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4.王国会議2


「今回のスマルト共和国侵攻の要点は、現在全権力を握っている議長の扱いだ。名前は何だったか…ピエトロ・スパーダ議長か、彼を倒すか捕縛することが一枚岩と言えないスマルト共和国攻略の鍵となる」


 オロール王国と同じようにスマルト共和国は、権力が移り変わったばかりの不安定な時期だ。権力者の座に座った期間が短ければ短いほど、その求心力は低く、勝利後の抵抗は少ないだろう。

 スマルト”共和国”を名乗ってはいるが、結局議員などの権力者の座は地方の有力者である地主や大商人などの者に集中しているからこそ、民衆の抵抗も激しくない事が予想される。


「今回は速攻だ」

「如何してでしょうか?スマルト共和国の西部は、まともに行軍できる場所が有りません」


 モーラ公が他の諸侯の気持ちを代弁するように言葉を発する。この国にはエメリヒ王に対して、正面から物を言えるのは、モーラ公とカーマイン侯のみだろうから、彼らが他の諸侯とエメリヒ王との間を取り持つ必要がある。


「水軍だ。ヴァストリバーを遡上し、一挙にスマルト共和国の首都南まで進軍、展開し攻略する」


 王都の横を流れるヴァストリバー(広大な川)は、このベルディグリ大陸の東半分にとって重要な河川である。メイズ大公国から南へと流れが始まり、スマルト共和国の中央部で西に向きを変えると、オロール王国に流れ込み、少し北西へと向きを変えながらレイトリバーに流れ込む。

 関係が悪化するまでは、王国とスマルト共和国との水運に利用されるほどの川幅と水深、緩やかな流れがあった。ヴァストリバーは湿地帯に入るまで流れが少し急であるから、そこからは何かしらのテコ入れが必要であるが、それでも王国から湿地帯を抜けるまでの太い道であることには違いない。

 更にヴァストリバーが西へ流れを変えるスマルト共和国中央部から、北東へ半日程度でスマルト共和国首都のヴェニーニャまで到達することが出来る。まさに進軍路としてお誂え向きであると言わざるを得ない。


「……水軍ですか」

「そうだ……陽動として4000の近衛軍を各方面から国境地帯へ同時に進軍させる。共和国の動きが鈍いのであれば、これをもって主攻としても良いがそう簡単にはいかないだろう。この目的は国境線…主にヴァストリバー付近から共和国兵を剥がす事を目的とする。十分に各方面に戦力を誘引できたならば主攻である2000がヴァストリバーを遡上、共和国首都を急襲し陥落させることが目標だ」

「成程……冬季であれば、強い西からの風がありますし、川の遡上は比較的簡単と」

「あぁ、よって諸侯には帆船の提供をしてもらいたい。今から建造していたのでは間に合わないのでな」


 レイトリバー沿いとヴァストリバー沿いに領地を持つ諸侯は、交易や水運維持の為にある程度の数の帆船を持っていた。それを集め、足りない分は商人から船を買い上げる事で、2000の軍を運ぶ船を確保しようとしていた。

 今回の王国会議において、侵攻の為の船を諸侯に拠出してもらう事が一番重要であった。

 そして船を持っている諸侯は少し顔を見合わせていた。船を持つ諸侯の中で有力諸侯はカーマイン侯しかおらず、カーマイン侯が「承知いたしました」という言葉を発したのみで、彼らに拒否権は無くなる。

 元々エメリヒ王体制になり貴族になる事が出来た者や、見逃されることで家名を維持した者達ばかりなのだ。誰も「いや、今我らの帆船は交易に出払っておりまして」など都合のいい事と言えるわけがない。エメリヒ王の面前で言ったものなら、次の王国会議に出席できなくなるかもしれないのだ。


「それなりの数ではなく、大船団が必要になりますな」

「あぁ、モーラ公の船も借りたいのだがな」

「辺境伯領から持ってくることになるので、大陸を半周することになりますが……初冬には間に合いましょう」

「船団はヴァストリバー沿いに広く分散させる。侵攻開始までこちらの船団の存在を知られる訳にはいかない」


 モーラ公は既に反対をやめた様子で頷いていた。

 結局、モーラ公は最初からこの侵攻計画を聞かされていた筈なので、これまでの反対の立場は諸侯の前でのパフォーマンスを行ったという感じだろうか。それなりの負担となる貴族達への配慮といったところだろう。戦争には金が掛かる。


「さぁ、あとは詳細を詰めて行こう」


 王国会議は佳境へと入る。

 各諸侯の普段の担当戦線と兵数、その指揮官の割り振りが行われる。ある程度の根回しがあるに決まっているので、特に揉めることも無く淡々と決まって行った。

 近衛軍の指揮官は本来であればエメリヒ王であるが、今回は主攻に入るというので各地に分散した軍の指揮は近衛騎士団から出さなければならなかった。結果、近衛騎士団の全体の団長であるボウデン総団長が、近衛軍の指揮官として各軍の指揮を第二から第十までの近衛騎士団長が担当する事になった。我々名誉ある近衛第一騎士団は、王と共に主攻に配置され、近衛騎士団総勢500名を指揮することになる。


 あとは資金の話だったりと、朝から始まった王国会議は日を跨ぎ翌日に再開、3日目の深夜に閉会した。この王国会議の閉会にてオロール王国は、本格的に大陸の統一へ動き出す事となる。


はじめまして。都津トツ 稜太郎リョウタロウと申します!


再訪の方々、また来てくださり感謝です!


今後とも拙著を、どうぞよろしくお願い致します。

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