近く…行動不能になっている者も合わせると3分の2ほどだろう。


「来るぞ!備えろ!!」


 ぼうっと目の前の光景を眺めていた自分を、もう一度現実に引き戻すカールの声。

 どうやらこの惨状の中でも戦意を失っていない10近くの騎兵がこちらに向かって来ていた。


「リデル!そこで待ってろ!!フレディ!カンブリ―護衛に付け!!俺達が足を止めるから援護しろ!」


 カールの指示に反応したフレディとカンブリーが、馬ごと窪みの中に滑り降りて来て弓を構えた。

 向かってくる騎兵に向かって駆け出したカールとその弟子のライアン、セッターやテリアを始めとする昔馴染みの後ろ姿を目で追って行くと、ようやく自分の頭の中にかかっていたもやのようなものが晴れ始める。


 膝を付いた状態から立ち上がり窪みから頭を出して周囲を見回す。

 まだメイズ大公国の騎兵の大半は恐慌状態だが、味方の近衛騎士団は後方で転回を始めたばかりで到達まで時間がかかる。歩兵同士の戦いはここからだと状況が良く分からないが、未だに戦闘が続いているという事は崩れていない。


「フレディ、カンブリー、俺の言ったやつを狙え!」


 既に足止めの戦闘を始めたカール達を援護するために、中身が散乱して残りが少なくなった矢筒から矢を取り出して、狙い、放ち続けた。そして転回を終えた近衛騎士団が一団となって右側を通過すると、混乱するメイズ大公国の騎兵に突入していく。


 もはやメイズ大公国の騎兵達には十分な兵力も十全な指揮も残ってなかった。彼らはあっという間に狩り尽くされ、その場に斃れるか、目の前にあるミデュテラト城を無視して必死に自らの故郷である北の山奥へと走っていく。


 騎兵を失ったスマルト共和国軍との戦いの趨勢は決した。


 近衛騎士団が交戦する歩兵の側面、背面、側面と一撃を加えて離脱することを繰り返す。

 いくら結束した部隊でも、常に背中を狙われる状況となった地面を走る歩兵達は、後ろから崩れていくのだ。バラバラと走り出したスマルト共和国の歩兵達は思い思いの方向に走り出し、最後には前線のパイク兵などの練度の高い兵が残される。更にそこに近衛騎士団が突入することで、完全に総崩れとなった。



「ご苦労であった、ホワイト伯よ」


 野戦の決着が付き、ミデュテラト城の西半分を完全に包囲した初日の夜に、軍議の天幕でエメリヒ王が最初に言葉を発した。その言葉に自分は定位置のエメリヒ王の横で、一度礼をする。


「今日の戦勝は間違いなくホワイト伯のお陰と言ってもいい」


 今回の野戦の犠牲はぶつかった兵力の規模にしては少ない。

 歩兵は137名が亡くなり200近くの重傷者と500以上の軽傷者が出た。近衛騎士団も10人程の死者が出た上に、傷を負っていない者の方が少ないが、エメリヒ王に刃が届くことは無かった。

 これは自分が放ったマジックアローの威力によって、騎兵同士の戦いが短い時間で決着が付いたことによる物ではあるが、それを口に出して驕るほど自分は愚かではない。


「過分なお言葉にございます。全ては陛下の指揮とここに集まる諸侯の奮戦によるものであります」

「ふむ。謙遜するのは良いが、まだまだ働いてもらうぞ」


 そう、驕る暇もなく更にもうひと仕事だ。

 元々城門の破壊は自分のマジックアローで行う予定で、攻城兵器の類は持ち込んでいない。なので、自分の魔力が回復し次第、攻城戦となる。


「いつ行けるのだ?」

「明日の昼には」


 魔力は全部使いきった。本来丸一日休まなければ回復しないが、城門を突破する程度であれば半日でも十分だろう。ミデュテラト城の城門は我々の王都オレンジの鉄門と比べると、木製の脆い構造で、それを見込んだ発言だ。


「ほう、早いな…では、明日の昼から攻城戦を始めるとしよう」



 エメリヒ王の言葉通りに翌日、昼から始まったミデュテラト城攻めは今まで経験した中で最も簡単なものだった。

 兵数が足りず散発的な反撃しかないミデュテラト城へ、各城門と全周城壁から攻める素振りを見せて兵力を分散させると、近衛騎士団の護衛の下で自分が城壁に近づきマジックアローで破壊する。破壊された城門から城内へ500の近衛騎士団が雪崩込み、内から城門を開け放ち、議事堂に籠ったスパーダ議長を捕らえた。

 スパーダ議長の拘束が知らされた城内の兵は降伏し、日暮れの前にミデュテラト城全域の掌握が終わった。あまりにあっけない戦に、昂る兵士もおらず軍紀も守られたままといったいいこと尽くしだ。


 こうしてエメリヒ王初の親征であるスマルト共和国攻略・ミデュテラト戦いは呆気なく幕を閉じる事となった。


はじめまして。都津トツ 稜太郎リョウタロウと申します!


再訪の方々、また来てくださり感謝です!


今後とも拙著を、どうぞよろしくお願い致します。

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