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10.ミデュテラトの戦い2


「そして、我々は夜中を通しての行軍で疲れていて、相手は準備万端に待っていたと」

「左様にございます」

「ハハハッ!流石に不利だな!!」


 エメリヒ王はこの不利な状況を笑い飛ばした。

 ここまで来て深刻な顔をされると、それはそれでどう反応したらよいものかと悩むので、逆に笑い飛ばしてくれるくらいで良かった。

 裏切りを促した北西の議員たちが動かない事は既に伝令が届いている。その上敵の主力を同時侵攻で引き付ける作戦は失敗している。恐らく半数程度は惹き付けられているが、ここにメイズ大公国の旗があるという事は、総兵力は2500は固い……既に数的不利だ。


「敵軍の構成は?」

「目算では共和国パイク兵が約500、歩兵が1000、弓兵500程にメイズ大公国の騎兵が500程度かと」


 布陣は前面にパイク兵が陣取り、弓兵が中央、両脇を歩兵が固める形だ。大公国の騎兵は右翼に布陣している。


「流石に大公国もこの短期間では騎兵500の準備で限界だったか」

「それか他は北部の平原で展開しているやも」

「リデル、議長はいると思うか?」


 少し真面目な顔を取り戻したエメリヒ王が更に問うた。


「居るでしょう……スパーダ議長の地盤は盤石ではありません、もっともスパーダ議長が選出されたのはこの首都でありますが、ここで首都を離れる事になれば地元を見捨てた者という汚名を自ら被りに行く事になります」

「そうなれば、今日和見を決めている連中は間違いなくこちら側に付いてくれるのだがな」

「落城となれば逃げるやもですが、そうでなければ城に居座るでしょう」

「議長は耐えるだけで良いからな」


 今回の戦いにおいて時間は共和国の味方だった。

 奇襲を企図して中央に進出してきた大して備えの無い軍隊を、そこに釘付けにしておくだけで勝手に干上がる。国境から少し入った場所で戦闘を行う近衛軍の来援は期待できず、こちらも長期戦の準備なんて勿論ないのだ。

 ただ今の状況を見ただけで誰の目からでも不利な状況であるという事が分かる。

 極めつけは我々の軍の構成である。我々オロール王国は平地の戦いで無類の強さを誇るが、それは十分な数と練度を誇る騎兵を用意できていたからで、今回のように船で来るために近衛騎士団の500のみしか馬を用意できていないとなると話が違ってくる。エメリヒ王と近衛軍は追い詰められていた。


「リデル、君の目には敵城門はどう思う?」


 元々スマルト共和国は首都であるミデュテラトに防御機能を求めていないといった感じだ。ただの自然に発展した街を街壁で囲んだといった風情が強く、木と鉄で出来た城門は、正直我らが王都オレンジほどの頑丈さを覚えない。

 エメリヒ王はある程度調べたうえで、この兵力で決着を付けられると考えたくらいだから、当然予想はしているだろう。

 このことを正直に伝えるとエメリヒ王は顎に手を当てた。


「そうだな……」


 口の周りの髭を撫でると、もう一度自分に視線を向けた。


「リデル、マジックアローは?」


 出る結論はやはりマジックアローの威力によって城門の正面突破だ。これは親征の計画段階から変わっていない。マジックアローであれば城門を破壊することなど容易い。それを見込んでの攻城兵器の持ち込みなしだ。


「15本持ってきております」

「また頼る事になるな」

「お任せください……このために私を近衛騎士団に登用したのではないですか?」



 エメリヒ王の作戦は事ここに至って単純だった。



 マジックアローを用いて城門を突破し、近衛騎士団と共にミデュテラト城内に突入、スパーダ議長を討ち取ってしまうこと。


 もし逃げた場合は徹底的に追いかけて必ず仕留めること。


 そのためにミデュテラト城門への血路を開くこと。



「メイズ大公国の騎兵が厄介だな」


 エメリヒ王が呟いた。

 ここは平原で相手がパイク兵と歩兵であれば、数的不利な近衛軍でも騎兵を使う事で、十分以上に戦うことが出来るが、相手が同数の騎兵を抱えているとなると、また話が違ってくる。どちらかの騎兵が擦り減り切るまで、騎兵の戦いは終わらないだろう。

 そうなれば歩兵の数で劣る近衛軍はただ正面から押されるだけで、厳しい戦いになる事は想像に難くない。


「どうにか騎馬の動きを欺瞞できないものか」

「隙を突いて城内に突入するという事でしょうか?」

「あぁ、周辺は開けていて畑ばかりだから土埃も立たないから、姿を隠す事も出来ん」


 味方の事を考えないのであれば、騎兵を歩兵に押し付けて絡め捕ってしまうのが一番いいのだが……ここに自分の領地であるリデル・ホワイト領から連れて来た歩兵もいる上にその指揮官はエドガーだ。彼らを犠牲にするような作戦は絶対に避けたい。

 少し視線を巡らせるが、ここにはいつもの戦場にいるような諸侯はいない。エメリヒ王と自分と少数の口を挟まない護衛がいるのみだった。

 少し時間を置いて頭の中にひとつの考えが着地した。


「避けない方が良いのでは?」

「メイズ大公国の騎兵と正面切って戦うか?」

「正確にはこれを使って」


 自分の矢筒からマジックアローを取り出して見せた。


はじめまして。都津トツ 稜太郎リョウタロウと申します!


再訪の方々、また来てくださり感謝です!


今後とも拙著を、どうぞよろしくお願い致します。

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