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偉大な存在は輝いて見えるって自分でいう奴ほど信用できない

「兄さんだってエルフだ。今じゃあれだけ規格外な存在になっているが、元々はなにか埒外な存在から生まれたわけではないからな。人並みな情緒だって持ち合わせてはいるさ」

 ホゾマの言葉にユウはため息を漏らす。

「そんなこと言ってたら、あいつに文句言われるんじゃないですか?『俺は美と言う概念から生まれた存在!その程度の枠でとらえるんじゃねぇ!真実の眼で俺を見ろ!』みたいな感じで……」

「さっきから無駄に物まねが上手いな……」

「すっかりトラウマになってしまいましたからね……。あんな股間光らせながら迫ってくるヤベー奴に追っかけまわされて……」

 ホゾマの言葉にユウは虚空を見る。そんなユウの目に宿る感情の深さと昏さを察したホゾマは思わず項垂れる。

「……す、すまない」

 目を正気に戻したユウは、首を左右に振る。

「いや、あいつが悪いんで気にしないでください。身内の不祥事とはいえ、ホゾマさんがそこまで責任を感じることは……」

 そんなユウの言葉に、今度はホゾマが首を左右に振る。

「兄さんの股間が光っているのは私のせいなんだ……。そのせいでよもや君にそんなトラウマを植え付けることになろうとは……」

「いやいや……何があろうと責任は本人にありますから……え?」

 そこまで返事をしてからユウは目を見開く。それから恐る恐る確認の言葉を吐き出す。

「あの……奴の股間が光っている原因は……?」

「……ああ」

 ユウの質問にホゾマは渋面を浮かべて頷く。


「あれは、私せいなんだ」


「……どういうことっ!?」

 

 ユウは思わず牢の鉄格子を掴んで叫ぶ。その拍子に鉄格子が勢いよく外れてしまう。

「……あっ」

 理不尽な兄に振り回される苦労人弟の鏡のような人物が何故、兄の股間を光らせるような理解不能な凶事に及んだのか?原因が全く想像できなかったユウの自制心ブレーキは知らないうちに外れていたらしい。その結果が今、ユウの手に握られた無残な鉄格子の残骸であった。

「やれやれ……」

 そんなユウの反応を見たホゾマは、首を左右に振りながらため息を漏らす。その様子を見たユウは申し訳なさそうに肩を竦め、消え入りそうな声で謝罪する。

「す、すみましぇ~ん……」

 ホゾマはそんなユウの様子を見て鼻息を漏らす。

「……まあ、いい」

 それから一つ咳ばらいをすると、ぽつぽつと語りだした。

「兄さんが服を着なくなったのは……キヤノが時凍魔法をかけられた数十年後のことだった。急な兄さんの奇行に意味も分からず我々は困惑した」

「でしょうね」

 ユウは素直に頷く。それから一瞬、脳裏に浮かんだ疑問を口にする。

「ちなみに、魔法を使うためのマナが感じやすくなるから……とかそういう理由ではないんですよね?」

「ああ。当時聞いても、今と大差ない回答だったよ。『俺の美しさを世に伝えないのはもはや罪!』みたいなこと言いながら所かまわず全裸になっていた」

「理解も共感も出来ない……」

「おそらく、合理的な理由は無いのだろう」

 そう言ってから、ホゾマは小さくため息を漏らす。

「だが、理解できなくても実害があった」

「実害?」

 ユウの疑問の声にホゾマは頷く。

「エルフという種族がところ構わず全裸になり、兄さんみたいなイチモツを持っている……そういう認識が一部の界隈に広まりつつあったのだ……」

「あぁ、そういう……」

 ユウの視線はまたも虚空を彷徨う。一方、語っていくうちにホゾマは当時の感情が蘇ってきたのか、語りに熱が入り始める。

「比較対象が比較対象だ……。みんなが兄さんのようであると思われては困る……!エルフと言う種族に対するハードルが高くなってしまう……!」

「えっ!?そういう方向での困る!?」

 てっきり、エルフと言う種族自体が変質者だと思われたら困る的な話なのだと思っていたユウは何とも言えない面持ちでリアクションをする。しかし、そんなユウに構うことなくホゾマは話を続ける。

「そこで私は、兄さんの股間を人目に映らないようにしたのだ。そのために、こちらの世界で言う魔法に準ずる異世界の技術をかき集めて、兄さんの股間を何らかの方法で見えなくする方法を模索し続けた……」

「?なんでまた異世界の技術を?」

「簡単な話だ。こちらの魔法では術式を解読して簡単に解除されてしまうからだ。だから発動原理の理解や解読が難しい、この世界とは根本的に原理が異なる異世界の技術体系を探したのだ。そして、それらを複数組み合わせることで、兄さんですら容易に解除できない股間不可視化の方法を実現したんだ。いくら兄さんといえど、数ある異世界から目的の技術体系を見つけることは、容易ではないだろうからね」

「はぁ……なるほど」

 一人の男の股間の話から随分と話のスケールがデカくなり、ユウは思わず間の抜けた返事をする。

「しかし、なんで光らせる方向に?別に黒塗りとかモザイクでも良いわけじゃないですか?」

 そんなユウの質問にそれまでとは打って変わってホゾマが目を見開いて熱く語りだす。

「何を言うんだ!兄さんの神々しい股間をそんな目にしてはいけないもののように隠すなんて恐れ多い……!」

 それを聞いたユウの顔面から表情が消え失せる。そして、ユウはホゾマの後頭部に手刀を入れて気絶させると牢獄の出口へ向けて歩みだす。

「もーやだ……。この国みんな頭おかしいって……。俺帰って良いっすか……?」

(駄目でーす)

(それは困る。思い直してほしい)

 ユウは正直な胸の内を呟く。しかし、そんな彼にルティシアもエクスも温情は示さないのであった。

 

 




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