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11.ミデュテラトの戦い3


 手元にあるものは使えるものだ。

 確かに城門の突破の為にマジックアローに使う魔力は残したいが、それ以前に正面切ってスマルト共和国・メイズ大公国連合軍に勝ってしまえば良い。そうしたなら翌日からゆっくりと城攻めも出来る。


「敵騎兵を一気に削り切りましょう」

「ふむ、確かにそれはいい案だ」


 エメリヒ王は2度、3度と頷き、更に議論を深めていく。


「であるなら、近衛騎士団で誘い出すか?」

「えぇ、相手もこちらの切り札がこの騎兵であることは察しているでしょう。相手もこちらの騎兵の動きに合わせて来るでしょう」

「本気で勝とうとする気概を見せねばならないな」

「はい、のちに後退し自分の目の前に誘い出して頂けたなら、一網打尽に」

「よし、詳細を詰めるぞ」


 我々には時間が残されていない。

 目の前には既に布陣を終えたスマルト共和国とメイズ大公国の連合軍が待ち構えているのだ。一方のこちらは、村で側面を守られていると言えど、十分な陣形は組めていない。その陣形さえ決まっていなかったからだ。



 続々と歩兵が村の外側を通り、正面に連合軍に向けて布陣を始めた。通った歩兵の中には自分の貴族旗が見える。エドガー率いるリデル・ホワイト領の歩兵達だった。

 近衛軍は普通の横陣を引いて、正面からのぶつかり合いを匂わせている。我々近衛は最後尾で突撃陣形を保ったまま王の周囲を固めていた。今回の名誉ある近衛騎士団の指揮は、なんと近衛第一騎士団副団長のサルキだ。同じ副団長のウラシヌもいるが先任のサルキが優先された結果である。これが、オロール王国史上初めて、いや、この大陸史上初めて獣人国家以外で近衛騎士団の指揮が獣人に渡った瞬間であろう。これも近衛第2~10の各騎士団長が、近衛軍の指揮に赴いている結果でもあった。

 年上であるが、部下でもあるサルキが指揮を執っているのを見ると、少し可笑しくもあり、誇らしい気持ちが湧いて来る。カーマイン辺境伯領時代に見た、どちらかと言えば荒々しい印象の彼が煌びやかな鎧に身を包んで、近衛を指揮しているのだ。もしかしたら付き合いの長い奴らからは、自分がこういった気持ちで見られているのだろうか。


「近衛騎士だぁーーん、前進!前進!前進!」


 エメリヒ王が剣を前に向けると同時に、サルキが初めて見る緊張した面持ちで近衛騎士団伝統の三号令を発した。

 サルキの低く、唸るような声と共に近衛軍の背面にあたる布陣場所へ前進が始まる。

 規律の取れた騎士達と制御された馬たちが、歩兵が通った後で土の匂いを漂わせる戦場へと馬を進める。


 我々が横陣の最後方に付いたところで全軍の準備が完了した。

 あとは王の命令を待つのみ…となったところで、エメリヒ王がいきなり飛び出し、追いかけようとした我々を制して、味方の前へと一直線に駆けて行く。


 檄を飛ばしに出たのだ。


 我々近衛騎士団もそれに付いて行くほど野暮ではないが……かなり胃が痛くなる。

 重要な戦の前に王が檄を飛ばすなど、物語の中で聞く分には気持ちが昂るが、それが護衛する立場であったなら全く真逆であることに気づいた。


 陣形の前面に出たエメリヒ王は、横陣の前で声を張り上げて檄を飛ばし始める。

 もちろん陣の後ろにいる近衛は聞こえないが、隣にいる獣人のカンブリーなどは、耳がエメリヒ王を追いかけながら口角が少し上がっていた。そんなに奮い立つ話なのかと自分も聞きたくなってしまう。


 エメリヒ王は前面を往復すると中央へ戻り、剣を高々と掲げ……振り下ろした。


 地響きとも取れるほどのウォークライと共に近衛軍が一気に前進を始める。

 いよいよスマルト共和国との決戦が始まるのだ。


「戻った」


 大声を張り上げていたからか、まだ少し顔を紅潮させているエメリヒ王が我々のもとへ帰ってきた。


「陛下、檄を飛ばされるのであれば、流石に事前に伝えて頂きたい」

「悪かったな、リデル!だが、直前だよ。やらなければと思ったのは」


 そう言って、エメリヒ王は鷹揚に笑う。


 戦場は近衛軍とスマルト共和国が正面からぶつかり合う形で定石どおりに進んで行く。

 遠距離での弓の撃ち合い、風魔導士による妨害に歩兵の前進。

 スマルト共和国が正面に構えるパイク兵の攻略法は、側背面を機動力を利用し突くか、歩兵がその懐に入り込むことだ。その為に近衛軍は全力でパイク兵のファランクスに突撃していった。


 近衛軍の練度は明らかに、スマルト共和国よりも高い。

 最近徴兵されたばかりだと言っても、我々は周辺諸国と長いこと争い続けているのだ。戦場を経験したものも多い。だが、スマルト共和国は王国以外と多少の小競り合いがあっても、自分の記憶のうちに戦争した記憶ない。その経験の差が出ているのだろう…数で勝るスマルト共和国と近衛軍の戦闘は拮抗していた。そしてお互いの騎兵はまだ動かない。


「よし、動くぞ!」


 エメリヒ王が近衛騎士団の出撃を命じたのは、朝に始まった戦闘が昼に差し掛かる頃だった。


「リデル!任せたぞ」

「お任せを!!!」


 エメリヒ王と共にサルキ率いる近衛騎士団は、より地形が良い右翼側へと駆け出した。


はじめまして。都津トツ 稜太郎リョウタロウと申します!


再訪の方々、また来てくださり感謝です!


今後とも拙著を、どうぞよろしくお願い致します。

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