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1.新たなる領地


 自分が与えられたホワイト領は、ガリタニア湖はホワイト湖と改名され、領都となる場所に新たに建てられた居城もホワイト城、そこに広がる街もホワイトと呼ばれるようになって久しい。


 ホワイト湖の水運と街道の丁度中間に新たに建てられたホワイト城は、叙勲の年から6年の時を経て完成した、眺めのいい城だった。そこには自分の一族である”ホワイト家”が住んでいる。


「東方公は無事に帝国残党の掃討を終えて、帰国したそうです」


 対帝国戦争の祝勝会を終えてから7年の時が経っていた。報告したフレディも壮年の域だ。


「随分と長い時間がかかったな……そんな無能には見えなかったんだが」

「人は分かりませんな」

「あぁ、明日はエドガーが来る。歓迎の準備は良いか?」

「恙なく」

「良かった」


 旧帝国領の北側はエメリヒ王が約束した通り自分が差配しやすいように、自分の部下からの貴族を固めてくれていた。カール”男爵”やサルキ”子爵”、エドガー”伯爵”、近衛騎士団以前からの知り合いだ。彼らが年に一度方針の為の会議に出席するために、明朝ホワイト領に来る予定だった。

 自分に付いてきたフレディやパウラはそのままホワイト領に住み着いて、ホワイト領の軍を率いているので、古なじみの宴会をするにも呼び出す必要は無い。


「それにしても、良い場所に執務室を作りましたね」


 フレディは自分の後ろに見えるホワイト湖と、それに反射する夕日を見た。


「だろ?」

「羨ましい限りです」

「どうした?待遇に何か不満があったか?」

「いえ、ホワイト騎士団の団長職で新しく出来た爵位の準男爵にまでして貰えましたから。ただ羨ましいなと」

「フレディ、さては家を建てたい場所があるな?」

「分かりました??」

「言え、手配しておく」


 フレディはニヤリと笑ってそれはそれは良い土地を要求して、満足したように部屋を出て行った。残されたのは、古馴染が来る前に片づけなければいけない書類だけだ。



「あなた?」

「ん?まだ起きてたのか」

「いつもの話の時間でしょ?」

「遅くなったから来ないかと」


 遅くまで書類の処理をしていた自分の執務室にルーシーが入ってきた。

 ルーシーは、自分がエメリヒ王と共に暫く大陸を飛び回っている間、良く家を守ってくれた。義父母は既に亡く、自分が留守の際は家の一切をパウラと共に取り仕切っている。自分は子供たちの成長を全く見守れていない……それでも立派な貴族の子、長男のラフナ―は跡取りとして、クレアは淑女として育っていた。ひとえにルーシーを含めた家族のお陰であろう。


「やっと、時間をゆっくり過ごす事が出来る様になったじゃない?」

「そうだな、少し話そうか」


 自分が戦場でどんな体験をしたか、ルーシーが家を守っている間に起きた事や、子供たちの成長について、自分がどれだけマジックアローの存在に助けられたか…自分とルーシーは一人の時間に起きた事を、二人で体験できたと錯覚するために毎日夜遅くまで話をしていた。


 ここ最近のホワイト領で起きた事件で一番大きかったのは、水運の荷役で大きな組織が喧嘩したことくらいで、今までのように国と国がぶつかり合い、戦場に数多の命が散る事は無い。ルーシーと自分の心は、人生で初めて知ることになった至って平穏な時間を大切にしている。


「…それでね!ラフナ―ったらお母さんが良いって泣きついて」

「ハハハッ、あいつが居たら顔を赤くしてるな」


 ルーシーの話は2人の成長を見守っていたような体験をさせてくれた。毎日のこの時間が一番自分の癒しである。


「巣立ちかと思うと、少し寂しくなるわね」

「…そうだな」


 明日からの5日間に及ぶ定例会と2日間の宴会が終わった後は、ラフナ―とクレアの婚姻が迫りバタバタとなる。ラフナ―にはエメリヒ王の娘の一人が嫁いでくる予定だ……つまり、我々は外戚と言えど公爵家となる資格を得る訳だ。公爵家となれば自分より上の立場の”人”は、エメリヒ国王一人となる。かといってこの平穏な世の中では、公爵家になる為の大功を得る機会は無いかもしれない。

 一方長女のクレアはカーマイン公の孫である、年若いフェリックス・カーマインを婿に迎える。何故婿に迎えるかというと、ルーシーと自分の間にはこの二人しか子供が居らず、ラフナ―に何かあった場合に跡継ぎが居なくなってしまうからだ。クレア・フェリックス夫妻はホワイト姓となり、直轄領のうち、東の飛び地となっている北方樹海に隣接した領地を支配する。


「子育ても終了」

「任せきりだったな…立派に育てくれてありがとう」

「立派な子たちでしょ!感謝なさい!!」

「ありがたや、ありがたや」


 ルーシーを色彩の神々を拝むが如く拝み倒し、笑い合う。


「それでも、剣と弓をラフナ―に教えたのはあなたでしょ?」

「才能があったからね」

「貴方みたいに魔導士の才能は無かったけど」

「俺だって15覚醒さ、これは才能があるとは言えない。偶々君に出会えたから、それを活かす機会が出来ただけだよ」

「また私に感謝しとく?」

「そりゃもう!!ありがたや、ありがたや」


 くらない言葉を交わしながら、晩酌を傾けて夜は更けていく。

 人生で最も幸せな時間の過ごし方であろう。

 

はじめまして。都津(トツ) 稜太郎(リョウタロウ)と申します!


再訪の方々、また来てくださり感謝です!


今後とも拙著を、どうぞよろしくお願い致します。

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