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被害者仲間は多い方が良い

 ユウの労いの言葉にホゾマはを苦笑を浮かべる。

「まあ、いつものことだ」

 それから彼は慈しむような生暖かい目線をユウに送る。

「君も……分かるだろう?」

(被害者仲間だと思われているっ!?)

 ホゾマの視線と言葉に込められた感情を察したユウは軽く衝撃を受ける。

(実際そうですし)

(否定出来る要素はないな)

(ぐぬぬ……)

 ルティシアとエクスのツッコミに反論できず、ユウは歯噛みする。

(……でも……)

 そんなホゾマの物言いと態度に引っ掛かるものを感じたユウは、疑問を口にする。

「全裸弟さん、意外と他種族に対してフラットなスタンスだったりします?」

 それを聞いたホゾマが勢いよく吠える。

「全裸弟は私も全裸みたいだからやめてもらえる!?普通にホゾマ呼びで良いから!」

「はぁ、すみません」

 ユウの気の抜けるような謝罪にため息を漏らしつつ、ホゾマはユウに問いを返す。

「しかし、なんでそう思う?」

 ユウは後頭部を掻きながら、思ったままのことを口にする。

「いや、昼間にあったクルースって奴とかあたりなら『かーっ!人間とかいう低脳種族風情がロック様に迷惑をかけてもらえるとは畏れ多い!感謝して五体投地しろ!』とか言いそうですし」

「再現度無駄に高いな……」

 ユウのものマネにホゾマは肩を竦める。それから一度、中空を眺めて細く、長く息を吐く。まるで記憶の糸を手繰るように。

「まあ、そうだな……。我ら兄弟三人は他のエルフよりも他種族に対しては偏見の類は少ないであろうな」

「はあ、そりゃまたどうして?」

「簡単なことだ。私達は人間に救われたことがあるからだ」

「救われた……?」

 ホゾマの言葉にユウは首を傾げる。

(あの傲岸不遜ナルシスト野郎が種族関係なく他者に素直に助けられるなんてことがあるのか……?)

 そんなことを考えているユウにかまうことなく、ホゾマは言葉を続ける。

「そう、あれは1000年程昔のこと……」

(おい!この人勝手に過去話モード入り始めたぞ!?)

(流石彼の弟だ。真面目そうに見えて意外と自由だな)

(まあ、なろう小説なんて過去話でいくら尺使っても怒られないし、いいんじゃないですか?)

(読者が飽きたらどーすんですか……)

 ユウ達がぐだぐだなやりとりをする傍らで、一瞬ホゾマが呪文を唱えて空間に向かって指で四角を描く。すると、空間上に鏡のようなものが現れ、そこに宮殿の一室と思しき風景の映像が投影され始める。

「ナニコレ!?」

「記憶映像投影魔法だ。直接過去の記憶を見ながら話した方が分かりやすいだろう」

(おいおい……自分で映像まで用意し始めちゃったよ……)

(いますよね、頼んでないのにアルバムとか持ってきて過去話始めるご老人)

(女神様、そんな下手なご老人より遥かに年上なのでは……?)

(殺すぞ)

(ゴメンナサイ)

 センシティブな女性の年齢の話題に、普段のおちゃらけっぷりからは想像がつかないようなマジなトーンで殺気を放つルティシアに、ユウは素直迅速誠心誠意謝罪する。

(……何故急に殺意を向けたのだ?)

 そんな二人のやり取りが飲み込めないエクスが疑問を呈する。

(エクスさん!今は黙って!お願いだから!)

(すまない)

 ユウがツッコミを入れているその頃、ホゾマが投影している映像では視界が水平に移動し、室内の椅子に座る一人のエルフの少年を中心に捉える。少年は膝の上に置いた本に視線を落としており、その顔を窺い知ることが出来ない。

(まさか……)

 画面に映る人物に対して、見覚えのようなものを感じたユウは身構える。直後、映像の範囲外にいると思われる人物の声が少年に向かってかけられる。

『ロック君』

 落ち着いた理知的な声が少年の名前を呼ぶ。それを聞いた少年こと幼少期のロック•ラドクリフは静かに面をあげて微笑む。

『先生、いらっしゃったんですね』

 それを見た直後、ユウは思わず盛大に叫ぶ。

「誰だこいつーッ!?」

 腹の底から吹き出した凄まじい声量の叫びに牢獄全体が揺れ、さらにホゾマの映像魔法が粉々に砕け散る。

「ああっ!?何をする!折角の兄さんがまだ可愛らしかった頃の回想を!!」

「今の絶対、あの全裸とは別の誰かでしょっ!?。もしくはあなたの記憶に深刻な問題が発生しています!!」

 ユウの反論を聞いたホゾマが項垂れる。

「いや、1000年前程は本当にあんな感じだったのだ。今ではあんなんだけど」

「あんな穏やかな美少年が、どうしてあんな人格破綻者に……」

 ホゾマの語りを聞いたユウは、腕を組んで考え込む。それを見ていたエクスが正直な感想を漏らす。

(あくまで今の人格が本性という扱いなのだな)

(そりゃあまあ……そうでしょう)

(そういうものか)

 ルティシアの反応に、エクスは一旦納得する。それを見計らったかのように、ホゾマは話を再開する。

「話の腰が折れたな。まあ映像も消えてしまったし、ここからは掻い摘んで話すが……キヤノ、あの子はかつて赤ん坊だった頃、エルフにのみ発症する不治の病を患った」

 それを聞いたユウが軽く驚く。

「1000年前に不治の病?でも女王様は260歳とか言ってませんでしたっけ?」

 ユウの反応にホゾマは頷く。

「ああ」

 ホゾマの肯定にユウは首を傾げる。

「どういうことですか?」

 ユウの問いにホゾマは一度深いため息を漏らす。

「あの子の時間を止めたんだ。対象となる存在の時間を停止させる魔法……"時凍魔法"と呼ばれる秘術を使って、治療法が確立される日までな」

(SFとかでよく見る冷凍睡眠で〜みたいな奴のファンタジー版か)

(そういうことです)

 ユウの解釈にルティシアが同意する。それを受けての納得と同時に、ユウの疑問に頭が浮かび、そしてそのまま口にする。

「話の流れ的に、その時凍魔法をかけたか、治療法を見つけたのが人間ってことですか?」

「いや、その両方だ」

「!」

 ホゾマの即答にユウは少々驚く。

「先ほどの記憶映像で兄さんに声をかけた人物……1000年前に大魔王と戦った伝説の勇者ビフォン……。彼と、彼に連なる者たちが……私達の妹を救ってくれたのだ」

ここまで読んでいただきありがとうございます。

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引き続き、この作品をよろしくお願いします。

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