どこ住んでるの?って聞かれて横浜って言うな。神奈川と言え
「とりあえずメンツは揃ったし、まあいいか。行くぞ」
そう言うとロックは階段を降り始める。
「あっ、待ってよ兄さん!」
そんな彼の後を慌てて追うホゾマ。彼らの後姿を見た一同は互いの顔を見合わせた後、誰ともなしに二人の後を追いかけるべく脚を動かし始めた。地下へと降りる階段は思いのほか短く、その後は通路となっている。
「別にそんなに地下深くまで伸びている階段……ってわけじゃないんだな」
「ここはな」
ユウの素朴な感想にホゾマが応じる。
「”ここ”は?」
ユウが小さく上げた疑問の声は聞こえていなかったのか、ホゾマは特に答えることなく前に進んでいく。
「どうしたの、ユウ兄ちゃん?」
そんなユウの様子を不審に思ったティキに尋ねられ、ユウは肩をすくめる。
「いや、なんでもない」
「ふーん?」
ユウの素っ気ない感想にティキは首を傾げる。
「しかしまあ……」
一人小さく呟いたユウは、気を取り直して周囲を見渡す。地下通路は天井に取り付けられた、目が少々痛くなるような白色系の光源に晒されている。そして、光に照らされてユウ達の目に映る壁は清潔感のある白い壁紙に覆われている。一見するとユウがいた世界の現代建築のようにも見えるが、よく見てみると壁紙には血管のような青いラインが何本も走り、静かに明滅・脈動している。
(なにこれ……。エネルギーが流動してる感じか?なーんかSF染みててしっくりこねぇなあ……。魔法っていうより高度に発展した科学っぽいというかなんというか……。もうちょい、ファンタジー世界の遺跡らしい遺跡ってのは無いんか……?)
(ユウさんが期待するような遺跡も無くは無いんですけどもねえ……)
(無いけどもなんです?)
「そこらへんは今回の目当ての遺跡を探索していればおいおい分かる。とりあえず今は素直に歩いとけ」
ユウとルティシアの会話にロックは割って入る。周囲の者達は会話の流れが分からず首を傾げるが、そんなことに構うことなくロックは歩みを進める。
――それから程なくして、通路が終わり一行は開けた場所に出る。
「うわぁ~!」
「……これは……驚いたな」
「王宮からこんなところにつながっていたなんて……」
眼下に広がる光景に、ティキやアネッサ、エミリア達は驚きの声を上げる。彼らの視線の先に広がるのは巨大な地下空間、そしてそこに立ち並ぶ大小様々な未来的な建造物の群れだった。
「地下都市なのか……これ?」
その様子をみたユウも正直な疑問を口にする。
「まあ。そんなところだ。実はナルヨーの森に住むエルフの大半はここで暮らしている」
「マジっすか……。さっきからほんとイメージが崩れるなあ……」
ホゾマの説明にユウは言葉を失う。
(言うて、今だとエルフも現代社会に住んで自堕落な生活送ってデブってダイエットに勤しんだり、神奈川住んで地域自慢とかいうクッソしょうもないことしてたりとか色々バリエーションありますし……)
(いやまあ、そう言われるとそうなんですけど……つーか、神奈川自慢にだけ妙にあたり強くないです?)
ルティシアの言葉にユウは疑問をぶつける。それに対する返事は思いの他シンプルで重く、鋭かった。
(私、神奈川嫌いなんですよね。特に横浜)
(なんで数多の世界を管理する女神がピンポイントで横浜嫌いなの!?マ〇コ・デラックスか何かですか、あんたは!)
ユウがルティシアとしょうもないやり取りをしている傍らで、アネッサがロック達に問う。
「ここにエルフの大半が住んでいるというなら、地上の森にある集落や王宮は一体何のために……?」
アネッサの質問に対して何か言おうとするホゾマを手で制し、ロックが答える。
「ここを守るためだ」
それから挑発的な笑みを浮かべて言葉を続ける。
「どうやらその様子だと、お前さんが魔王軍に居た時はここまでたどり着けなかったか?」
しかし、そんなロックの挑発的な態度に乗ることなく、アネッサは静かに頷いてから口を開く。
「勇者サクラの介入がありましたからね。私達の侵攻は地上で食い止められました」
「そうか。いや、つまんねぇ反応だなあ」
アネッサの淡泊な反応にロックは後頭部を掻き、鼻を鳴らす。その横でユウが地下都市を見下ろし、腕を組みながら感嘆する。
「はぁ……これが魔王軍も追いかけたって言うエルフの禁域って訳か」
ユウの反応を見たロックが意地の悪い笑みを浮かべる。
「違えよ!ここはその禁域の手前のただのエルフの居住区だってーの!」
「え?」
ロックの説明にユウが一瞬固まる。それを見たロックはゲラゲラと笑う。
「禁域ってのはこの先のさらに奥だ奥!それをお前、したり顔で『エルフの禁域って訳か……』とかカッコつけちゃって……。浅はか過ぎてウケるー!腹いてぇぇぇ!」
ロックは、しまいには床に転がり腹を抑え、足をじたばたさせて笑い声をあげてユウを煽る。
「うわぁ、また始まったわ……」
その様子をみたチコがため息を漏らす。そんな彼女にロックが何かを言おうとした瞬間、ロックは足に違和感を感じて声を漏らす。
「ん?」
直後、ユウに足首を掴まれたロックが持ち上げられていた。どうやら、ロックに気配も悟らせないまま、彼の足を目にもとまらぬ速さで掴んだらしい。
「……」
そして、ユウはそのまま無言でロックをぶん回し、地下都市の奥の方へと勢いよくぶん投げる。ロックは何かを言う暇もなく、目にもとまらぬ速さで地下都市への奥へとすっ飛んでいく。
「……」
ユウ以外の一行は、それを無言で見送る。その横でユウは、憑き物が落ちたかのような穏やかな顔をしながら大きく息を吐く。
「ふぅ……。さて、それじゃあ行きましょうか?」
それから満面の笑顔を浮かべると一同に、出発を促す。
「……」
彼らは無言で互いのかを見合わせた後に、静かに頷いた。
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