あかつき号事件って最初、どういう事件か設定決まってなかったらしい
「本題?」
ロックの前振りにホゾマは首を傾げる。
「ああ」
ロックは一度頷いてから答える。
「今回の寄生生物の出現、何者かが手引きした可能性がある」
「!?」
ホゾマが目を見開く。
「どういうこと?そんな恐ろしい生物をわざわざこの森に招きいれた者がいるってこと?一体誰が……」
「それは分からねえよ」
ロックは首を左右に振る。
「だが、この国を覆っていた結界……親父がこの森に他種族が入り込まぬようにと施した”アレ”に綻びがあった。おそらく高度な魔法知識を持った誰かが、寄生生物が森の入り込めるように細工をした可能性が高い」
ロックの言葉にホゾマは唖然とする。
「……細工……?超高度で複雑な術式で構築された結界を解読し、あまつさえ自分達の目的のために改竄を施した……?」
そんなホゾマの反応にロックは鼻を鳴らす。
(どういう反応?)
ロックの反応の意図が読めないユウは内心で疑問の声を上げる。そんなユウの疑問にエクスが答える。
(おそらくだが『弟がそういう感想になるのも仕方ない』というニュアンスであろう。私もこの世界の魔術体系への理解はまだ浅いが、それでもあの結界がこの世界においては類を見ないほどに高度な魔法であったことは想像に難くない)
(はぁ~、そういうもんですか。あんな雑なやり方で割られちゃったのに。つうかよく見てますね)
エクスの観察の積み重ねと、そこからの考察にユウは感心する。
「ま、そういうことだ」
そして、そんな二人のやり取りにロックは同意する。
「?」
だが、ユウとエクスの会話を感知することが出来ないホゾマは、ロックの発言の意味が分からず首を傾げる。しかし、そんな彼のリアクションを横に置いておき、ユウはロックに疑問をぶつける。
「ちなみに、高度な魔術知識を持っていて結界に介入した奴って言うのが、お前の言うところの寄生生物の可能性は?」
「おそらく無いだろうな」
ユウの疑問にロックは首を左右に振る。
「なんでそう言い切れるのさ?」
ロックの断定に、今度はホゾマが疑問の声を上げる。
「昼間に遭遇した精霊の化け物……アレも確かにかなりの力を持っていたが、魔法としてはそこまで高度なものは使っていなかったからな。あくまでマナ量にものを言わせた力押しだ。あの程度の魔法体系に対する理解ならば、結界を解析・改竄することはおそらく無理だな」
「ふーん、そういうもんか……」
ユウが納得したのを見て、ロックはさらに話題を繋げる。
「これはまだ仮説の域を出ないが……現在の事態の首謀者の目的が、寄生生物に魔法体系を習得させて進化を促すことな可能性がある」
ロックの説明にホゾマは眉を顰める。
「その"首謀者"はなんだってそんなことを……?」
ロックは後頭部を掻く。
「さてな……。俺は会ったこともないやつだし。リーシェルトの小娘が寄生生物絡みで胡散臭いやつと遭遇したことがあるらしいが……。もしそいつと今回の首謀者が同じなら……」
そう言ってロックはユウを見る。
(なるほど。だから俺と話をしたかったのか)
ユウは納得し、それから話だす。
「英雄の頂で出てきたヴェンフェルト……件の寄生生物に身体を汚染されてたっぽい死霊術師の男とは確かに対峙したよ。ただ、正直奴ご今回の事態に関わっているかどうかは分からないな。あの時の遭遇が初めてだし、その後もすぐ逃げられちやったからなあ。情報が少なすぎる」
「使えん奴め」
「だまらっしゃい!」
ユウの煽りへの噛みつきを受け流しつつ、ロックはさらに問いかける。
「奴の目的とか、それの手掛かりになりそうな気づきとかも何もないのか?」
ユウは首を振る。
「うーん……。もしかしたら奴に仲間がいて、そいつが違う目的で動いてる……なんて可能性もあるしなあ。とりあえず奴が現れた時は、英雄の頂にある神の戦車を狙ってたみたいだったけど。そんな感じの分かりやすそうなターゲットになりそうなものでもあるなら……」
ユウはそう言って顎の下を人差し指で掻く。その言葉を聞いたホゾマがハッとした顔をする。
「まさか兄さん……」
そのリアクションにロックは頷く。
「まあ、確定とはいかないだろうけどな。可能性はある」
二人のやり取りの意味がわからず、首を傾げる。
「何?どういうこと?」
「今回の訪問の目的であるエルフの禁域の話を覚えているか?」
「そりゃまあ。なんか遺跡なんでしょ?マナスライムとか住んでるとか言う」
ロックの問いにユウは頷く。
「禁域の遺跡は古代文明が残したものなんだが、そこには現代魔術の基礎となった膨大な知識体系が集積されている。もしも俺の仮説が当たっているなら……」
「件の人物が遺跡を狙ってくる可能性があると?」
ホゾマの合いの手にロックは頷く。
「元々、遺跡に用事はあったが……一緒に何かしらの手を打った方が良さそうだな」
そう言うと、ロックは満面の笑みでホゾマの肩を叩く。
「と、言うわけでだ!明日から俺は遺跡に入るから関係各所への事前連絡よろしくな!ちゃんと話通ってなくて止めに来た奴ら出てきたら、そいつらに対して何するか分かんねーぞ?」
「ちょっと待って兄さん!?そんなこと言うけど、どさくさに紛れて連れの人間や魔族達も遺跡に入れる気でしょ!?」
ホゾマの反応にロックはヘラヘラと笑う。
「なんか問題あるか?俺が暴れるのに比べたら誤差だろ誤差〜」
「ぐっ……。確かに100年前の街道尻フラワー事件のような惨事に比べたら……」
ロックの脅しにホゾマは歯噛みをする。
「なんだその事件名!?」
(仮にも禁域と呼ばれる場所に部外者が入るより重大なことなのか)
ユウとエクスが疑問の声を上げる。
(ええ……まあ……)
何かを知っているのか、そんな二人の反応にルティシアが珍しく歯切れの悪い返事をする。
「つーわけで、頼んだぞ。じゃーなー」
ロックはひらひらと手を振ると、牢獄から出ていく。その後ろ姿を見送ったホゾマは盛大にため息を漏らした。
「……大変っすね」
ユウはそんな彼に労いの言葉をかけるしかできなかった。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
皆様の応援が執筆の励みになります。
もしよろしければブックマークや評価ポイント、感想やレビューなどお願いします。
引き続き、この作品をよろしくお願いします。




